アプローチしまくる高嶺の花「アリスちゃん」
この作品は短編版ロシデレを参考にしたものです。似たところも多くあります。
完全に一緒なわけじゃないです。
なんか書きたくなって……!気づいたらこうなってました!
「えっと……いや……ない!?」
いやいやそんなことある!? 最悪弁当ないんだけど……どうすれば……あ、学食あるじゃん! お金……ない!?
昼休みが始まってすぐのことだった。バッグを探しても弁当はどこにもない。机の横、中、上、ましてや教材ポックスまで探した。
はぁ……今日はなしか……ゲームばっかしてた僕はバカだ! アニメも見たし! その原作の小説も! 漫画だって見てしまった!
諦めて机に突っ伏した。頭の中では昨日の後悔が残っていた。
「……なにしてんの。あなた」
突如横から声をかけられる。彼女の名前はアリス・ノヴァ。この学校では高嶺の花と言われる美人さんだ。
名前で外国人とわかるが、見た目でどこ出身かはわからない。先に言っときます、フランス人です。
透けるような白磁の肌に、サラサラのロングヘア茶髪。瞳は青色と顔面偏差値お化け。おまけにスタイル抜群で運動もできる。まさにチート、神は不公平だ。
顔を上げて今にも泣きそうな顔で話しかける。
「助けてくれよアリスぅ〜弁当忘ないんだよぉ〜」
「はぁ? バカじゃないの?」
「バカとはなんだ! ただのアニオタだぞ!」
「それをバカって言うのよ。どうせ夜ふかしして頭回ってなかったんでしょ」
グサッ
デリカシーのない言葉を乗せた矢印が胸に突き刺さる。
「ぐっ……なんとか耐えた……」
痛いところ突いてきやがって! なにが悪いんだよ!
アリスは上からこちらの顔を見てくる。勝ち誇ったようにニヤけていた。
(きゃわぁぁぁっ!! 何その顔! もっと見せてよ愛香君!!)
「……(結婚してください)」
「――は?」
「だから、(結婚してください)」
「いや声小さいから何言ってるかわからん」
「――答えは?」
「質問なの!?」
(今日も言っちゃった!! 早く答えて……心臓もたないぃ)
アリスの僅かな紅潮に気づいただろうか。
あ、ちなみに僕は白水愛香。名前? お母さんが「女の子みたいな名前がいい!」ってこうなった。まぁ見た目女みたいだし母の思惑通りなんだけど。巷で噂の男の娘ってやつ?
ちなみに僕はフランス人と日本人のハーフ。世界でも珍しいオッドアイ、髪色は白だよ? 髪はロングだけど長いしポニーテールにしてますよ。フランス語はわかりまてん。
友達によれば僕は「天然で鈍感」らしい。チョットナニイッテルカワカンナイケドそういうことだと。
実は子供の時心理学勉強しまくった結果、アリスの心が読めるようになりました。あと地獄耳なのでアリスが何言ってるかわかるぜ☆ 他の人も読めるのかって? 無理に決まってるだろ!
「ナニイッテルカワカンナイのに聞かれてもねぇ……」
「――早く」
「NOだ!」
「……そう」
(振られた! うぅ……でも諦めないから!! はぁ……今日も可愛い愛香君で満たされたい……)
アリスは席に戻り、弁当を食べ始める。神の悪戯なのか隣同士、まさに運命というべき。
(うんうん、そんなこと思ってたのね。可愛いなぁ)
僕は心の中でニヤニヤする。アリスはまさか心の中と小声が筒抜けであることはしらないだろう。
「(あなたを虜にさせるから)」
「なんて?」
「『だまれ』って言ったのよ」
「ひどすぎません!?」
「自業自得よ」
昼休み終了のチャイムが鳴った。アリスは弁当を食べ終え、次の授業の準備を始める。さっきの聞こえてますからね!?
授業の準備中――
えっと……あれ、化学だよな? 教科書ないんだけど……
焦る。めちゃめちゃ焦る。化学の先生は「絶対忘れ物するな」と授業初日に言ってきた猛者だからだ。
解決策はある! 必勝法! 隣の人に見せてもらう!
実は隣の人に見せてもらうことはアリなのだ。ただし教科書のみでできるもの、この状況は奇跡に近かった。
「あ、あのぉ…」
「なによ」
「科学の教科書ないんで見せてもらうことって……できます?」
「はぁ? また忘れたの? 何回目よ」
「今年で多分……百回?」
「多すぎよ……」
呆れの言葉を吐く。だがその裏では……
(今日も愛香君と机くっつけられる……! 毎日忘れてほしい!)
めちゃめちゃ喜んでいた。表裏が激しいツンデレ、しかしバレていたら元も子もない。
(心の中バレてますからね!? わかってます!?)
そんな叫びはさておいて、あくまで平然を装った。
「ということでくっつけても大丈夫?」
「……いいけど」
「あざっす!」
アリスと僕の机がくっつけられた。そして机と机の境目に化学の教科書が広げられる。
アリスは頬杖をついて窓の外を見る。アリスは主人公席なのでよく景色がみえるのだ。
こちらを振り向いてアリスをガン見していた僕を見て目を見開く。
「……気持ち悪」
「なんですとぉ!?」
「――(もっと見て……私だけ見て)」
「え? なんて?」
「『気色の悪い変態』」って言った」
「はっきり言ってもらえますかぁ!?」
アリスは僕の小声の叫びを軽く流して、馬鹿にした笑みをつくった。
(あー可愛い……なんでこんなに可愛い反応するんだろ愛香君。尊死するじゃん……)
「いつかその笑顔崩してやる……」
「やれるものならやれば?」
「ぐぬぬ……」
完全にアリスの勝利だった。今の僕に勝ち目はゼロ、認めたくない敗北だ。バレバレなのに!!
ちょうど化学の先生が「授業始めるぞー 席座れー」と言いながら入ってきた。
「起立、礼」
「「「「おねがいしま〜す」」」」
授業が始まった。見た目はいたって真面目な生徒。
だが見ている先は……
(うーわ、なんで笑顔なの。口角上がってるじゃん)
アリスだった。そしてアリスはめちゃめちゃご機嫌だった。今にも鼻歌を歌いそうなほどの笑顔。一応心は読まないでおくけど、多分「今日も可愛い」とか思ってるんだ。うん、そうしよう。
気づいたのか視線をこちら向けるが、真面目なので先生の話を聞くふりをする。
僕は真面目だからね☆ ちゃんと聞くのさ☆
真剣?に聞いてる間もアリスの視線はこちらのままだった。
(可愛い……私求めたのに気づいてなぁい♪ 毎日アプローチしてるのに〜。この感じ楽し〜)
その声が読めた。めちゃめちゃわかっているのに気づかず平然を装うのが辛くなってきた。これ言っちゃっていい感じ? でも言ったらこの関係崩れるかもしれないしやめとこ。まだ楽しみたいし。
この奇妙な関係性。なぜこんなことになったのかというと、去年の高一の文化祭からこうなった。
友達と回ってたらはぐれちゃって、探してたところアリスを見つけた。最初は拒まれたよ? でもほっとけないし無理やり連れてった。最低? いくらでも言え。そんで探すついでに色々回って会話もした。それでも見つからなかったからフィナーレのダンスを一緒に踊って……ん?
なんかおかしいところあったけど文化祭で今の関係になるかって言われると……正直わかりまてん。
でもその次の日からなんだよね。小声でアプローチされて、しかも心の中が僕のことでいっぱいになってるの。なんでだろ。
キーンコーンカーンコーン
……え?
授業が終わった。いつの間にか時間が経っていたらしく、先生は荷物をまとめて号令を促した。
「起立、礼」
「「「「ありがとうございました〜」」」」
え? え? ワケワカメなんだけど。あのこと思い出して……授業が潰れる? え?
僕はその場に立ち尽くした。状況把握ができていない。なぜって? 僕がアリスのことを考えて時間が潰れたから!! 恥ず!
多分、平穏な日々を送れていた。まさか修学旅行が同じ班で一緒に回るとは一切思ってなかった。
――修学旅行――
アリスと僕は……同じ班。流石に部屋は違うが……同じ班。場所は大定番、京都・奈良・大阪。
この学校太っ腹なので五泊六日という長い旅行だった。多分こんなに長い旅行する学校いないんじゃない?
そんなことを新幹線の中で考えていた。
「おい愛香……愛香!」
「うわぁっ! なに!?」
「いやお前ぼーっとしてたろ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ。それより楽しみじゃない? ほぼ一週間使って三つの県回るなんてさ!」
「……確かにな」
こいつは僕の親友、あの文化祭を一緒に回ってたやつ。ちなみにこいつは彼女もち。リアル充実しやがって! まぁ僕はそんなこと気にしないから大丈夫なんだけど、みんなは羨ましがったり憎んだりしてる。なんでかって? こいつ学校でトップレベルの美人の彼女をもってるから。イケメンで性格よくて運動できる……まさに……なんか同じような人いたような……
「なぁ愛香、お前告白するのか?」
「……な、なななななに言ってんだよ! 僕に告白する相手なんているわけないでしょ!?」
「いやいやぁ……ねぇ」
きっと僕の顔…いや全身は真っ赤だった。タコみたいに、赤い。
こいつ、めちゃめちゃニヤニヤしてくる。親友じゃなかったら思いっきりビンタしてやる!
「……まぁそういうのは愛香次第だから」
「ぐぬぬ……」
ちゃんと境界線を作ってやがる。踏み込もうとしてギリギリで避ける。まさに関わり方のプロだ。
「あ〜彼女と回りたかった〜」
「あ、そっか。お前と彼女さん別クラスか」
「そうなんだよぉ……先生にバレてるから強制的に離されちまった」
「可哀想」
「だろぉ?」
親友は悲しむように僕の肩に頭を預けた。普通に見たら男子が女子に甘えている。違うからね!? 僕男!
◇
ふぅ……絶対伝える。愛香君に告白するんだ……こんなチャンス修学旅行以外にない……なるべくは今日……でも五日目のほうが……あぁ難しい!
私はそんなことを思いながら新幹線の席に乗っていた。なんでかって? 愛香君が好きだから。この世で最も好きだから。大大大大大好きだから!
「……アリスちゃん? すんごい困った顔してるよ?」
「だ、大丈夫。普通だから……」
「ふぅん、まぁいいけど。」
なんか見透かされてない? 気のせいは通用するのかな。でも、やることは変わらない。
「(絶対愛香君と付き合うんだから)」
「なんか言った?」
「な、なんでもないよ!」
私は平然を装う。上手く誤魔化せていただろうか、きっとできていないだろう。今の私は動揺で変な顔してたから。
1日目と二日目は京都を回った。金閣行ったり、清水寺も。八坂神社も伏見稲荷大社も。でも、いつもと変わらなかった。私はただ小声でアプローチして、心の中で楽しんで……ただそれだけ。
部屋で恋バナもしたけど、正直楽しくなかった。いつもは愛香君が隣にいた。それが私の生きがいだって、気づいたの。
(愛香君に会いたい……)
そんな言葉が脳内で繰り返される。私はみんなが恋バナするなか、一人布団の中で眠った。
三日目も、四日目も、普通だった。奈良に移って、大仏みたり、法隆寺行ったり。楽しそうにできてただろうか。
四日目のお風呂の時間――
「アリスちゃん、告白とかするの?」
「……な、なななな何言ってるの! 私に告白する相手なんているわけないでしょ!?」
「えぇ? でもしそうだし……頑張ってね☆」
「「頑張ってね」じゃないの! デリカシー知らないの!?」
「知らなーい」
「この……」
からかわれた。あの日の見透かされている感じは本物だったようだ。
私の体はきっとタコみたいに赤いだろう。体が熱い、胸がきゅっと締まる感じがする。
五日目は大阪を回った。大きなテーマパークも行って、なんか楽しかった。
この日、私は大きな出来事があった。愛香君の手と私の手が触れた……! 無意識でだよ!?
(幸せ……もっと触りたい……! 恋人繋ぎしたい! ハグしたい!)
こんなことを思ってしまった。どうせ気づかれていないから大丈夫……大丈夫☆
「ねぇ、いつするの? もう終わっちゃうよ?」
「〜〜〜〜っ!! だからしないって……!」
「早くしないと後悔するからね☆」
「絶交したい…!」
「そしたら友達いないよ?」
グサッ
そうだ。私この人以外仲良くできてないんだった。同じ班になれたことが奇跡……てか愛香君も同じ班……どっちにしろ奇跡!!
「あなたはその……告白とかしないの?」
「え? 聞いちゃう? 実は……告白……してません! 残念でした!」
「……人をからかっておいてそれはどういうことよ!!」
「相手いないもん!」
今までの会話は愛香君たちに聞かれていないくらいの声だから大丈夫。うん、大丈夫…なはず。大丈夫……だよね?
なんとなく聞かれている気がしたが、気のせいだろう。
「ちなみに今日がチャンスだよ。イルミネーションがきいなところがあるからおすすめ」
「だから…!!」
「ねぇー白水君たち」
「なに?」「?」
「実はここ二人でしか行けないところあるんだけど行かない?」
「それいいね! 愛香は?」
「別にいいけど……グループは?」
「えっと……じゃあ白水君とアリスちゃんグループね!あとは余った私たちで組むよ!」
「「――は?」」
私と愛香君は氷のように固まった。
え? 愛香君と? 夢? 夢じゃないよね?
「……ああなるほど」
「そんじゃ行こっか!」
私たちは固まったままその場所に向かう。何がなんだかわからず、ただ二人についていくロボットみたいに歩いた。
そして着いたところは本当に二人でしか入れなかった。看板に「恋の行方はいかに!」って書いてあったけど多分そういう意味じゃない。
「じゃあ楽しんでー」
「期待してるぞー」
二人は入っていく。
何に!? どういうことなの!?
何度目だろうか、思考がフリーズした。きっと愛香君もフリーズしてるだろう。だって動いてないから。1ミリも動いてないから。
「じゃ、じゃあ行こっか……」
「そ、そうね……(ここで……告白)」
「な、なんて?」
「『だまれ』って言ったのよ」
「なんかいつも通り!?」
無意識の間に私はいつもの口調に戻っていた。なんでだろう、愛香君だと毎回こうなる。どんな緊張した場面、恥ずかしいとき、嬉しいときも。
そして私たちは歩みを進める。数分進んだところでイルミネーションがきれいなところを発見した。
「……きれい」
「だねぇ……」
数分間経っていた。その間、ずっと見惚れていた。イルミネーションと、愛香君に。
「……ねぇ……」
「なに。簡潔に」
(愛香君に話しかけられた……! なになに!? どうなるの私!)
「実はさ……わかるんだよね」
「……意味わかんない。なにが」
「その……」
恥ずかしそうに言葉を出そうとする愛香君。その姿は子どものようで、愛らしかった。頬を赤らめ、今にも沸騰しそうな顔で、言葉を紡ぐ。
「――心の声と、小声」
「・・・……え?」
「だ、だから……わかるんだよね……アリスが心の中で思ってること、小声で話してること……」
「――〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
全身が真っ赤になるほど恥ずかしかった。今までのアプローチが全部……全部……聞かれていたのだから。
心の声がわかる? 小声が…聞こえる?
「い…い」
「?」
「いつから……よ……」
「えっと……最初から」
最初から……あの文化祭の次の日から……私が愛香君にアプローチし始めた…あの日から……
「な、なななな――」
「なな?誰?」
「なんで言わないのよこの天然鈍感男ーーー!!!!」
「えぇ!?!?!?」
私は愛香君を突き飛ばして走った。出口に走った。今までにないほどのスピードで。
その出口に向かう途中で――
「あ! アリスじゃん! どう――」
「なんか進展――」
「邪魔よ!! どきなさい!」
二人を突き飛ばした。私は構うことなく走り、出口に着いた。
そして近くのベンチに座り――
「ウワァァァ゙ァ゙ぁ゙ぁ゙ァ゙ァ゙ーーーー!!!!!」
とんでもない奇声を上げた。
あれも、これも、全部……全部、聞かれていた。私の秘密は、筒抜けで……踊らされていた。結婚してくださいも……可愛いも……愛香君で満たされたいってことも……
どれほど悶絶してもスッキリしない。一瞬死んだら楽になるかな、と思ったが……いや、しよう。そうしよう。
「よし……やるぞ……楽になるには……これしか……!」
「危ない!!!」
電柱に頭をぶつけようとする私を誰かが間一髪で防いだ。そして倒れ込む。
聞き覚えのある声だ。何回も聞いて、癒された声だ。初恋の人の声……
「や、やめてくれよ……そんなことしないで……」
「ひゃぅっ!!!」
変な声が出た。泣いている、感情がぐしゃぐしゃで、顔も変だっただろう。
恐る恐る顔を上げ、愛香君を見た。愛香君は、心配しながらも、苦笑いを浮かべていた。
「あの……なにか……」
「……好きな人がそんなことして……ほっとけないでしょ……」
「……す、スキナヒト?」
「そうだよ、アリス……僕は、君が好き」
何回も妄想した告白。「好き」と言われるだけなのに、すごく体が熱くなる。
あ……なんて……好きって……なら、もういいよね…
「わ、わわわ……」
「わわ?」
「わ、私も……好き……大好き……大大大大大好き!!!」
「――っ……改めて言われると……照れるな……」
愛香君は照れた顔をした。人差し指で頭の後ろをかいて――
「ふぅ……僕と、付き合ってください」
私が求め続けた言葉が、好きな人から紡がれる。私は迷わず、こう答えた。
「……はい」
「――っ…」
「ひゃぅっ!!!!」
「可愛いなぁ本当に!!」
抱きつかれた。ハグというものだろう。多分この日以外に、最高の日はない。
「……大好き。愛香君……私の、大好きな人」
私は抱き返す。出した言葉は小声ではなく、心の中でもなく、普通に聞こえるのだった。




