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エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
2章:秘密結社とCIAと江ノ島の謎
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55話:父の足取りを追え(村尾虎丸)

「それじゃあ始めよう。まさか、こんなに助っ人がいてくれるとは。いやあ。若いって良いねえ」

源は自分の家を訪れた。


峰岸と浜辺も心配してくれていたようで、前もって自宅に来てくれている。そして残念ではあるが想定通り父は昨晩戻らなかった。

一昨日から外に出っぱなしであり、書斎で発見した物も全てそのままであった。


そして今、4人で当の書斎に会している。そんな状況。



「まず、今回の村尾くんのお父さんのも、土肥さんが消えたことも、おそらく江ノ島の商工会である登鯉会が関わっているんです」

峰岸は説明を始める。


「──登鯉会? 村尾くんのお父さんがそうなんだよね。あ。確か柊木さんも入道さんのところに桜井京子の事件の時に話聞きに行ってたな」

「消えた村尾君のお父さんが登鯉会に所属していること。そして、桜井京子さんを殺害した犯人の藤井香さんも登鯉会のメンバーであったこと。そして祭りの日以降、今日も含めて入道さんが消えたことも含めると、組織絡みで何かを企てている、そう考えてます」

峰岸はことを整理して刑事に伝える。


「君、すごいな。捜査官にでもなれば良いのに」

それに対して源は直に感心してみせた。


「あ。でも、待ってくれ。実は昨日、登鯉会の事務局のオッサンに聞いたんだ。親父はすでに登鯉会を抜けていたって」

「登鯉会を、抜けた? あ。そういうことか」

源は何かを悟ったらしい。


「村尾さんのお父さんは、きっと登鯉会の指示もあって、組織に迷惑をかけないように足抜けをしたんだ。その実行と書かれたメモは、状況からすると、桜井さんと同じように攫ったのは彼なんだろう。それだと辻褄は合う」

誰もがズバリ言わなかったが、息子である自分もそう考えていた。


「でもまって。今もここに犯行って言っていいのか分からないけど。使うための道具は残っているわけじゃん」

浜辺は言う。実際、藤井と同じ様相の謎の仮面もここにあるわけだ。改めて面を手に取る。


──それは(とり)の面であった。


たしか、浅倉は犬の面を被っていたと言っていた気が。


そのことを伝えようとした時、源が口を開く。


「きっとこれはメッセージなんじゃないか。おそらく実行を本当に計画している人間なら、こんな物は隠すはずだ。けど、そうはしなかった。おそらく予備もあったんだろう。これは探してくれっていうメッセージなんだ」

確かに彼の言う通りだ。鍵をかけたのは見られたくなかったのだろうが、本当に隠したいなら家の中に置きっぱなしにするはずもない。


「よし。今捜査方針は決まった。村尾さんが、土肥さんを攫った。その可能性が高い。そして、その背後には入道さん以下の登鯉会が絡んでいる。まずは、この計画に携わった人間を探して計画を掴む。同時に、彼等を捜索する」

「わ、わかった。で、俺たちはどうすればいい」

「村尾君は僕と一緒にお父さんが行きそうなところをもう一度探そう。こんなこと高校生の君たちにも頼むことじゃないんだけど、登鯉会のメンバーの人たちに浜辺さんと峰岸さんは当たってもらえないか」

「わかりました。私たちはそうします」

峰岸はこくりと頷く。ギャザラーズの人海戦術を使うことまでは、警察の前では言えないようだった。


「よし、それじゃあ取り掛かろう」

再び今日の午後、ここで落ち合うことを決め散り散りとなった。


「それじゃあ村尾くん。とりあえず、乗って」

彼は車で来ていたらしく、助手席に促さられる。


「あ。そうだ。その前に。確か、君たちの話だと、柊木さんの娘さんも狙われているんじゃなかったか」

「そうっす。でも、それなら大丈夫です」

「大丈夫?」

源はエンジンをふかし尋ねる。


「浅倉とCIAの女の人と一緒なんで」

「CIA?」

源は驚いていた。


「え。あ。驚くのも無理もないっすよね。でも、その人はそう言ってました。浅倉も信用できるって」

「今彼等はどこに?」

「あ。ええと。そこまでは」

「──そうか」

源は頭を覆う。


「警察とCIAが連動してるんですよね」

「ああ。そうだよ。うん。それなら安心だ。一応、彼等が今どこにいるのか、それは確認しておいて」

「了解っす」

「よし。それじゃあ行こう」

車を流しつつ鎌倉の街を周った。


こないだよりも今度は足が手に入った分、祖父母の家にも行ってみた。しかし父は来ていないという。

とりあえず近くのコンビニに車を止め、奢ってもらったコーラを飲む。


「源さん、すみません。無駄足を踏ませました」

「構わないよ。刑事なんてそんなこと言ったら無駄足を踏みすぎて、地面が凹むほどだしね。さあ次だ」

源は缶コーヒーを一息であおり、車のドアを開けた。自分も同じように流し込むと、再び助手席に座った。


「さて、と。村尾君に誰から連絡はきてる?」

「──いや。誰からも来てないっす」

「そうか。それは心配だな」

「柊木ですか」

源はゆっくり頷く。


「少なからず、彼女の居場所だけでもわかれば柊木警部を安心させられるんだが」

「柊木のお父さんはこっちには来てないんですか?」

首を横に振るう。


「でもおそらく彼もこっちに戻ってきてるはずだ。確かにあの人は刑事だし、事件の解決には命をかける人だ。今回も登鯉会が怪しいって初めに気づいた人でもあるし、今は東京で、それこそ捜査の真っ只中のはず。でも、人の親だからね。奥さんを早くに亡くして、身寄りは鈴音ちゃんだけだって言うしね」

──奥さん。

その言葉で一つ気がついた。


「源さんスンマセン。ちょっと家の方まで戻ってくれませんか」

「え。何か思いついたのかい」

「はい。実は俺も母さんを亡くしているんです。もしかしたら」


何となく、予感があった。親父はきっと、そこにいる。

「よし。それじゃ案内してくれ」

そう言って急ハンドルで、国道へ飛び出した。

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