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四神獣記  作者: かふぇいん
赤の国の章
63/199

分祀(2)

 並んでからしばらくで、順番が回ってきた。講堂の手前にある見立ての間の戸を押し開ける。講堂の方からは建国神話らしき話が聞こえた。眼鏡をかけた神官長はファンに近くに来るように言った。

「ん? 君は……この町の子ではないね」

 眼鏡をかけた神官は、ファンの顔を見るなり首を傾げた。とりあえず、と神官は部屋の中央の椅子を勧めて、座るように言う。

「東から来ました、ファンと言います」

「そうか。では、ファン君。君は私をからかいに来たのかね」

 難しい顔をして、神官はそう言った。

「君にはもう、獣の気が備わっているだろう」

「いえ、あの。これは、師とその御友人から、貸していただいた力です。自分のものでないんです。……自分の素養は定まっていません」

 神官の表情は訝るようなものに変わり、ファンの目をじっと見据えた。

「そのような話は聞いたことがないが、まぁいい。見てみればわかることだ」

 神官は眼鏡をあげて、その手をファンの額にかざした。ばさり、と風をきる音がして、神官は獣化する。猛禽(もうきん)のような爪と大きな翼、ふくろうのようだった。しばらく、じっとファンの様子を見ていた神官は驚いたような顔をして、その手を引いた。

「君は、本当にその力を貸していただいたのかね? いや、その飾り羽根は間違いなく、あの方のものだ。ただ、しかし、こんなこともあるものなのか……」

「師からは、変った体質だと言われました。――ところで、あの、素養は」

「おっと、そうだった」

 神官は姿を元に戻し、ファンから離れる。

「うむ、君がいうその二つの力以外を別にして、素養という面では、君の力はまだ定まっていない、としか言いようがない」

「そう、ですか」

「そう気を落とすことでもあるまい、大きな力の加護がある。君の素養はおそらく、今守り育てられているのだ」

 神官は興味深げにファンの顔を覗き込む。

「不思議に思えて仕方ないが、その羽根の御方に関わることだろう、聞かないでおく」

「ありがとうございました、神官様」

 ファンは頭を下げると、見立ての間を出た。やはり、まだ自分の素養は定まらない。神官が、守り育てられていると言った自分の力は、いつかちゃんと芽吹くだろうか。二神の力はきっと、自分が太極であるから、それを守るためにこの身に宿ったのだ。しかし、本来ならば来自分で守るべきものを、神獣が力を貸してくれているのだろう。それならば、この状態に安住するわけにはいかない。いつか、きちんと返せるように、もっと人間そのものを磨かなければ。

 ファンは部屋の前に並んでいる子供たちを避け、社の外に出た。大きな通りはおおよそ見て回ったから、今度は細い道や、人通りの少ない場所を見て回ろう。日は頭の上にあり、じりじりと肌を焼くように照っている。小路なら日陰も多いだろうか。社を立とうとして、また麒麟印に目がいった。近くまで行って、壁の印を撫でてみる。

「君も見立てに来たの?」

 突然に声を掛けられて、ファンは振り返る。そこには花籠を手にした、ファンと同じくらいの少女が立っていた。

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