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第一章 『出会い』 (4)


「はあーーー。今日は疲れた」

首をコキコキと鳴らす

気づけば教え始めて3時間半もたっており

「うっわもうこんな時間か。じゃあ今日は終わり!また来週の同じ曜日にくるからな」

「ありがとうございます。まってますよ、林道さん」

そんな感じで急いで帰っているわけだ

「んーーーーと、たしかこの辺に近道あったよな」

・・・・・この時の俺のなんとなくの思いつきでいままで通ったことのないような、近道を選んだことで俺の暇だと思っていた夏休みは劇的に変わった

「ああ、あったこの細道を通ればいいんだよな」

昔、秋に教えてもらった記憶をたぐりよせる

その道を見つけることはできた・・・・できたんだけれども

「・・・え?」

いくら細道といえども、そこには点々と電灯があって・・・・

・・・・その一番手前には一人の人間が体育座りをしたまま寝ていて

そこまでは良かった

いくら田舎といえども、ホームレスはこの町にも何人かはいるから

・・・だけど

その人の髪は金色で・・・いや、色で表現するのは適切じゃないような気がする

色というよかは・・・そう、光だ

その光に、自分の全てを吸い取られている気がする

無意識の内に、近づいていく

正面に立つ。女性なのだろう髪は長く、腰まである

まだ彼女は気づいていないのか、うつむいたまま寝ている

その時だ

ブブブ・・・ブブブ・・・ブブブ・・・

さっきからずっと鳴りっぱなしの携帯に気づく

確かめてみると、春からのメールだった

『少し話したいことがあるんだ。明日会える?』

内容を確認した後、返信はせずに携帯を閉じた

今は、返信をするなんて余裕はなかった

けれどさっきよりか少し冷静になれたと思う

・・・・とりあえず、起こそう

後のことも考えず、急にそんな考えが浮かび上がった

肩を、叩く

起きたのか、頭が少し揺れた

「起きてください。風邪、引きますよ?」

なんとなしに出た言葉だった

彼女と何かしらの関係を持ちたい。そんな感情からだったと思う

「・・・ん」

「大丈夫ですか」

「・・・大丈夫」

そう言いながら、彼女は顔をあげた

「・・・・・・・・」

絶句した

あまりにも綺麗過ぎて。

彼女の顔はまるで人形のようで・・・・さわったら崩れてしまいそうで・・・・

「えっと・・・ここじゃ、風邪引きますよ。とりあえず俺の家、来ますか?」

・・・今思えばこの時の俺は馬鹿みたいだったと思う。そりゃあ驚いていたのはわかるけど・・・まるでそれじゃあナンパ、だ

「・・・なんでですか?」

彼女はそう問いかける。そりゃそうだろう、急に男がきて『俺の家来ませんか?』なんて言ったら

「男の一人暮らしの部屋ですけど・・・・もしよかったら俺ん家のベッド貸しますから。女性が道で寝ているのなんて、ほっとけないですよ」

「・・・迷惑・・・・かけるから」

どうやら俺は断られたようだ。まあそりゃそうだろうな

だけど・・・・さっきの言葉に嘘はない。好きとか・・・そういう恋愛感情は抜きで彼女をほっとくことはできなかった

「迷惑なんかじゃないです!そりゃあ俺が怪しいのは当然かもしれないけど・・・でも・・・」

最後のほうはなんだかあいまいだった

でもその感情は通じたみたいで

「・・・・・・じゃあ今日一日だけ」

・・・・・・・・・これが俺たちの最初の出会いだった

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