夜・ミュージック
音楽は人を救う、なんていう言葉がある。
それに断固反対する人もいる。音楽は人に巣喰う、と。
私の考えとしては、全ての人を救うとまではいかなくとも音楽は偉大だ。要するに私は音楽が好きである。
朝昼晩、暇さえあればイヤフォンを耳に付けていたいぐらいだ。聴くのは基本某アイドルグループのアルバムだが、あれば何でも聴く。特に動画サイトではその傾向だ。ポップス、ロック、ボーカロイド、バラード、果ては演歌やムード歌謡、懐かしのメロディーまでとなかなか許容範囲は広い。
嫌なことがあった時、夜景の見られない状況だったらまずロックをかける。無論爆音だ。
ある時リズムを口ずさみながら頭を振っていると、隣に妹が来た。
「お姉ちゃん、今○○聴いてるでしょ?」
「へっ! 何で分かったの?」
「音洩れしてるよ?」
正確には音洩れではない。大音量でかけ過ぎて、イヤフォンをしていない人にまで聞こえるレベルの音になっていたのだ。あわてて音を下げた。
そんなような話を黒(←稲武録参照)にしたら、「近いうちに耳が聞こえなくなるパターンだぞそれ。手話覚えときなさいw」と言われた。大音量は耳に悪いし、イヤフォンで爆音だなんてもってのほかだそうだ。そもそもイヤフォンというのはずっと付けていると耳がカビるらしい。毎晩イヤフォン無しでは眠れない私は、けっこうそのニュースがショックであった。
耳が聞こえなくなったら大変だ。人の会話から小説のネタを取ることもできないし、ライブなんかにも行きづらいに違いない。何より曲を聴きすぎたことで二度と音楽に触れられない耳になってしまったら、本末転倒だ。
そうは思うものの、やっぱり曲が聴きたくなるときはある。ああ、あのメロディーが恋しい。そうしていつの間にかイヤフォンを耳にはめ、電源を入れている。
耳に流れ込むハーモニー。現代的にリミックスされつつ80年代の懐かしさを残したシティポップス、と曲の解説には書いてあった。まさにその言葉がしっくりくる曲、これが今日の気分だ……。
知らず知らずのうちに音量を上げていき、曲が終わった頃に私はようやく気づく。
「あ、しまった……」
この調子では、私の聴覚が異常をきたす日も充分現実になりうる。そう自負したところで、結局このうっかりは繰り返していくだろう。
やっぱり、音楽は人に巣喰うに違いない。けれど私は音楽が好きだ。