表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四神獣記  作者: かふぇいん
青の国の章2
48/199

関の責

 湯屋からあがり、シンが部屋に戻るとファンはすでに寝息を立てていた。まだ陽は高いものの、シンもすぐ床についたのだった。目が覚めると、翌日の朝だった。どちらも途中で目を覚ましていないようだから、疲れが相当だったのだろう。今はもうそれはない。充分に休めたようだ。シンが起きたのに気がついたのか、ファンが慌てた様子で跳ね起きる。

「おはようございます! 師匠」

「おはよう。疲れは取れたか?」

 ファンはしっかりと頷き、寝台から降りる。

「昨日は起こさないでくれたんですか?」

 髪を束ねながら、ファンが尋ねてくる。

「いや、俺も今起きたんだ。一食食べ損ねたな、下りて食べよう」

 何か言いたげに、だが、支度をするファンにシンは笑って言う。

「普通の量で充分だ。龍にならなければ、人並みなんだ。それに、今日中に南の国の町に入らないとな」

 それが充分に答えになったのだろう、ファンはほっとしたような、照れたような顔で笑った。

 朝餉(あさげ)の後、楼の主人に礼を言って、二人は関に向かった。檮杌(とうこつ)との戦いで、関は扉こそあれ、外壁を兼ねる片側の建物が全壊してしまっている。扉を支える柱は残っていたはずだが、そこには今人が集まり、扉の片側をゆっくりと外しているところだった。工事を見守る衛士の中に、シュウの姿があった。こちらがその姿を見つけると同時に、向こうもこちらに気がついたらしい。シュウはこちらに歩いてきた。

「大丈夫かと思ったんだが、柱の根元がやられててなぁ。危ないからいっそ外しちまおうって話になったんだ」

 シュウは警護用の(こん)を支えに立ち、後ろにした扉を指す。

「やはり駄目だったか。すまないな。数日もすれば都から色々届くはずだが」

「ああ、向こうに連絡をしてくれたのか、そりゃあ助かる。手は足りてるんけど、物がなくて困ってたんだよ」

 向こうでは扉を横に寝かせた後、太い柱に縄をかけ、ゆっくりと横にしているところだった。傍らでは石の山になってしまった外壁と建物の片付けが始まっている。

「その間の風水はどうする? 外壁と門がなくなれば、結界を張れないだろう」

「あぁ、それは大丈夫だろうって。新しい町長殿がどうにかしてくれるさ」

 シュウは通りの方を指さして、意味ありげに笑んだ。シンとファンが振り返ると、リーユイが血相を変えて、こちらに走ってきていた。

「間に合ったか。守護者よ、これはどういうことだ!」

 その手に握られた紙には、東王を示す印が押してある。リーユイは狼狽と怒りをないまぜしたような表情をしている。

「貴公にはちゃんと伝えたはずだぞ、処罰以外は受けぬ、と!」

 リーユイは手にした紙を叩きつけるように広げてみせる。書面には、関の町の長を務めるように、と滑らかな文字で書いてあった。シンはその書面をじっくり読むと、シュウの方を見やり、解かったような顔をして頷いた。

「もちろんだ、陛下にはそれ相応のきつい処遇を与えるようにと奏上した。――ところで、今回のことで関の外壁と、町長の収まるべき町舎が崩れてしまってな」

「それがどうしたと――」

 リーユイの言葉を遮り、シュウが続けた。

「いやぁ、その上、指示を出す人間がいなくてね。その上、結界が張れないとなっちゃあ、夜の獣共もおっかない。誰か、力のある人がいないかって捜してるんだよ」

 その後に、ファンも語調を揃えて、続けた。

「あんな風におっかない化物が出るところを護れ、なんて大変だなぁ。おれは褒美貰ったってやらないよ。どっかに、辛いことを引きうけてくれる人がいればいいのに」

 三人はリーユイをじっと見て、ニッと笑う。三人の視線が集まるその青年は、何かを言おうとして、口をぱくぱくと動かしていたが、結局声にならずにそれを飲みこんだ。そして、赤い顔のままこちらを睨み、そして、笑った。

「なるほど、確かにかなりの重責。陛下がこの(せき)(たまわ)るなら、青の国の昇化として、鋭意務めさせて戴こう!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ