表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

1話

8月27日投稿分と、内容は同じです。

活動報告にも書きましたが、投稿のシステムについてよくわかっていなかったため、再投稿しました。


王宮の奥深く。

 限られた者しか立ち入りを許可されていない部屋がある。

 隠されているも同然のためか、そこへ至るまでの道は細く、暗い。明かりを持たねば一歩も進めぬほど。

 部屋に不用意に入らぬよう、王宮内の臣下は誰ひとり配置していない。

 しかしながら、塵やほこりにまみれていたことは一度もなかった。

 もしも道を清めることができるとしたならば、カレンの知る限りでは一人しかいない。



 ――――ああ、ごめん。彼は、『守人』だ。名前は―――ないんだ。



 不意に、自らの内から聞こえてきた声に、カレンは息を一瞬止めた。

 霧が晴れていくかのごとく、脳裏でその人の姿が鮮やかになる。

 心の奥底の『箱』に閉じこめておいた、彼の姿―――――





 光を浴びれば輝く銀の髪は、上質な糸のように柔らかだった。

 整った顔立ちの中で、最も印象づける一対の宝玉のような深い深い青の瞳。一見、『冷たさ』を思わせるはずのそれに宿っていたのは、温かな感情。

 太陽の下でも、光一筋差しこまぬ森の奥でも、彼の美しさは変わらずにあった。

 綺麗、という言葉と表現は、彼のために神が用意したに違いないと思うほど。


 

 

 





 ――――なぜならね、




 目を細め、どこか遠くを見つめながら、それでも微笑って。

 彼は―――――







 カレンは、眉を寄せると心の奥底にある『箱』を閉じた。

 形ないもののはずなのに、パタリと蓋を閉じる音が聞こえたような気がした。

 彼の姿ごと、声と言葉が遠ざかって消えていく。

 眉にこめた力を緩めて前を見ると、遠くで光が瞬いた。

 行きたくて、行きたくない。矛盾する場所まで近付いていることを知る。

 カレンの夫であり、クラウスの父である彼がいる部屋。

 あの部屋には居場所などないけれど。

 『約束』をしたのだ。

 眠り続ける彼へ、一方的な。

 




「頭を上げなさい」

 頭を深く下げていたローブ姿の男に命じる。男は、音ひとつたてることなく命じられたままに頭を上げた。しかし、顔はフードの奥に隠されたままだ。

「何も変わりはありませんか?」

 立ち入りを許可している者の中には、『守人』と呼ばれるこの男も入っていた。

 様子を聞いたのは、『守人』が王たちの眠りを守る者として存在しているからだ。

 返事はすぐだった。

「いいえ」

 若いのかそれとも老いているのかわからぬ声で返される。

 王の眠る部屋へ続く道を清めることのできる唯一の者は、常に感情というものを見せない。

 扉に目をやれば、命じるよりも先に男が動く。

 扉の開け方は、彼女からすれば奇妙だった。手を押し当てただけで開くのだ。そして、どういう仕掛けになっているのかは知らないが、『守人』だけにしか開けられない。

 隙間から金色の細かな粒が零れ始めると、男に代わって扉に触れた手に力がこもった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポチリと押していただけると嬉しいです。お返事&お礼はブログにて。(サイトのmemo)→
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ