ひとりでウインクキラーしてみた
いつものように毛布を頭に被りながらでYoutubeを観てた時、あるアイドルグループがウインクキラーをしている動画を見つけた。
ウインクキラーとは、一言でいうなら、バレずにウインクして相手を倒すゲームだ。グループの中でひとりウインクキラーを決め、そのウインクキラーは自然とおしゃべりしている中で他のメンバーにウインクする。ウインクされた人は5秒後に射止められたような大げさなリアクションをとりゲームから離脱。一定の人数(例えば6人中4人とか)が離脱したらウインクキラーの勝利。それまでにウインクキラーが見つかったらその他のメンバーの勝利、みたいなゲームだ。
「ぐああ!ぐふ」
「この角度でやっはぁ!ああ……」
「俺せっ!」
といったウインクされた時のリアクションがおもしろくて、柄にもなくやってみたいと思ってしまった。
だけど私には友達がいない。
小学、中学と友達はゼロ。義務教育という地域の縛りを逃れ、デビューのチャンスと思い挑んだ高校でも失敗し、ああ私はこのまま一生友達がいないまま死んでいくんだと嘆いたこと日もあったが、まあ私にはギターがあるし、ギターしかないし、ギターってしゃべらないんだよな………。
まあまあ、そんなことは、まあまあまあまあそんなことは置いといて、とにもかくにもウインクキラーをする友達がいないという問題に私は陥った。
どうしよう、今から友達作れないかな?
私はレンタル友達とネットで検索した。レンタル彼氏があるならレンタル友達もあるだろうと思ったからだ。案の定レンタルフレンドとか友達代行などサイトが見つかり、いくつかの料金表を見た。当たり前だが、どれも高校生の私には高い……。
はあ、万策尽きたか。
まだ一策しか考えてない私はそう思った。
しかし、人間というのは不思議なもので全ての手がついえた後で思いもよらない一手を思いついたりする。それを人は天啓と呼んだりする。それが私にも降りてきたのだ。
私は洗面所まで行き、鏡の前に立った。
その場で数度反復横跳びをし、滑りやすさの解消のため靴下を脱いだ。それからもう何度か左右に跳び、よしと思える感覚を得た。
私は右に跳び、
「ウインクキラーゲーーム!!」
左に跳び
「イエーイ!!」
「お題は?!」
「お題は『なぜ私には友達ができないのか?』だよ!」
「おう!自虐的〜!」
「それじゃあどっちがウインクキラーやる?!」
「ちょっと待って!ウインクキラーってウインクキラーを当てるゲームなんだからどっちがウインクキラーか分かっていちゃゲーム成り立たないんじゃない?!」
「どうせ2人なんだから片方がウインクキラーに決まってんじゃん!細かいこと気にしないでいこうよ!!」
「それもそうだね!じゃあ私がウインクキラーやるね!」
「じゃあ私が市民やるー!」
「それじゃあ、」
「「ゲームスタート!!」」
「それでさ、私にはどうして友達ができなんだと思う?!」
「そんなの決まってるじゃん!!自分から話しかけないからだよ!!」
「いきなり本質つくね!!」
「たくさん話しかけられる子は、その実知らないところでそれ以上に話しかけているものだよ!!それをせずに話しかけられたいと思うなんて都合いいにもほどがあるよね!!」
「容赦しないね!!でも、クラスメイトの撫子ちゃんとかは、自分から話しかけなくても話しかけてもらえるてるよね!!」
「撫子ちゃんは可愛いからね!!可愛い子だけは特別なんだよ!!可愛いは正義!!可愛ければ特に努力しなくとも恩恵が受けられるのが世の理だよ!!」
「それもそうだね!!私は撫子ちゃんと違ってブスだからね!!!」
「自分のことをブスと卑下するのはよくないよ!!!あなたは言うほどブスじゃないし、仮にブスだとしてもメイクとか髪の毛をいじるぐらいでどうにかできるブスだよ!!!」
「でもメイクとかって面倒いじゃん!!!」
「それぐらい何とかしろって!!!クラスで目立つ為に意味のわからないピンク色のジャージを3時間ぐらいかけてわざわざ買ってたじゃねえか!!!そんなことする暇があるならメイクのひとつぐらい覚えたらどうだ!!!」
「うるさいな!!!事実を言うんじゃねえよ!!!傷つくじゃねえか!!!!」
「それとな、いい加減軽音部のない学校にギターを毎日持っていくのはやめろよ!!!!いつか、『へぇ~ギター弾けるんだすご〜い』とか『ねえねえ、一曲何か弾いてみてよ』とか言われて、そこから一発かましてクラスの人気者に駆け上がろうと妄想しているけど、それが実現可能な時期もうとっくに過ぎてんだよ!!!!もうクラスメイトも先生もお前の奇行にどうツッコミを入れていいのか分からなくなっていること察しろ!!!!!」
「だからそんなに鋭利な事実を突きつけてくんじゃねえ!!!!!!」
「それとな前から言おうと思ってたんだが、お前はぐふぅ!!!!!!!
「イエーイ!!私の勝ち〜!!」
ふう。
………………………。
………………………………………。
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私はこの日、ウインクキラーは2人だと楽しくないことを知った。
次の日、私は妹から「お姉ちゃん、昨日は洗面所の前で何騒いでたの?」と聞かれた。私は、人には聞いていいことと駄目なことがあるんだよと教えてあげた。
それからしばらくして、TikTok上に『うちのお姉ちゃんの頭がおかしい』という動画が流行ったらしい。私はTikTokのアカウントを作っていなかったので、生憎なことにそのブームには乗り遅れた。




