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第一章 『出会い』 (3)

「じゃあな」

「おう」

そう言って俺たち3人は別れた

マンションが学校に近い分俺が一番初めに別れるんだけど今日はちがった

2人は商店街の近くに住んでいて、近所に家があるらしい

らしい・・・というのは俺は秋の家には行ったことがないからだ

小学生から一緒だったのに家に遊びに言ったことがないのには理由がある。

秋の親は有名な会社の社長らしく・・・こう聞くと秋がどんどん完璧な人間のように思えるが、完璧になるのにも苦労があり小学生の頃はずっと塾で遊ぶ時間もなかった

中学生になってからは少し自由にもなったが部活などと遊ぶ時間もなくなり遊ぶ機械があっても、親のいない俺の家で遊ぶ時がほとんどだった

「商店街でなに買うの?」

別れ際に春がたずねてきた

「バイトだよ。一人暮らしも大変でね」

「そっか。頑張って!」

そういうと春は走って帰ってしまった

俺も商店街のほうへと歩く

「今日は・・・三時間だけか」

アルバイト・・・といっても商店街で働くわけではない

商店街に住む中学生の家庭教師だった

家庭教師は普通のアルバイトよりも高く、俺一人ならなんとかやっていけるぐらいは稼げた

高校二年生では教えれることも少ない・・・・そう思う人も多いかも知れないが俺の教える科目は数学と情報だけだ

数学だけは人並み以上にでき、中学の頃から模試はいつも全国で十位以内には入る

情報はパソコンのインターネットからプログラミングまで幅広く教えているためか年上に教える機会も少なくはなかった

「ここ・・・・だっけな」

そうつぶやき、商店街の中にある洋服屋へとはいる

「いらっしゃいませーー」

「家庭教師に来ました林道です」

そういい名刺を渡す。今日の相手は初めて教える生徒だった

「2階に息子がいますので、よろしくおねがいします」

多分母親なのだろう。礼をしてまた仕事に行ってしまった

「ふう」

やっぱり初めは緊張するな

教える側が高校生だからか、初めて会うときには怪訝な顔をする親もいたせいかこういうときはいつも緊張する

最近では俺の評判も上がってきてそういうことはほとんどないが・・・

狭い階段をあがっていく

2階は生活するスペースになっているのか結構広めな空間になっていた

「どこの部屋だ・・・?」

そこまで聞くのを忘れていた。プライバシーとかあるから勝手にほかの部屋にも入るわけにはいかないし・・・・

「んっと・・・」

あたりを見る

カタカタカタとなにかたたく音が聞こえた

「しゃーない。聞くか」

そう思いその音のする部屋に入る

「あのーーーすみません。家庭教師に来た林道ですが・・・」

そこには一人の男の子がパソコンのキーボードをたたいていた

気づいたのかイスを回転させてこっちを向く

「よろしくお願いします」

「えっと、依頼したのって・・・君かな?」

「そうだよ」

「数学だったよね?教科」

そう言って部屋の中に入る

よく見てみれば、何台もパソコンがあった

中学生の持つような量じゃない

「すごいね。君の部屋。これ、君の?」

そんなわけない・・・そう思いつつも聞いてみた

「全部僕のだよ?」

「やっぱり?そんなわけないって・・・・え!?」

ビビッた。いや素直にビビッた

「これ、全部!?」

「うん。使ってないやつもあるけどね」

「すごいなあ・・・・パソコン、得意なの?」

・・・というかパソコンが得意じゃないのにこんなに持っているなら許せない

「まあ・・・・すこしプログラム書けるぐらいだけど・・・」

「そっか・・・って話それちゃったね」

そういい彼の座っているイスへと近づく

「このアルゴニズムが解けなくて、家庭教師呼んだんだ・・・・えっと、これなんだけど」

そういいつつ、男の子はパソコンでひとつの大量の数列を開いた

「それなら、数学じゃなくて情報のほうだよね?お母さん、数学って言ってたけど」

「僕の親、そういうのに厳しいから。どうにかして林道さんを呼ぶにはこれしかなかったんだ」

どうするか、迷った。親をだましてまで違うことを教えるとこれからの評判にかかわる・・・

「お金のほうは情報のほうで払うから」

俺の授業は数学よりも珍しさから情報のほうが料金は高かった

「んーーーーでもなあ」

「このパソコン、あげるから」

「でもなあ・・・・って、え!?」

男の子の指差すパソコンは前から欲しいと思っていたものだった

一人暮らしで生活するには、そういった高価なものは買うのを我慢しなくてはいけなかった

「ま・・・マジでいいの?」

「教えてくれたらね」

・・・どうしよう

いままでこんなことはなかったし・・・

今日二回目の天秤を利用した

頭の中で評判とパソコンを比べる

うん、圧勝

パソコンの勝利だった

「オーケー。ただしこのことは絶対にばらさない」

「わかった」

そんなこんなで三時間に渡ってアルゴリズムの解読が始まった

「ってかこんなにパソコンあるなら同時作業で、スペックでのごり押しで解読したらいいんじゃない?」

「んーーー、それは考えたんだけどね・・・今知りたいのは解読内容よりも解読の方法だから」

「だよなあ」

この手の人間はそういうの多いもんなあ

実際、俺もそうだし

結果より過程・・・って言うのかなあ

「わかったわかった・・・じゃあ解くか」

「うん」

「けどこれ・・・結構時間かかると思うぞ?」

「じゃあ林道さんにパソコンあげる日も遅くなるね?」

・・・こんにゃろ

「やってやろうじゃんか」

いつの間にかタメ語の俺だった



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