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8:クラス対抗戦 前編

学園での最初の1週間が終わり、週末を挟んで2週目が始まった。


私は、クレアさんと一緒に演習場に向かっている。


「クレアさんは週末は何してたの?」

「私は、魔法について書かれた書物などを読んでました。学園の図書室は休日も使えますし、蔵書も多くてずっといられるんですよ」

「私はまだ行ったことないけど、今度行ってみようかな」


印刷技術が発達してないから、この世界の本って手書きがメインで貴重なのよね。


「ぜひ行ってみてください!セレーネさんの方は週末何してたんですか?」

「文化祭のテーマをどれに投票しようかと迷ったり、冒険者でちょっとお小遣い稼ぎしてたわ。あとは、兄への手紙ね」

「えっ、お兄さん?」

「そうそう、この学園の卒業生で、私の入学試験の手伝いをしてくれたから、まぁ近況報告くらいはしておこうかなぁと」

「えっ、卒業生なんですか!?」

「うん。商人コースを卒業してるわ。男爵家も兄が継ぐでしょうね」

「あっ、その・・・男爵家を継ぐのに第二学園なんですね」

「まぁね。うちは半分はブドウ農家みたいなもんだから。第一学園よりも実利重視で第二学園にきたらしいわ。あとはなんか、農家以外にもやってみたいことがあるとかなんとか、せっかくブドウ育ててるから活かしてみたいとか、言ってたような言ってなかったような・・・?けど、王国内のブドウ酒の生産はトツンカーナ1強だから、うちの地域のブドウで何するんだろう・・・?」


世間話をしつつ、私たちは演習場についた。

今日はクラス対抗戦がある。


演習場には、武術のベンジャミン先生、魔法のルーシー先生、我らが担任トーマス先生、たぶんⅡ組の先生と、治癒魔法のマリエッタ先生がいる。


武術のベンジャミン先生が進行を始めた。


「第二学園では、1年生の後半からコースに分かれ、2年生からは実際の社会活動に即した実習がある。1年生の入学直後にはなるが、自分の希望コースの検討材料にするために、2年生の実習を簡易化した模擬戦を行う。Ⅰ組対Ⅱ組だ。午前中が作戦立てと準備、午後が実戦だ。相手の本陣に設置された旗を先に取った方が価値とする。Ⅰ組の本陣には白い旗、Ⅱ組の本陣には黒い旗を設置する。旗を折るとそれぞれ、白い閃光弾、黒い閃光弾を打ち出すから、それを試合終了の合図とする。その他の詳細は先週末に説明した通りだが、何か質問はあるか?」


私は第二学園のシステムを思い出した。


1年生の後半から、戦闘系、文官系、商人系、生産系のコースに分かれる。

2年生からはさらに専門的なコース、騎士系、魔法師系、指揮官系、文官系国家、文官系領地、商人系、生産系魔道具、生産系武具に分かれる。


さっき武術の先生がいった2年生の実習は10年前から始まり、第二学園の実践重視の方針を象徴している。


各コースの生徒を均等に分けたグループを作り、それを1つの領地とみなし、領地の資産を増やすことを目的とする。

通常授業とは別に、2年生の前半の秋学期と後半の春学期を通してそれぞれ1回行われるけど、生産系が武器や魔道具をつくったり、商人系がその資材や資金を集めたり、指揮官が模擬戦の指示したり、騎士と魔法師が戦ったり、文官系が他グループとの交渉や同盟(同盟内容は公表するか密約にするか選べる)や各専門職の橋渡しをしたり(学園から資金調達もできる)する、といった演習だったと思う。

実際の戦争みたいに宣戦布告を行い模擬戦の申し込みができるので、戦闘で他クラスを征服する方針をとるもよし、戦闘はせずに内部生産に特化するもよし、と色々な手段がとれる。

ただし、学生本人の能力だけで対応しなければならず、たとえば模擬戦の際に使用できる武器や魔道具は、生産系の生徒がこの実習専用の授業枠で作ったものに限るなどの制限がある。そのため、学園の設備や生徒のどのリソースをどうやって使うかの配分も考えなければならない。最終的な評価は、模擬戦の勝敗や生産品の量や質など総合的に判断される、だったと思う。


正直、国家や領地運営のシュミレーションみたいなものだから、学生にやれせるレベルじゃない気もするけれど、実社会に似てるからその分実践力が身に付くだろう、という脳筋スタイルだった。

それと、おそらくだけど、ビネンツェ王国の北東部で国境を接しているインネルト帝国とのこともあると思う。10年前に停戦協定を結んだとはいえ、いつまた戦争になるかわからない。

戦争はどの職業になっても影響があるから、こうして、学生のうちにそれっぽい経験を積ませたいんじゃないかなーって勝手に思ってる。


ついでに、今日のクラス対抗戦は、将来を見据えて自分の希望するコースの体験みたいな側面がある。体験が目的なので、この対抗戦は成績に影響しないことになっている。習うより慣れよ、っぽいけど、入学2週目でやるのはさすがに脳筋スタイルだとは思う。


「以上で質問は終わりか?擬似通貨とそれぞれの武器や道具の金額を記載した紙をそれぞれのクラス委員に渡す。武器と魔道具に関しては1から作ると時間が足りないから、組み立て式とする。教師を傭兵として雇ってもいいが、直接戦闘には参加せずに特定の状況で特定の役割を果たすだけだ。雇う場合は、その契約書と契約金も準備してくれ。今回の対抗戦では実戦はクラス全員が参加することとする。では、早速クラスに分かれて作戦を立てるように」


おっといけない、先生の説明と質問タイムが終わった。現実に戻らないと。


そして、我がⅠ組はというとクラス委員のレイ様とグレイスが仕切ることになった。


「まずは個人の役割と簡単な方針を決めよう。その後の詳細な作戦は、僕が主に事務系を見て、戦闘系はグレイスに任せたいがいいか?」

「ああ、かまわない」


グレイスがレイ様に返事し、他の学生もうなづいていた。


まずは、戦闘系はグレイスさんのもとに集まり戦闘スタイルの共有と必要な武器の確認、商人系は武器や道具の値段の確認、生産系は性能と組み立て手順の確認、文官系は先生を傭兵として雇う場合の内容と金額の目安表の確認をして契約書の下書きの準備をすることになった。


私は文官系に割り振られた場所に行こうとしたところで、レイ様に呼び止められた。


「あっセレーネ」

「レイ様、何?」

「魔法師として戦闘系に加わってくれないか?」


近くの生徒を見ると、なぜかキラキラした目で、うんうん、とうなづいていた。


「私は文官志望よ?それに今回は全員実戦に参加するんでしょう?」

「それはわかってる。わかってるけど、この前のグレイスとの模擬戦を見るに、おそらくこのクラスで2番目に強い。せっかくの戦力を有効活用したいから主力になってくれないか」

「えーでも」

「そこをなんとか・・・!」

「・・・プリンが食べたい」

「えっ?」

「私はプリンが食べたいわ」

「・・・わかった。この授業が終わったら買ってこよう」

「いいの?ありがとう!」


笑顔の私とは対照的に、レイ様は苦笑いしていた。


その後、各担当が話し合った内容をもちよって、全体の作戦を詰めていった。

帝国の名前変更しました。話の中身に影響はありません。

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