表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノシマ・スペクタクル  作者: EDONNN
1章:消えた女子高生とギャングと猿の面
10/100

9話:そして事件が起きた(柊木純也)

注意:少し遺体の表現などショッキングなシーンになっています。ご了承お願いします。

「柊木警部」


藤沢警察署、捜査一課の一室。その片隅でタバコを吸っている時、自分を呼ぶ声がした。       

朝方でもあり、ようやく家に帰れると、疲れた肺にニコチンを染み渡らせていた時だった。


(みなもと)か、どうした」

最近この捜査一課に配属されたばかりの新人が呼び主であった。


「あ、あの事件っぽいです」

「その、『っぽい』って言いかたやめろ。馬鹿にされてる気がする」

「す、すみません」

「それで、どうした」


吸い殻をもみ消し、彼に尋ねるとため息をつきながら答えた。

「つい先ほど110番通報がありました。その遺体を発見した、と」


「遺体だと? 場所は」


「藤沢です。江ノ島付近の海岸沿いで、死後数日が経過したであろう遺体が発見されました」

江ノ島、となると藤沢署の管轄だ。つまり県警本部に応援があったと考えられる。


「遺体の詳細は」

「はい。若い女性の遺体。腐敗が少し進んでいる模様で身元は不明です。しかし」


「なぜ、若いとわかった。もう検死に回ってるのか」

「いえ。その制服を着ていたようです。鎌倉第一高校のスカートのようです」


──鎌倉第一高校。


ずしり、と心の中に落ちる。

「わかった。いくぞ。車を回せ」

「はい。承知です」

制服。若い女の死という現実。それ以外にかかる不安。ちらり、と娘の顔は浮かぶ。


横浜から車を飛ばすこと数十分。この時期は海に遊びにくる若者が多い。そのため、予定よりも到着は少し遅れ9時を回った。

江ノ島。観光客が多く訪れる。当然だが、現場は騒然としていた。


砂浜の一部に黄色の規制線が引かれ、さらに周りにはブルーシートで取り囲んでいる。まだ気づかれてはいないが、マスコミ対策のためだ。


制服の警察官たちは野次馬を追いやっている。そこに先乗りしていた警官がいた。


「柊木さん。お疲れ様です」

「ああ。状況は」

「どうぞ。こちらへ」

砂浜に足を取られながら歩みを進める。


すると波打ち際に遺体はあった。


どちらかと言うと鎌倉寄りに位置するその海岸線に、制服を着た少女の遺体がそこにはあった。腐敗はかなり進んでいる。遺体は膨張していることから、暫く海を漂っていたことは明白であった。


「これはひどいっすね」

「その、『っす』ってのはやめろ」

源は「すみません」と一つ頭を垂れてみせるが、反省している素ぶりはなかった。それも当たり前で、今目の前にあるこの一つの「遺体」に意識を集中させなければならないからだ。


「それで身元は」

質問に対し一人の警官は語りはじめる。

「遺体の身元は()()()()。これはポケットの中にあった定期券から分かりました。鎌倉第一高校2年。家族、学校に問い合わせたところ、ここ一週間失踪していたようです。第一発見者は犬の散歩をしていた老人ですね。一発でわかりますが、関係者ではなさそうです」


「一週間? 捜索願は」

彼は首を横に振る。


「いえ。鎌倉警察署、この藤沢警察署にも届出はありませんでした」

「理由は」

「どうやら、夜遊びが激しい娘さんだったようです。それこそ数日も帰らぬこともあったようです」

「ふうん」


遺体に近づく。衣服は別段無事であった。強姦の線は自分の中で消した。次に外傷だった。遺体はぶよぶよに膨れているため、細かいことは検死をしてみなければ分からないが目立ったものはない。海に漂流していたためか、細かな傷跡は残っているが、致命傷ともいえるものは見当たらなかった。


「自殺、ですかね」

源は顎を手でさする。

「理由は」

「純也さん、そればっかり。理由は目立った外傷もないこと。それに夜遊びが多かったんでしょう。女子校生が非行に走る。それくらい何かに対して思いつめてたってことも考えられます。だからですよ」


確かに源の言う通り、自殺の線も考えられなくはない。しかし、場所が海であることが気になった。


わざわざ入水(じゅすい)自殺を試みた、とでも言うのか。


「とりあえず、検死に回すしかないな」

「ちょっと待ってください」

気がつくと自分の周りには普段みない顔があった。異国人だろうか。随分と身長が高く、それに顔がとても小さい。その取り巻きに黒いスーツを着た男たちもいる。


「あの、一般人は」

源がその人物を外へ追いやろうとした時、懐から細い手が伸び手帳を見せつけてきた。

「ま、まじかよ」


彼の視線を追う。そこには「CIA 」の文字があったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ