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エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
2章:秘密結社とCIAと江ノ島の謎
50/100

48話:新聞部、会する(浅倉朝太郎)

「CIAって、ほ、ほんと?」

祭りはまだまだ続く予定だ。時刻は二十時に近づく。だが人混みのピークは去ったのか、先ほどより移動しやすい。

自分たちはビアンカの後ろをついていくように江ノ島から下山していた。


「まあ。なかなか信じてもらえないと思いますけど、本当です。証拠は、そうですね。ミス柊木、あなたのお父さんと今組ませてもらっています」


「え。親父と?」

彼女はコクリと振り返り頷く。


「いま、柊木さんは、東京で私の代わりに仕事をしてくれています。疑うのであれば、彼に電話して。さ、早く。ついてきてください」

ビアンカは自信満々に言い放つ。CIAなんて映画だけの話だと思っていたし、そもそも実在するのかどうかも分からないものだった。

だからこそ、それを名乗る彼女を信用して良いものなのかは疑問があった。だが、先ほどの柊木と自分の窮地を救ってくれたのは事実でもあり、今柊木を守る上では彼女の存在は必須だ。


「朝太郎。前々から思っていたけど、この人、大丈夫なの」

一歩引き歩く柊木は耳打ちをした。


「大丈夫、だと思っている。お父さんが刑事で、警察の人間だって事、ほとんどの人は知らないだろ。けど、ビアンカさんは知っていた。それにさっきも守ってくれた」


「そうかもだけど。ねえ、今どこに向かっているの?」

柊木はビアンカに尋ねる。


「今あなたたち二人は狙われています。ミス柊木も浴衣で逃げるのは限界があります。だから、一旦着替えましょう。どこかのショッピングモールに行きます」


ビアンカはずんずん歩みを進める。

江ノ島の出口に近づいたその時、見知った顔がそこにはあった。


村尾虎丸。彼が浜辺と共にベンチに座っていたのだ。


「村尾。村尾!」

げっそりとした村尾はこちらに気がついた。


「浅倉か。それに柊木。あんたは」

「村尾。大丈夫なのか。いや、土肥。土肥が消えたんだ」


「土肥。まさか」

村尾と浜辺は顔を見合わせる。


「どういう事だ」

村尾と浜辺は状況を説明した。村尾家が登鯉会に入っていること。そんな父の事実から、木の面、黒のジャンプスーツなど、藤井が身につけていたものと同じだったこと。


そして、一週間前に登鯉会を抜けていた事。


「まってくれ。その木の仮面は『犬』だったか?」

「犬……。いや、すまん。木の面だったことは気づいたんだけど、何の柄だったのかまでは。で、すまん。土肥がいなくなったってのは」


そして、自分が経験したことを伝える。


「土肥ちゃんが連れ去られたってこと? 犬の木の面をつけた奴に」

浜辺は口を押さえる。


「事件はやっぱり終わってねえって事か。入道さんのところに行ってもいなくなっているし」

村尾険しく眉を顰める。やはり、あの男も消えていたか。


「ミスター村尾、ミス浜辺。私はこういう者です」


CIAの手帳を二人に見せる。反応は想像通りであった。


「私は学生に扮してこの街に捜査をするために潜伏していました。そして、あなたたちのことも見ていました」

「ちょ、待ってくれ。本物?」

村尾は改めて狼狽する。


「本物。それは信じてもらうしかないです。そして、今も柊木さんは追われています。時間はそう長くはないです」

ビアンカは落ち着いて諭すように言う。


「いま、詳しいことは言えません。ですが、私たちは貴方たちの味方です。これから私は柊木さんを安全な場所に逃します。アサタロー。あなたもきてくれますね」


「も、もちろん」

宜しいと言うように、目でウインクしてみせる。


「そして、ミスター虎丸、ミス浜辺。二人はお父さんを、そして入道を追ってください。おそらく、土肥さんもそこにいるはず」

「それは、当たり前だ。俺の親父が犯人かも知れねえんだ。息子である俺が、落とし前つけねえと」

村尾の返事に対しビアンカは頷く。


「それじゃあ行きましょう。二人とも。おそらく、登鯉会も状況が分かり始めているころです」

「朝太郎! 柊木!」


別れ際、村尾は呼び止める。


「申し訳ない。俺の親父の、いや。登鯉会のせいで、危険な目に合わせた。土肥にも申し訳が立たねえ。おれが、気づいた時にもっと早くみんなに言えば良かったんだ」


「いや。それは、おれも同じだ。村尾のことも、考えず。気にもせずに登鯉会を調べてしまった」

村尾は鼻を啜る。だが決して泣いているわけではなさそうだ。


「とりあえず土肥は任せろ。何とかしてみる」

自分は頷く。それに村尾は答える。


今は互いになすべきことがある。これ以上の会話は不要だった。

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