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四神獣記  作者: かふぇいん
赤の国の章
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王命

 玉座の間には多くの衛士と従者たちが集まっていた。見てみるに、全員が獣人のようだ。玉座には南王が厳しい顔をして座っていて、集まった者から話を聞いていた。そして、それを聞き終わると皆を見回し、初めて会ったときのような口調で、話しはじめる。

「皆の者、聞け」

 王の御前に控えて座した者達を前に、王は静かに立ち上がる。

「この状況、内々に事を進めるわけにいかなくなった。……この騒動は先ごろより流行った奇病に端を発するもの。それも、何者かが(ちん)という毒鳥の羽根を、壁向こうの集落に持ちこんだことが始まりである」

 南王は鴆の羽根を掲げて見せる。ざわ、と静かなどよめきが走り、南王は続ける。

「とはいえ、集落の者は毒があることすら知らず、貧するが(ゆえ)に広げたのだ。また、美しき羽色、広がってしまったのはこの町においてはもはや詮無きこと。もとより、壁一枚とはいえ、集落と都の人々の間にはずっと不信不満が募ってきていたのだから」

 扇で掌を打ち、南王は言う。

「そもそもが政の、王の怠業(たいぎょう)。ならば、この騒動に犠牲を出すわけにはいかぬ。都の内外問わず、彼らは私の民である」

 それに、と王は再び皆を見回す。

「この件には――建国の魔の影が差しているようだ」

 王の言葉に、ひと際大きく辺りがざわめく。

「この国に封じられた魔が蘇ったとの報があった。狂気を好む魔だ、騒動に乗じて現れるやもしれぬ。よって、各人、各々の獣人としての力を存分に奮い、護るために戦ってほしい。私とこの地を守るそなたらに、火の温かな加護があるように」

 は、と了の意を告げる声があがり、南王は頷いた。ルーユウ、と名前を呼ぶと、昨日シンを案内したあの衛士が前へ進み出る。

「そなたなら、夜闇に紛れてあの集落へ向かえるだろう。集落の者に、私の意を伝え、導くように」

「御意に。近衛の、王の(まもり)はどうなされます」

「王宮にいる王は死なぬ。朱雀様もいらっしゃる故、心配ない」

 ならば、とその衛士はすぐに玉座の間を出て言った。続いて王はまた別の者の名前を呼ぶ。

「フェンジン。そなたは平時のように分祀(ぶんし)の護と、そこへ逃げ込んだ者を守ってほしい」

 朱雀印と麒麟印を並べ携えた男が、その命を受けて、すぐに場を立った。そして、残った者に南王は凛と声を張る。

「戦えるものはすぐに飛び、暴れている者を止めておくれ。そうでないものは、この騒ぎに惑い怯える民を保護するように。上から見ればわかるはず。――そなたたちも、私の民。重々気をつけるように」

 衛士、文官、獣化できる者すべてが、一斉に玉座の間を出ていった。玉座の間には南王と、異国からの客であるシンとファンが残るだけだ。

「出せる兵はすべて出したわ。あとは、窮奇(きゅうき)や鴆の獣人を探さなきゃ」

 南王は力が抜けたように、玉座にすとん、と腰を下ろした。

「戦いとなると、駄目ね、頭が止まってしまう」

「まだどうなるかわからん、気を緩めるな、南王」

 シンの言葉に、南王は静かに、そうね、と答えた。古代の記憶があっても、実際に戦った王など建国の王たち以外にはいないのだ。むしろ、臆して当然。

「朱明はどうしている?」

 シンは辺りを見回し、その姿を探す。

「聖火のところで、もう一度風水を張り直してるはず」

「駄目だ」

 ゆるゆるとかぶりをふりながら、朱明が人の姿でやってきた。

「どうも普通に解いたようではないの。町にある羅盤(らばん)そのものを壊したのかもしれぬ」

「それでは、今外から獣でも妖獣でもくればひとたまりもないということか」

 朱明は黙って頷いた。国中から集めれば、獣人はそれなりに集まるだろう、しかし、今この急場をしのぐためには絶対的に手が足りない。

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