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No.8 算数

「さぁ、2日遅れの山菜料理だよ!」


わぁぁ、とテーブルに群がる子供達、大人達の眼の前には、山菜採取の時に、レーナちゃん達と取った山菜を使った山菜料理。


天ぷらもどきだったりとか、お浸しもどきだったりとか、足りない材料は他の物で補わなければいけなかったが、かなり美味しそうな品が作れた。我ながら尊敬する。


「美味しそっー!」


キッシュ君が手を伸ばす。待って、素手で?


泥だらけなのに????


「キッシュ君、アウトーっ!手を洗ってから食べなさーい!!!」

「げっ、何処から笛を出したんだよ...?」


何処からともなく笛を出した聡美の注意が、キッシュ目掛けて飛ぶ。キツイ言い方かもしれないけど、駄目だよ、お腹痛くなったらどうするの!?病院行きたくないでしょ!?


「衛生管理不充分なの!良いから、手洗ってきなさーい!」

「えーせーかんり?」


「そうよキッシュ。だからアンタが食べたら食べたくなくなるの」

「そう言うレーナちゃんも、口いっぱいにして喋るのは駄目でしょ!」


ピッピー、と笛の音が交差するお昼ご飯は、美味しくも皆の中でグサリ、と刺さったお昼ご飯だったと言う。



***



皆、良い子だし物覚えも良い...のだが。


「教養とかは、まだまだだよねぇ...」


そうなのだ。


彼らは学校に行っているわけでもないし、何かを勉強しているわけではない。よって、一般常識や教養などは付かず仕舞いなのだ。確かに、農作業で時間が取れないのも分かるのだが。


でも...きっとこのままだと、貧困を抜け出せないよ。


『貧困から抜け出すには良い教育が必要』と言う程、教育や教養は出世には不可欠なのに。


「...教育...!」


決まったら有言実行だもん、ね。


良いこと、思いつーいた。



***



「てなわけで、君等にはこれから『算数』を習ってもらいます」

「『算数』ぅ?」


タルヤから貰ったワンピース姿で、ピシリ、とキメる。


キマった...!!


「おい、『算数』って何だよ」

「良い質問です、ナウット君。算数とは...ま、数を計算することです」


「...」


聡美の変な教師モードに、戸惑う子供達。ナウット君でさえも、ツッコまずにただ口を開けて、「お、おう、そうか...」と呟いている。


「実際に、見せましょう。例えばですけど...」


ごそり、広場にあるテーブルから、リンゴを二つ取り出す。両方を手の平にのせると、皆の方に向いてこう言った。


「このリンゴは、何個あるでしょう?」

「えーっと、1、2で2個だよ」


「そうですね、正解です。でも、例えば...」


そう言うと、聡美はテーブルに置いてある、リンゴを入れた袋を二つ、テーブルから見せた。麻袋には、紙が貼ってあって、一つ目には「23」、もう片方には「41」と書いてある。


これこそが、私が昨日頭をうんうん捻らせて考えた、算数の練習問題の力作。

此処の世界の文字の書き方は知らないけれど、きっと数の書き方は万国共通のはずなので。


我ながら、良い出来栄えだ!!


「この麻袋二つを合わせると、一体何個リンゴはあるでしょう?」

「「「えええー!?」」」


指を折って数える子供達、頭を捻る子供達、それから諦めモードに入りかける子供達。


ああ待って、まだ諦めモードに入っちゃ駄目だから!


「...64個じゃねぇ?」


そう声を発したのはナウット君だ。


まさか、ナウット君、君はもしかして足し算引き算が出来る子なの?


「指で数えただけだぞ、そんな顔されても困る」


ど、どんな顔だったんだろうね、あ、あは...。


ま、まぁ取り敢えず、気を取り直して。


「うん、ナウット君の言った64個で正解です。でも皆、大きい数を足したりする時って、指で数えても数を間違えちゃうじゃない?だからね、他の方法で解決しよっか」

「えっ?」


取り出したのは、ペンの代わりの木の枝。ホワイトボード代わりにある、土の地面にガリガリ、と木の枝で数字を書いていく。23,41を縦に書くと、その二つの下に線を一本引いた。


「はい、これが『筆算』って言う方法です!皆良く見ててね!!」

「『筆算』?」


皆初めて聞く言葉に、興味津々。来たぁ、これを待っていた!!!


さてと、これからが私、聡美先生の出番だよ!


「まず、3と1は合わせて何でしょう?」

「簡単だよ、4だろ」


キッシュ君の言葉に頷く一同。うん、そこは分かっているのね。

ならば、もう簡単だよ、算数なんてちょちょいのちょいだから!


「じゃあ、2と4は?」

「...えーっと、6?」


「「「「あっ!!!!!!」」」」


何かに気付く一同。


「6と4、これそのまま線の下に持ってきたら64ってなるよ!」

「そう、そうなのレーナちゃん!皆分かった!?」


やったぁ、やったぁ!!!


「...これが、『算数』...!」


レーナちゃんを含めた一同が、嬉しそうに頷いたり、地面に書いた文字を見ているのを見て、聡美の中で何か温かい気持ちが湧き上がってくるのを感じた。

ナウット君は、頭の回転は速い子です。

だから、物事の覚えも速い男の子なのです。現代版で言うと、学校で宿題とかを終わらせて、試験勉強なんてしない天才...みたいな。


そろそろあの人が帰って来そう...そんな予感が。

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