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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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74:夏休みの前

6月17日に起こった税金泥棒断罪記念日は過ぎ、夏休み直前の6月末になった。

第二学園の3年生の卒業の時期であり、卒業を控えた王女様に私は呼び出された。


第二学園にある、いつもの目立たなそうな部屋に着くと、アナスタシア様とユリアさんがいた。

優雅に紅茶を飲んでいる。


「アナスタシア様、ユリアさん。お待たせしてしまいすいません」

「たいして待っておりませんので、気にしないでください」

「我が主がこうおっしゃっているので問題ありません」

「それならよかったです・・・」


促されるままに席に座るとユリアさんが紅茶とお菓子を用意してくれた。


「セレーネさん、本日は2つほど用事がありますわ。1つ目は、この前の税金泥棒断罪イベントの件です」

「はい、なんでしょう?」

「事前にお伝えしていなかったのでセレーネさんからしたら、なんのこっちゃ!だったと思います」


なんのこっちゃ!?確かにそうだけど、王女様の口からそのような言葉がでるなんて!ユリアさんもジト目をしている。


「あら?言葉の使い方が間違っていたかしら?なんのこっちゃ!」

「いえ・・・、あってはいます」

「でしたらよかったです。さて、セレーネさんのおかげでサック・ラダモンの所業を白日の元にできましたわ。改めてありがとうございます」

「いえいえ。私、スパイとしてほとんど何もできてなかったと思いますけど・・・。あの、どうしてマーサ様が持っていた紙束はあれほど分厚かったのですか?」

「それですが、その・・・セレーネさんに本当にスパイそのものを期待したわけではなかったのです」

「・・・えっ?」

「怒らないでくださいませ」

「お、怒ってはいません!ちょっとびっくりしただけです!」


そう、本当に怒ってはいない。だって自分がスパイの真似事をする能力がないのはわかりきっていたし!むしろ、不適材不適所で大丈夫?だと思ってたくらいだし!


「セレーネさんはわりと表情がわかりやすいですよね」


前も言われた気がする。この部屋でだっけ?


「はい・・・」

「ですので、『王女の頼みがあって何か探っている』というのが、わりとわかりやすいのです」

「はい・・・すいません」

「どうしたのですか?」

「いえ、その、落ち込んでいます。今まで学園とかでも愛想笑いしたりしましたが、『うわこいつ愛想笑いしてる』とか思われてたのかなと思いまして・・・」

「誤解を与えてしまったようで申し訳ありません。普段は普通ですよ。今みたいに明らかに誰でも反応しそうなこととかですね。それと今回に限ってはあえてですわね。サック・ラダモンは格上には近づかないので、ミラがおじさんキラーと言ったやり方も、あからさま方向で教えるようにお願いしておりましたの。それに、わたくしは王族、マーサさんは監査、ミラも文官の重鎮の娘、狐やたぬきを見抜くのになれているから、セレーネさんの表情もわかりました。普通の相手ならセレーネさんも普通ですよ。なので!学園をはじめ普段は問題ないと思います」


「・・・そうでしたか!」


情報量がおおい!


「誤解なさらないでください。ほぼ証拠が揃っていたラソツ侯爵はともかく、相手は実務能力は微妙でも今まで王宮内で上部だけで取り繕ってきたサック・ラダモンです。いくら新しい概念を提唱したり、魔法戦闘能力が高くても、化かしあいで学生が勝てるとは思っておりませんでした。そのため、誘導することにしたのです」

「誘導、ですか?」

「はい。実はセレーネさんに特別任務をお願いしたあたりから、王宮に噂を流していたのですよ。『王子と王女が将来の右腕と左腕を探している。派閥の影響を受けない上に、固定観念のない学生に、候補者の実績を客観的にまとめてもらうよう頼んだ』と」

「なるほど・・・?」

「そこにセレーネさんが、過去の実績などを聞いたでしょう?それを彼は自分を売り込む好機だと捉えたようですね。セレーネさんが文官補佐だったから、上辺だけで事実と異なることを言っても王宮の文官経由で事実を知ってしまう。けれど、過去に行った業務を全部覚えているわけではない。そうするとどうなるか?彼らが密かに隠していた書類を確認すると思ったのです」

「なるほど・・・?」


サック・ラダモンが隠していた書類を確認しても、それをどうやってアナスタシア様が知るんだろう・・・?


「ふふふ。王族の手札には、気付かれずに忍び込んだりできる人材がいるのですよ。まさかここまでマーサさんが立てた計画がうまくいくとは思いませんでしたけれど」


うわ!私これ聞きたくない!忍び込んだりする人材って!

アナスタシア様も笑顔が黒い!


「えっと!まとめると!サック・ラダモンはマーサ様にものの見事に誘導されたってことですね!」

「そうですね。いつからだと思いますか?」

「それは・・・」

「秘密です」


アナスタシア様が人差し指を唇に当てながらウィンクしてる。

イタズラが成功した子供みたいな顔してる!王族怖い!


「いずれにせよ、無駄遣いをさせられたのはもちろん、本来の目的も果たせない本物の無能として組織内の記録に残りますね。あの場にはたくさんの聴衆もいたのですから」


うん?あれ?


「あの、もしかして、サック・ラダモンの所業を広く知らしめるつもりでした?」

「ええ、そうですね。ごまかしが効かないように」

「・・・もしかして、マーサ様たちが会話というよりも、セリフを言っている感じがしたのは、そういう言葉を使ってそういう印象を持たせるためだったんですか?」

「正解です!文官としての王宮のゴタゴタにも入れそうですね。セレーネさんの将来が楽しみです」


ニコッと笑われたけど、こういう感じの文官は色々と大変そうだから、できれば避けたい!そもそも私にスパイっぽい能力はない!


「えっと!つまり!サック・ラダモンがこちらの目的を履き違えたのが無能が露呈した敗因ということですね!さすがマーサ様!!!」

「そうですわね」


アナスタシア様、にっこり微笑んだままだ!私は普通の文官になりたい!


「マーサ様の!策略で!サック・ラダモンは目的を履き違えたまま!見当違いの方向に時間と労力を割いた、ということですね!さすがマーサ様!」

「そうですわね」


アナスタシア様、にっこり微笑んだままだ!私は普通の文官になりたい!

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