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JK呪術師は今日もルーズに悪魔を祓う  作者: 福嶋莉佳


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第7話

響子は腕を組んだ。


「えー……結局、さっきの怪しい影は現れなかった。つまり……諦めたか」


神父が静かに言った。


「様子見で離れているか……ですね」


「正直なところ……」


響子はちらりと慧を見る。


「櫻木くん、一人でなんとかなりそう……」


三つ習得しちゃったしね……!

しかも半日で……!


慧はしばらく黙っていた。

それから静かに言う。


「……いいえ。諦めたとは思えません。向こうは俺を見つけた、と言っていました」


響子の表情が少し変わる。


慧は続けた。


「狙いは、まだ変わっていないはずです。……来ない理由があるだけで」


「来ない理由は、まぁ……私が追っ払っちゃったからなんだけどね」


神父が静かに言う。


「悪魔は意外と慎重派が多いのです。完全に取り憑かれていなければ、諦めることもよくあります」


慧は少しだけ考えた。


「……なるほど。では……まだ安全ということですね」


響子が肩をすくめる。


「まぁ……今のところは」


「今のところ、ですか」


「うん、まぁ……えっと……これからどうする? ほら、もう夕方だし……」


正直なところ……お腹がすいた。


これまでは、悪霊や悪魔に取り憑かれた人ばかり相手にしてきた。


だから――こういう場合、正直どうすればいいのか分からない。


取り憑かれているわけでもない。

祓う相手もいない。


ただ、悪魔に見つかってしまった少年が一人いるだけだ。


「……一度帰ります。生活を止める理由もないので」


「うん、それでいいと思う」


響子は頷いた。


「悪魔に合わせて生活リズムが狂うのもよくないし。普通に生活してる方が、悪魔も取り憑きにくいしね」


響子は慧を見る。


「……じゃあ、家まで一緒に行こうか」


慧は一瞬だけ考えた。


「いや! やましい気持ちではなく……! 護衛ってほどでもないけど。今日は様子見ってことで……」


「……お願いします」


神父が穏やかに言った。


「気をつけて」


二人は教会の門へ歩き出した。



教会を出て、二人は並んで歩いていた。


夕方の道は、少しだけ人通りが増えている。


「……」


響子はちらりと慧を見る。


「……」


慧は前を見たまま歩いている。


……気まずい……。


え?

こういう場合、何を話せばいいの?


さっきは神父がいたからなんとかなったけど、本当困るんだけど。


悪霊付きのイケメンは過去にもいたけど、あれは宥めるのでそれどころじゃなかったし。


えっ……どうすれば??


響子はもう一度、ちらりと慧を見る。


相変わらず、落ち着いた顔で歩いている。


気まずさとか感じないタイプ……?


数秒、沈黙が続いた。


そのとき、慧が静かに口を開いた。


「雨宮さん」


響子はびくっとした。


「は、はい!」


「……ずっと黙っていますが、体調でも悪いんですか」


「へ? い、いや違います……! 別にそういうわけじゃなくて!」


少し言葉に詰まる。


「その……えっと……こういう時、何を話せばいいのか分からなくて」


「……そうですか。では」


慧はほんの少しだけ視線を向けた。


「悪魔の話でもしますか」


 さすがスクールカーストトップ……すかさず話題を提供してくれた……!


「悪魔の話……いいね! うん、何か聞きたいことある?」


「……一番知りたいのは、悪魔はどうやって人間を見つけるんですか」


響子は一瞬きょとんとした。


慧は続ける。


「街中には人間がたくさんいる。その中から、どうやって標的を選ぶのか。それが分かれば、避けやすくなると思うので」


「……そうだね」


響子は少し考えてから言った。


「一般的によく取り憑かれるのは、気の弱い人。悪霊や悪魔って、まず試すのよ」


「試す?」


「うん。ちょっと揺さぶってみて、驚くか反応を見る。そこで怖がったり、精神が揺れたりした隙を狙って取り憑く」


慧は静かに聞いている。


「霊感が僅かにある人も狙われやすいかな」


響子は続けた。


「でも――もっと狙われやすい人は、悪霊や悪魔が見える人」


響子は前を見たまま言う。


「理由は単純。リアクションするから」


肩をすくめる。


「しかも大体、対処法を知らない。だから格好の獲物になるの」


そして、付け加えた。


「無視するが正解なんだけど、これがなかなか難しい……」


「反応が、全てきっかけになる。ということですか」


「そういうこと」


響子は続ける。


「櫻木くんは今、呪術を身につけた。悪霊や低級の悪魔は、意外と臆病だから」


少し笑う。


「リスクを犯してまで取り憑こうとするのは、そう多くない。だから――たぶん、もう大丈夫だよ」


「……なるほど」


少しだけ視線を前に向けたまま、慧が言う。


「合理的ですね。危険な相手に無理に取り憑くより、別の人間を探した方が効率がいい。

――捕食者の行動としては自然です」


響子は少し目を丸くした。


「捕食者……悪霊達をそう表現する人、初めて見たよ……」


「そうですか? 人間も似たようなものです」


「……まぁ。悪霊って、人間の邪心の塊だからね。そう考えると……その通りかも」


しばらく歩いて、二人は住宅街の奥へ入った。


やがて慧が足を止める。


「……ここです」


「あ……」


教会から、かなり近い。


「だから避難がスムーズに……」


響子は家を見上げた。

口がそのまま開く。


「で……」


……でかい。


目の前には大きな門。

その奥に、二階建てどころではない広さの屋敷が建っていた。


庭も広い。


響子が呆然としていると――


「慧君!」


明るい声が響いた。


二人が同時に振り向く。


門の奥から、少女が走ってきた。

長い髪が夕方の光に揺れる。


「もう、連絡もくれないんだから!」


「……沙月」


少女――沙月は、にこにこしたまま慧の前に立つ。


「心配したんだよ?」


それから、ようやく響子に気づいた。


「あれ? ……誰?」


響子は一瞬固まった。


「雨宮さんだ」


「こ、こんにちはー……」


響子は思わず一歩後ろに下がる。

そして、にこっと笑った。


「それでは、私はここで! さようなら!」


くるっと踵を返し、

響子は全力で走り去った。


沙月がぽかんとする。


「……え?」


慧はその背中を見送った。


「……家に入ろう」



「あー……びっくりした」


響子は歩きながら、小さく息を吐いた。


さっきの少女の顔を思い出す。


あの子……読モの沙月ちゃんじゃん。

テレビや雑誌で見たことがある。


……付き合ってるのかな。

あの二人。


「美男美少女カップルかぁ……」


しばらく歩いて、響子は立ち止まった。


振り返り歩き出し、

再び慧の家の前まで戻る。


門の向こうを静かに見上げる。


「……しばらくは、安全か」


そう呟くと、響子は背を向けた。

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