表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四神獣記  作者: かふぇいん
青の国の章2
35/199

神話の神と魔

 シンに言われたように、ファンは少し離れたところに下がったが、檮杌(とうこつ)の振り回す腕を見ていると、昼間の恐怖がよみがえって来た。その足でもう少し下がったが、離れるな、とも言われたことを思い出して止まった。

 目の前に広がる光景は既に人の(わざ)ではなかった。いや、それを為している者達が人の枠に収まっていないのだから、当然なのかもしれない。暗闇の中、時々シンの鱗が月明かりに(きら)めいて、星の瞬くようだった。

 そういえば、以前助けてもらった時も、シンのあの姿を見たのだったか。あの時はただただ必死でよく見ていなかったが、今なら暗い中でもよく見える。額に戴いた二本の角は牡鹿のように枝分かれし、銀に似たつやがある。髪も襟足くらいまでに伸びているだろうか。普段の姿よりずっと竜に近い。リーユイが守護者、と呼んだように、今の姿ならば東を護る青龍の姿だと確かに思う。

 最初は眼でなんとか追えたが、しばらくするとお互いの攻撃が激しくなって、追いつかなくなった。檮杌の腕が切る風の音と、金属のような何かがぶつかる音、二人が(せわ)しく運ぶ足音、そして、時折檮杌とシンが戦う中で何か話す声がその場に響いていた。

 シンの爪が光って見える、ということは、爪を攻撃の手段として使っているということか。帯刀しているが彼が刀を抜いたところを見たことはない。その上に、あんなに鋭い爪を持っていても、今見るまでそれを使ったところを見たことがなかった。それだけ、檮杌は強い敵だということなのか。

 一万年、と檮杌は言った。それをシンも生きてきたのか。ファンは通常の人よりも長く生きる者がいるのは知っていた。バクがそうだったからだ。物心ついた時から少しも姿が変わらぬ仮親を見ながら育ったために、そういう者が存在していることにそう驚きはない。しかし、そうといっても一万という年月は自分には想像も及ばない、途方もない時間だ。山のような檮杌を軽々と飛び越え、次々に繰り出される攻撃を避けるシンが、また遠い存在に思える。そうして、比べられもしないのに、自分の無力さだけがひしひしと感じられて、胸が痛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ