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エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
2章:秘密結社とCIAと江ノ島の謎
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63話:挑戦あるいは(浅倉朝太郎)

「どういうこと?」

ビアンカは尋ねる。


「ショッピングモールで襲われた時、相手の隙を突くために俺のスマホを投げたんです。おそらく、それを誰かが使って電話しているんだ」


「──どうすれば良い?」

鈴音は今も着信が来ているスマホを皆に見せる。


「出るしかない。スピーカーで取ってくれ」

柊木純也の指示に彼女は恐る恐る電話に出た。


「もしもし」

しゃがれた第一声が狭い室内に響く。


「はい」

鈴音は皆の顔色を伺いながら、返事をする。


「おそらく、皆お揃いだと思います。入道です」

電話主はあの男だった。


周りで顔を見合わせる。彼は続ける。


「村尾さん。あなたもそこにいるのでしょう。いやあ、まさか土肥嬢を攫い返すとはね。驚きました」

彼は自分たちの動向もしっているようだった。


「ですが、儀式に必要なものはもう揃っています。私としては計画は変わりません」

「──今お前は何処にいる」

純也は我慢ができなくなったのか、尋ねる。


「柊木さんですか。私が今いるのは土肥嬢を監禁していた洞窟。そこにいますよ」


「場所わかるか」と柊木純也は村尾の父に尋ねる。彼は小さく頷いた。


「どうですか。最後の対決と行きませんか?」

「対決?」

思わず自分はオウム返ししてしまった。


「朝太郎くんですね。すみませんね。携帯電話をお借りして。貴方達は、私を捕まえたいはずです。私は逃げも隠れもしません。どちらが本当の正義なのか、話し合いをしたい。それが私の希望なんですよ」

「それが対決だというのか」

問う純也。


「ええ。貴方たちの立場は今危うい。我々は持てる資金を全て使いさり、ありとあらゆる刺客を雇っています。そして、頼みの綱である警察組織の懐柔に成功しています。このまま、貴方達はありとあらゆるものから逃げながら、私を追う必要があるわけだ」

「それを知っていて対決とする。ミスター入道には一体何のメリットが?」

ビアンカは尋ねた。


「貴方が、CIAの方ですね。初めまして。我々のメリット。そうですね。強いて言うならば、貴方達ときちんと話ができることでしょうか」

狙いが不明だ。話し合い、今この状況で自分たちを誘い出す理由。


「──罠じゃねえのか」

虎丸は皆が思った事を口に出す。


「罠。そんな無粋なことはしません。安心してください。確かに貴方たちの予想通り、私たちは鈴音嬢を狙っています。ですが、彼女は信頼のおけるところで匿っていただいても、逃げていただいても良いのです」

鈴音を呼び出すものではない? であれば、本当に何が目的なんだ。


「悪い話じゃないはずです。私は逃げも隠れもしない。刺客も呼ばない。貴方達の人選は自由です。警察の仲間が、まだいるなら呼んでもらっても構いません。CIAでも宜しい。時刻は今日ならばいつでも良いです。もう私はいますから。では。お待ちしてます」

彼はひとしきり話し終えたところで、通話を切った。


そして静寂が戻る。

「ミスター柊木。どうしますか」

彼は痛みを少し耐えながら体を捻らせる。


「答えは決まっている。今俺たちは明らかに分が悪い。少なからず藤沢署、神奈川県警、もしかしたらそれ以上に彼らの手が入ってなるとこのままではすべての事件が有耶無耶になり、さらに鈴音が危険な状況は変わらずだ」

「行くしかないって事ですね」

源は頭を掻き言った。


「ミスター入道は、待ち伏せはしていない。そうは言っていましたが、どうなんでしょうか。私が彼なら、どんな手を使っても自分を追う者がいれば仕留めますが」

ビアンカは冷酷に状況を伝える。


「だとしても、行くしかないだろうな。このタイミングを逃せば、さっきの話も含め、入道は雲隠れするだろう」

虎丸のゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。


「後は誰が、行くかだ」

純也は周りを見回す。


「頭数は多い方が良い。かといってこの隙をついて、鈴音を狙う可能性もある」

彼は目頭を抑える。


「洞窟の場所は俺が知っている」

毅は持たれた壁から離れる。


「私も行きましょう。登鯉会を抑えるのは私のミッションの一つでもありますから」

ビアンカは大きな目を開く。


「虎丸くん。朝太郎くんはここで……」

純也が言い終える前に、虎丸が吠えた。


「俺も行く。頭数は多い方が良いんだろ。親父も行くなら、俺も行く。朝太郎も行くだろ」

虎丸は自分を見つめた。自分はそれよりも。鈴音に視線を送った。彼女を守る事が大事だ。


「鈴音さんは、僕が守ります」

源は震える腕を押さえ、決意を持った瞳のまま続ける。


「柊木さんも、ビアンカさんもこの事件を追っていた。俺にできるのは、彼女を命にかけても守ることです」

彼は続けた。


「だから、敵地に行くのは多い方が良いです。虎丸くんも、朝太郎くんも子供ですが、ここまで来た事には変わりないです。僕と鈴音さんはここに残ります。学校までは手出しし辛いはずですし」

自身を鼓舞するように、何度も源は頷いた。


登鯉会の真相。自分たちを狙う人たちの目的。それを知りたいと思った。

その時。


──ブルルルルル。

鞄の中が震えた。自分しか分からない現象。おそらくカメラがまた動き出そうとしている。


「俺も行きます。入道さんには聞きたいことがあるから」

「よし」

純也は歯を食いしばり立ち上がる。


「行くぞ」

それぞれ席を立つ。


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