表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
3章:五頭龍と鉄巨人と此処に来た理由
80/87

77話:五頭龍迎撃作戦、失敗(聡美雄吾)

午前十一時。今回はスクランブルではなく、作戦として三沢を発った。


北谷と自分、他にも僚機として二機が。続く形で爆撃機が二機が随伴する。計六機の編成がなされた。


航空自衛隊以外にも、陸自も神奈川県に向け戦車隊が走行を開始。五頭龍の征討に向け出発をしたらしい。


少なくとも自分たちに降った指示は「五頭龍の駆逐」であった。


「征夷大将軍。そんなのなったって何にも変わらねえのになぁ」

北谷は再び太平洋を向かう中、通信を行う。


「そうですね。そもそも、俺たちの攻撃で五頭龍ですか。倒せるんですかね」

「さあな。怪獣映画じゃ俺たちが噛ませ役なのは通例だけどな。わはは」

音割れで北谷の笑い声が途切れる。


「ブラボー1。もうすぐ標的が目視できる距離だ。下降し攻撃準備だ」

ふ、ふと呼吸が速くなる。訓練では行ったことがあるが実践は初だ。それもこんな市街地の近く。避難は済んでいると聞いたが。


そして龍が視界に飛び込む。昨晩見た時よりも、昼間であるためか鮮明にその姿が見れた。

紺碧といえば良いのだろう。黒にも見えるその龍の表皮は太陽の光を浴びて若干輝いて見えた。

先ほどまで分厚い雲で覆われていたのにも関わらず、ここ一帯だけは晴れているのが不思議であった。


「ブラボー1、2。攻撃せよ」

「ラジャ。標的へ攻撃開始」

スイッチを押し、一秒を待たずして視界に二本の筋が走る。ミサイルが放たれた。

すぐさま上昇し、五頭龍を追い越す。そして、ミサイルは着弾。したはずだった。


モニターで五頭龍の頭の一つにミサイルが着弾したことを確認できた。

だが、それを,確認した瞬間機体がぐん、と揺れた。昨晩と同じ感覚。風だ。風で機体が跳ね飛ばされたのだ。


「くっ」

何とか期待を安定させる。


「攻撃。効果なし。第二波移れ」


──効果なし、だと。


モニターで確認する。確かに攻撃が命中したはずの龍の頭は若干の煤で汚れつつも、鱗は備わっており無傷と言ってもよかった。


ミサイルの攻撃が効かない。やはり今目の前にしているこの生命体は神か何かなのか。


「ん?」

モニターの中でも一つ奇妙なものに気がついた。


それは、航空写真。龍の頭の下。つまり、地上にわずかな影を見つけた。

人がいる。影は二つ。五頭龍の直下に誰かいるのだ。


「本部。こちらブラボー1。画像送る。標的の下に人影らしきものが写っている」


龍の真下に人? 逃げ遅れた人なのか。それとも例の源という男なのか。


「ブラボー1。作戦は変更なし。繰り返す。変更はない」


──人がいるのに巻き添えを許すと言うのか。


「北谷さん!」


「聞こえただろ。作戦続行だ。反転するぞ」

彼の機体は翻り再び五頭龍へと向かう。


民間人の巻き添えを許すというのか。そもそもこの龍を攻撃することが、本当に得策なのか。

一瞬に命を託す戦闘機乗りが、あろうことか空の上で逡巡してしまう。


「聡美ッ! 反転!」

北谷の叫び声。


くそ。心の中で毒づき、レバーを傾け百八十度旋回する。


再び五頭龍目掛けて飛ぶ。すでに爆撃機による攻撃も行われたようであるが、効いていないようであった。


わかったことは龍が吠えると、体からとてつもない突風が発せられる。そのせいで、ミサイルの類は着弾する前に宙に浮き直撃を避けられているのだ。


つまり、自分たちの攻撃は通じていない。


「もう一度、座標20の地点から再侵入して対地ミサイル攻撃だ。いくぞ」

北谷は先発して、龍に直進。そのままミサイルを放つ。

グオオと低い唸り声が発せられると共に機体は再びガタガタと揺れる。


「前!」

自分の機体を何とか戻そうとした時、すぐそこに龍の顔があった。

黄色の瞳が、太陽のように燃えていて綺麗だと思った。


そして、衝撃。頭が座席に打ち付けられ星が回る。


そして、けたたましい警告音が鳴り響く。


──やられた。


ぐるぐると機体が回る中、龍と接触したことを悟った。おそらく主翼がやられたのだ。荒い呼吸のまま、緊急脱出のボタンをなんとか探し出し、押し込んだ。


そして、とてつもないGを感じながら自分の体が空に放り出される。運良く機体と接触することなく脱出はできた。


すぐに乗っていたものは燃え上がり、海に向かって墜落していく。

自分は風に煽られ市街地まで飛ばされている。先ほどの衝撃で頭が切れたのか、ヘルメットの中に生暖かさを感じる。


何とかパラシュートを開くと、さらに風に煽られ、陸地へと飛ばされていく。


薄れゆく意識の中パラシュートを操作する。誰かにあたってはまずい。それだけを考え、空いている場所へ。ひらけた土地へと向かう。


消えゆく意識の中、どすんと衝撃を感じた。どうやら何とか着陸はできたらしい。ここはどこだ。

ぼんやりとした景色の中、遠い昔に見た建物につけられた大時計が視界に残った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ