表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
2章:秘密結社とCIAと江ノ島の謎
59/100

57話:機械の腕(浜辺みちる)

源という刑事が現れ、ちーちゃんと自分は登鯉会に所属する店や人を当たり、入道さんの居場所を探ることになった。だがその結果は空振りであった。


「入道さんは、しばらく空けるって言って、いなくなっちゃったよ」


雑貨屋を営む丸渕メガネの老人はそう言っていた。他の店にも聞いて回ったが、同じようなセリフを言っていた。


「──最初から、自分がいなくなることを告げていたようね」

「そうみたいだね」

土肥さつきが拐われた話を聞いた時、まさかとは思った。しかし、こうして自分の耳で話を聞いて回ると真実であることを実感する。


「ダメね。埒が開かない。浜ちゃん。サーフィン仲間に話を聞いてもらうことできる? きっと登鯉会に詳しい人もいると思うから」

「そうだね。わかった。ちーちゃんはどうするの?」

「ギャザラーズの仲間達の聞き込みの結果を確認してくる。きっと連絡がないから、期待できないと思うけど」


彼女はそう言うと、メガネを外しコンタクトレンズに切り替えた。


「それじゃあ、また連絡するから」

峰岸はたたと走り、街の方面へと向かっていく。自分は、反対に海へと向かった。


ざざ、と海が鳴いている。いつものスポットに足を運んだが、今日はなぜだか人が少なかった。波打ち際まで向かうも、やはり顔馴染みはいない。

待っていてもよかったが、日差しが厳しかった。何か良い手はないかと考えていると、ビーチボーイズが視界の端に映った。店長なら何か知っているかもしれない、そう思い向かってみる。


窓から店内を覗いてみると、いつも通り誰もいない。

カラン、とドアを鳴らし入ると、「ハマちゃん!」といつも通り景気の良い店長がカウンターから現れた。


「お店開けているところごめんなさい」

「ドーシタノ。慌てた顔シテ」

店長に事情を話した。


「ソウナノカ。入道さんが。でもソーリー。何も僕は知らなくって」

「いえ。いいんです。そうかあ。もう、どうしよう」

カウンター席の端に座り頬杖をついて考え込む。自分の非力さが情けなくなってくる。


「ねえ。忙しいトコロ、言いづらいんだけどさ。少し時間アルカナ」

「なんですか。今日のシフトならいらないと思うんですけど」

「いや。そうじゃなくって。前、お願いしていた、アサタローのこと何か分かったかなと思って」

そういえば、確かに店長からお願いをされていた。浅倉くんのお父さんがシリウスインダストリーの社長であるということ。


海の流れを変えた張本人。


「ごめんなさい。その、お父さんのことも聞けず仕舞いで」

「ソーだよね。じゃあさ、少し船で近くまで行ってみないカ」

「え」

急な提案であった。


「ヤッパリ僕も気になっているんだ。あの場所で何が行われているノカ。やっぱりここで店を構えている僕にとっても、サーファーがいなくなっちゃうのは、商売アガッタリだから」


「うーん」

村尾が困っており、土肥さつきがいなくなった今、そんな油を売っている時間はあるのか。


「でもタシカ、シリウスインダストリーが登鯉カイに多額の寄付をしているって話聞いたコトある」

「あ。そういえば、入道さんもそんなこと言ってた!」

シリウスインダストリーと登鯉階はそう言った意味では繋がりがある。もしかすると、入道さんはあそこにいるのか。


「店長行ってみようか」

「よしキタ」

そう言って、二人で店を出る。クローズの看板に変え、少し歩いた先の桟橋で待っていると、店長は小さなクルーズ船でやってきた。


「お待たセ」

「店長そんなの持ってたんだ」

「マアね。ローンはアロット残っていけどね」

たくさん残っていると脳内で翻訳し、船に乗り込む。


「ヨシ。じゃあ行くよ」

店長は慣れた手つきで、舵を取り工場の方へと進む。


波はやはり荒れつつ、船体は大きく揺れる。

「店長、アポイントとかは取ってるの?」

「ノープロブレム。行ったらわかるさ」

はは、と豪快に彼は笑う。


次第に工場の姿があらわになる。まるで、要塞のような巨大な白色の塊から、ダムの放水のように海水が流れ出している。


いつも砂浜から見る方向とは真逆。つまり沖合の方向へ船は進む。

高層ビルの建設でしか見たことがないような巨大なクレーンが、忙しなく動く。近くには大きな貨物船も

止まっていた。


「店長! どこに停めるの」

大きな声で、彼を呼ぶが、店長は何やら大袈裟なカメラで、工場の写真を撮っていて気づかなかった。


そして、その時。

ウー、と巨大なサイレンが聞こえた、その後。


「──そこの民間船。何をしている」

スピーカーで音声が流れた。どうやら自分達の存在が気づかれたようだった。


「シット。逃げるぞ」

「え! もう!?」

「バレたらおしまいだ」

そう言って店長は急ぎ梶を切って反転する。


「ちょっと、入道さんがいるか聞かないと!」

「今日は、向こうがご機嫌ナナメだ。立ち去ろう」

「そんな」

船は反転し、工場から遠ざかる。しかし、その時奇妙なものを見た。工場は巨大な壁に囲まれ様子はわからない。しかし、クレーン一つの巨大ま細長い鉄状の物体を上げたのが見えた。


目を凝らす。

「──うで?」


それは巨大な機械の腕であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ