17年蝉
SFの設定ですが、ファンタジーなロマンチックSFとして以前書いた作品です。
子供の頃一緒に虫取りをしていたカナちゃんは長野に転地療養することになった。ぼくはカナちゃんに大きなセミの抜け殻を選別にあげた。その後僕も東京に転校し17年間会うことが無かった。ぼくは東京では虫取りもできず、やがて写真に興味を持ち、親の反対を押し切り写真学校に進学し、虫や花を撮っていた。ある日再び故郷に帰り森の中に入ると昔のままのカナちゃんに出会う。カナちゃんは長野で亡くなり、17年蝉になりぼくを待っていたと言う。目のまでカナちゃん女子高生になり「脱皮したの」とカナちゃんは言う。ぼくは故郷で大学に入りなおし生物学で博士号を取得し、思い出の森の管理人になり、カナちゃんと再会した場所をサンクチュアリにした。
アメリカには十七年も地中にいる蝉がいるそうですが、私はまだ実物を見たことがありません。昆虫が大好きな私にはぜひ見てみたい蝉です。
日本人にはセミの鳴き声は、風情のあるものに感じられます、でも、外国の人には騒音にしか聞こえないとか、でもこれは日本みたいにかわいい蝉じゃないようですね。
ぼくは昆虫観察が好きなんだ、森に入り込んで木々や草むらを覗いている。
弱肉強食の世界だって?いやいや、人間様の目で見るからそう思えるのさ、食べられる虫、食べる虫、その虫が死ねば、また他の生物の栄養になる互いがバランスをとって共存しているのです。
大きな樫の木の下にはよく見ると、不思議な世界がいっぱいあります。
「ねえお兄ちゃん、これなあに?」
「これかい、セミの抜け殻だよ」
お隣のカナちゃんだ。
樫の木の幹に、大きなセミの抜け殻を見つけた。こんなに大きな抜け殻はめったにないや、宝物にしよう。
ぼくより3歳年下のカナちゃん。体の小さい僕はクラスメイトとは遊べなくて、いつもカナちゃんと遊んでいた。
「二人はお味噌だよ。」
ぼくらは味噌っかす。でも意地悪されてたわけじゃない。小さい子は遊びで負けても罰がない、お味噌は優しいルールだった。
「ねえ、あたし長野に行くんだって。」
「長野?」
カナちゃんも体が弱くて、長野の療養所に行ったということはずっと後で知った。
あの日僕らは、野葡萄をしゃぶりながら歩いていた。
「これ、、あげる、、。」
カナちゃんがほしがっていた大きなセミの抜け殻をあげた。初めて恋のようなものを感じた瞬間だった。
でもセミの抜け殻なんて。なんでもっとロマンチックなものを思いつかなかったのだろう?
「ありがとう、お兄ちゃん。長野から帰ったらまた探検ごっこしようね。」
探検ごっこ、これは観察って言うのだけど。
「うん、いいよ、待ってるからカナちゃんもここへ戻ってきてね。
あれから十七年、ぼくは専門学校の学生になった。僕もカナちゃんが引っ越した翌年、東京へ父の転勤で引越したのです。
東京には虫なんて観察できる場所なんかなかった。
ぼくは虫の観察もできず、やがて代わりにカメラが趣味になった。
高校を出た後は親の反対を押し切って、写真の専門学校に行った。もっぱら虫やら草花を撮影している。
「これがふるさと、っていうのかなあ」
僕は再び昔住んでいたこの場所に戻っていた。だいぶ都会化した故郷だったけど、森はまだ残っている。
森には誰も来ない、広場がある。周囲が気に囲まれ、そこはまるで異空間のような場所だ。ここは僕の研究所だ、屋根もないし、先生もいない、でもここで虫を観察していたんだ。
大きな樫の木、ここではドングリをよく拾ったなあ。
樫の木の下に女の子がいた。
「カナちゃん?」
「お兄ちゃん、待ってたよ。私長野から帰ったのよ、でもお兄ちゃんいなくなっちゃってて。でも嬉しい、やっと会えたんだもの。」
まさか、あれから十七年だぞ。
「待ってたって、カナちゃん君はまだ子供じゃないか、なんでなんだ?」
カナちゃんにこっと笑った。
「ほら、これお兄ちゃんがくれたプレゼント」
手のひらを見ると、セミの抜け殻
「十七年蝉!」
子供のころは分からなかったが、今は分かる!
「カナちゃん、これ日本にはいない蝉だよ、アメリカにしかいないはずだ!」
でもなんでここにいるんだろう、そしてカナちゃんはどうして子供のままなんだ。
ぼくは十七年蝉のの抜け殻を手のひらにとって見た。
「お兄ちゃん、約束守ったよ。」
「え?」
カナちゃんを見ていると、小さなカナちゃんはモヤモヤとゆらいで、どんどん大きくなっていた。
見る間に高校生の少女になっていた。
「えええええ!!!」
「わたし脱皮したの。」
くすっとカナちゃんは笑った。
「お兄ちゃんに会いたかった。私長野で亡くなったの。でもお兄ちゃんに会いたくて十七年間寝ていたのよ。蝉になってね。」
「カナちゃん君は。」
ぼくは、森の管理人になった、この森を残すために。
ぼくはこの町の大学の、生物学部に入りなおした。この森の生物を研究し、博士号も取った。
樫の木のある広場は環境保全地域で僕の許可を得なければ入れないサンクチュアリにした。ぼくとカナちゃんとの秘密の場所なのあだから。
カナちゃんはカナカナ蝉からつけた名前です。
ショートは何十年も書いているのですが、ロマンチックSFな感じです。




