人物集(白の国の章まで)
注意!:大いにネタばれの可能性がありますので、必要になった時に、対応する章を読み終わった際に見る程度をお勧めします。
紹介というよりは、脳内整頓用の人物集です。
※連載に合わせて、随時更新していきます。
本編は青の国の章より始まります。
主人公(一と二がありますが、便宜上のもので優先度ではありません)
シン:主人公その一。東を統べる神獣の一、青龍。またの名を句芒。本性は青い鱗を持つ壮麗たる龍だが、旅の間、人に姿を変えている。普段は長身の青年で、端整な面立ち。背の高さ故に細く見えるが、しっかりとした体つきをしている。左腕と額に青い巻き布をしていて、額の布は眉から広く前頭まで覆う。武芸の心得があり、使うことはないが帯刀している。多少頑固なところがあるが、許せるところはかなり融通。元が龍の為に、力の回復に食べ始めると、食堂が空になる。人よりは鼻が利く。
国と自身の異変を悟り、四方の王と神獣に礼を述べるため、旅に出た。
ファン:主人公その二。東の大きな街に住む十五歳の少年。伸び盛りだが、まだ比較的小柄。金色に近い明るい髪をひっ詰めて結んでいる。身軽で、体術等の物覚えはいい。反面、小難しい理屈は覚えるのが苦手。好奇心旺盛、根は素直で利発。育て親の意向で過保護に育てられたため、反発するのは不得意。また、一つに集中すると、他に気がいかない。
国の中枢、御柱で獣堕と化した母親から生まれ、中央の力を具現しうる特異な存在、太極となる。その身に災厄の及ぶのを危ぶんだ神官長に連れだされ、これまで育てられた。
青の国の章
バク:ファンの育て親で、東の町で小さな医院を営む男。幻獣、獏の化生で三十ほどの見た目だが、長命不老のため数千年を生きてきた。痩身の麗人で、長髪をひとつに結っている。物腰も柔らかいため、女と紛う者も多い。筋金入りの心配性で、親代わりとしてこれまで多少過保護にファンを育ててきた。優しいがしつけには厳しい。
ファンにとってこれまで慈しんでくれた親であり、教え導かれた教師であるが、その実は御柱の神官長で、太極として生まれたファンを守るために、御柱を出た。獏という幻獣の特性から、夢や記憶を読み、操る術に長けている。
シー・イー兄弟:双子の男で、それぞれ蜥蜴の素養を持っていた。が、獅子に憧れる心を檮杌に付け込まれ、仲間と共に太極の誘拐を企てる。
青の国の章2
リーユイ:東の関近隣で、官の配給を狙う盗賊の首領。潔癖で頑固だが、根のまっすぐな生真面目な男。志を同じくする、自分と同じような若者を集め、賊を結した。元々は役人を目指して獣人となり帰ってきたが、官の腐敗に憤りを覚え、王府を庇う父と仲たがいし、家を出た。鯉の昇化で、水を操る。獣化すれば、水中で呼吸できる。妹には弱い。
シュウ:東の関の衛士であり、それらの取り纏め。気のいい男で、また細かいところまで気が利く。普段は大扉の前で棍を携え、関を守る。檮杌との戦いの際、部下の衛士への指示、町の守衛など、被害が出ないようにはかった。町人の信は厚いが、本人は重役を嫌い、衛士に甘んじている。
檮杌(コツは木偏に兀):とうこつ。四凶の一で、蚩尤の配下。東の地に封じられた、建国の魔獣。大戦ではシンと戦った。長い尾を持つ、トラや猪の巨大な混獣。人の姿は武骨な大男で、どちらの姿でも左肩から袈裟がけに大きな傷があり、左脇腹に蚩尤の眷族を示す刺青がある。尊大で好戦的、細々したことを嫌う。その頭に、撤退の二字はない。
ジンユイ:ニエンの娘で、リーユイの妹。病で亡くなった母の代わりに家事を切り盛りし、仲たがいしている兄と父の仲を何とか取り持とうとしている。しっかり者で、料理上手。
ニエン:南都との関の前にある山間の村長。リーユイ、ジンユイ兄妹の父親。盗賊となった息子に憤りを覚えている。王府を信じ、昔からの在り方を守る。
町長:東都への出向を望むあまり、檮杌に付け入られる。強きになびき、檮杌に言われるがままに動いた。その心の弱りや穢れにより、獣人としての力を失っている。檮杌に見捨てられた後に、リーユイやシュウに叱責され、どこかへ消える。
赤の国の章
朱明:南の地を統べる神獣、朱雀。火行の具現で、炎を纏った、朱の巨鳥。尾は五色に彩られ、鳴声は天上の調べに例えられる。人の姿は赤い衣をまとった十ほどの少年で、喜怒哀楽がはっきりとしている。一人称は余。美しいもの、楽しいものを好み、自ら楊琴を奏でることもある。隣国の神獣であるシンとは比較的仲が良い。
ランファ:現南王で、赤の国を治める、朱雀の獣人。艶やかな黒髪の三十ほどの美しい女性。南の季候もあってか、普段は重い衣を避け、朱の吊帯長裙に薄紅の繻子の衣を羽織る。面倒見がよく、快活。「ふさわしい振る舞い」を重んじ、臣下や民の前では王らしく振る舞う。仲を違えた年の近い妹がいる。
ジェン:窮奇につき従う、幻獣鴆の獣人。光の加減で緑に艶めく黒い衣装を纏う、妖艶な踊り子。南部の酒場で舞い、集落に毒羽根をもたらした。本名はグイファで、南王の妹。一途で真面目な性格だったが、目標にしていた姉が王となることで、圧倒的な差を感じ、出奔の後、恨み妬みを募らせていた。窮奇を心より信奉している。
シャオファ:南都の外の“集落”に住む少女。花の細工や装飾品を売り、生活している。素養が知れないことや集落の生まれであることに、引け目を感じている。踊り子であるジェンに憧れ、心酔していた。
ダーシュ:シャオファの父で細工物の職人。長のいない集落で発言力を持つ。
ルーユウ:南王近衛の獣人。鴉の昇化。神域への立ち入りのできる数少ない人間。嘘も方便が信条の、世故ずれした男。
窮奇:きゅうき。四凶の一で、蚩尤の配下。南の地に封じられた、建国の魔獣。大戦では朱明と対峙した。本性は翼のある黒豹。人の姿は細身の美しい男で、理知的な言動をする。左手の甲に蚩尤の徴を持つ。独特の美学を持ち、世にいう善を嫌い、悪行を行う者を好む。また、考えようとしない者も嫌う。黒い澱みを生じさせることで、自身の体の保護や移動を行う。
赤の国の章2
イェンジー:金環山の中腹に庵を建てて住む、絵描きの男。無自覚の仙人で、描いた絵を現実のものにする。気にいった絵が描けないとその間酒に酔い、気まぐれに過ごすが、絵に対してだけは非常に真摯。右目は視力を持たないが、代わりに気や物の真実が見える。
鸞:鸞という幻獣にして聖獣。朱雀の姉。フーという名前がある。自身の外見ゆえに人目につくのを恐れ、人と関わらないように過ごしている。が、人への興味はあり、また過去に親切にしてもらった人間を想い続けている。本来の姿は、朱雀を凌ぐほどに美しい五色の巨鳥で、火山の熱を司る。
黄の地、御柱の章
白澤:御柱の社の副神官長。聖獣、白澤の化生で長命不老の存在。眼鏡をかけた両目の他、額の中央、縦にもう一つの目を持つ。髪を後ろに撫でつけ、白と藤の上衣下裳を身につけている。生真面目で、天の理を守ることに忠実。それを破る者に対しては非常に厳しい。額の目によって見れば大抵の素養が知れる。分祀にいる見立ての官の総取締。バクが不在の間、天社をまとめ、その帰還を待っている。
金烏・玉兎:御柱の案内や、御柱全体の管理を任された二人の童子。金と銀の違い眼をしていて、左目が金なのが金烏、銀が玉兎。太陽を示す金の鴉と月を示す輝く兎の化生。御柱の多くの官と同じく、長命不老の者。
リリ:御柱の幻影として現れたファンの母。四方いずれかの文官で仙女。長命だったことがうかがえる。腹の中の赤子を守るため、命を賭して守りの術を張った。ファンを生んだ後、絶命する。芯の強い、快活な女性。
ウェイ:御柱の幻影として現れた、ファンの父。四方いずれかの武官で武術に優れた。身重の妻を連れ、御柱まで来たが、旅の間ずっと父になることの懊悩を抱えていた。蚩尤に取りつかれたリリの手によって一度は絶命し、ジュジによって錯乱状態のまま甦らされる。ファンに襲いかかるが、最後には自身の覚悟と意志を取り戻し、ファンへの愛情を伝え、消える。
ジュジ:ファンと共に御柱を巡った、正体不明の少年。白い肌に銀の髪、血のような緋色の瞳をしている。意味深な言動を繰り返すが、本質に迫ることは語らない。魔の者との繋がりを持ち、そこでは蚩尤の子息と名乗る。
白の国の章
西王:西の地、白の国を治める現国王。在位数年だが、かなり若く、性情は峻峭。王宮に留まらず、活発に国を動き回っている。日に焼けた肌と銀髪、八重歯が目立つ。自身も凶荒の際の孤児の一人であり、自力で四方を巡り当時の王と会っている。皮肉や強い言い回しが多く、威圧的だが、根は優しい。名はクーフェン。
蓐収:じょくしゅう。西の地を統べる神獣、白虎。金行の具現で、美しい紫の瞳を持つ、白い大きな虎。人の姿は白と紫を基調とした女官服に身を包んだ、若い女性。物静かだが、意志は強い。死んだ先代白虎の妹であり、神獣に上げられるまでは人里離れた山に隠遁していた。共に王となり神獣となった現王に、忠誠を誓う。王には紫晶と呼ばれる。
ダオレン:旅一座「雲海座」の座長。この名は代々襲名する名で、刀剣、の意味を持つ。個人の名と並べる。現在の座長はランなのでラン・ダオレンが正式。現ダオレンは狼の獣人で、外野の獣と意思を通じることができるため、一座は旅の道の安全が図られている。一座を家族のように大切にする気の良い男。
饕餮:とうてつ。四凶の一で、蚩尤の配下。西の地に封じられた、建国の魔獣。大戦では先代蓐収と対峙した。本性は人の体に牛の頭を持った怪物の姿だが、体を西王に取られてからは、赤黒い靄の状態で過ごしている。人の姿を取れたころは子供の姿をしており、傲慢で強欲、名前を呼ばれることすら嫌う。左頬に蚩尤の徴を持つ。蚩尤に心酔している他は、誰の指示も受けず、全ては自分のものだと思っている。人の体を乗っ取ることができる。
ジピン:至黄の道の下りで出会った青年、片脚を悪くしていた。湍水下流の渡の水妖の為に、四方への大赦を願う旅の帰りだった。
河伯:湍水の下流にある渡「河伯の渡」において、船を引いていた水妖。建国時の大罪によってその仕事を科されていたが、ジピンによってもたらされた大赦によって、その責を解かれた。青磁色の鱗に覆われた半人半獣の妖。