青龍の力(2)
双子の獅子は二本杉にそれぞれ叩きつけられて、気を失った。その体から霧のような影が立ち上って、夜気の中で爆ぜて消えた。途端に、双子の体は急激に痩せ細り、先ほどの屈強さなど見る影もなくなってしまった。シンはそれを見て目を伏せ、小さく首を振った。
空を見ると、東がぼんやりと白んできていた。じきに陽が昇るだろう。咳きこむ音に、二人は急いで振り返る。
「先生! バク先生!」
ファンが急いでバクに駆け寄る。その目にうっすらと涙を浮かべ、バクの手を取る。バクは弱々しく微笑み、それに応えた。
「青龍の力ですか、ファン。……その背丈では、龍も少々、可愛らしく見えてしまいますね」
町の方から開門の鐘が聞こえて来る。朝日が昇ったのだろう。二本杉のまわりにも朝日が差し込んでくる。ファンの体が朝日に照らされると、青い光がひときわ輝いて、次の瞬間にはふっと消えてしまった。そして、その姿は元にもどる。
「やはりそうでしたか。ファン、急ぐことは少しもありません、ゆっくりと自分の素養を見つめていきなさい」
「先生、わかった。わかったから、喋らないで!」
泣きそうな声でファンが叫ぶ。シンはその横に膝をつくと、ファンに離れるように言った。心配そうな顔で、ファンはこちらを見つめている。
「死ぬ気になるのは早いぞ、バク。お前にはまだ、天の命が残っているだろう。……木行の預かる力はわかるな? じっとしていろ」
シンはバクの体に袈裟がけに入った傷の上をゆっくりとなぞるように撫でた。服の下、肉の見えていたところが、何事もなかったように元の皮膚で覆われていく。
「木行は、生命を巡る生を司る。木々を起こし往く春の目覚めの力だ」
バクの体から手を離し、シンは立ち上がる。バクが体を起こすと、ファンが駆け寄ってその傷があったところを見て、息を飲んだ。自身にすがる少年を一旦放し、バクは座り、深々と叩頭した。
「有り難き恩情賜り、天の臣として心より感謝申し上げます」
そして、バクは顔を上げ、辺りを見回した。
「今日に関わった記憶は、寝ている間に私が食べてしまいましょう。残しておけば、どちらにも支障が出るでしょうから」
立ち上がったバクに、ファンはにっこりと笑い、先生、と声をかける。
「やっぱり先生も獣人だった。いつもおれの怖い夢も、そうやって食べてくれたんだよね。だから、おれは今までずっと元気でいられた」
はっとした顔で、バクはファンの方を見て、膝をつく。じわり、とその目が潤む。
「ありがとう、バク先生」
ファンが言い終わる前に、バクはその少年の体を引き寄せ、抱きしめた。その目からは涙があふれる。ファンは初めこそ照れたようにじっとしていなかったが、バクが同じようにありがとう、と呟くと、同じように涙を浮かべ、それをもう一度繰り返した。
シンは少し離れたところで、朝焼けの空を眺める。今日も良く晴れそうだ。雲ひとつない晴天。しばらく、雨の気配はないだろう。旅に向いた日和だ。