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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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72:国の癌(前編)

王宮に来て欲しいとマーサ・テミス女公爵から手紙が来ていたので、私は王宮に向かった。


今日は6月17日。「文官補佐の業務がないのに呼び出しなんて珍しいな〜」と軽い気持ちでいた私は、のちに税金泥棒断罪記念日と呼ばれることになる出来事が起こるなど思いもしなかった。



王宮に着き門番に挨拶すると、少し広めのホールに案内された。すでにマーサ様がいたので、挨拶をするために近寄った。


「マーサ様こんにちは。セレーネです」

「あら、セレーネちゃん。特等席を用意しておいたわ」

「特等席ですか?」


マーサ様が「ええそうよ。うふふ」と言いながら指差した先には、アナスタシア様がいた。私とマーサ様の視線に気付いたのか小さく手を振ってくれている。


「王女様のところに行ってちょうだいね」

「あっはい」


状況がよくわかないけど、とりあえず向かった。


「待っていましたわ、セレーネさん」

「アナスタシア様、こんにちは。ユリアさんは今日はいないんですね」

「ユリアがいると、わたくしもこの場にいると警戒されてしまう可能性が高まりますから」

「えっ?そんな中で、私はなんで今日呼ばれたんでしょうか・・・」

「もう少ししたらわかりますわ。やっとこの日が来ましたわね・・・。セレーネさん、少々お着替えをしましょう」


心なしか嬉しそうなアナスタシア様と一緒に、2人揃って王宮の使用人の服に着替えた。


ーーーーーーーーーー


着替えを済ませてホールに戻ると、結構な人数が集まっていた。

サック・ラダモン侯爵もいる。初対面以降何回かちょっかいを出されたのよね・・・その割には、私のスパイの真似事も大した成果がなかった。全然書類くれないんだもん。

私、スパイ、向いてない。


「向こうにいるのが、ラソツ侯爵ですわね」


使用人服を着たアナスタシア王女の目線の先に騎士っぽい格好をした人がいる。

部下には会ったことはあるけど、あの人がご本人なんだ。


「わたくしたちは端によりましょう」

「あっはい」


アナスタシア様に促されるままに移動すると、マーサ様がホールの壇上にあがった。


「今から名前を呼ぶ方は、壇上にお越しください。ラダモン侯爵、ラソツ侯爵」


マーサ様の呼びかけに答えて、2人が壇上にあがった。すごい偉そうにしてるというか、自慢げな雰囲気を出している?この2人って、裸の王様の2大巨頭だよね。


「先にラダモン侯爵」

「はっ!なんでしょうか、テミス女公爵」


ラダモン侯爵から笑みが溢れている?これから良いことでも起こるのかな?


「貴方の仕事ぶりを調べました。本日はそれに報いたいと思います」

「ははっ!監査であるテミス公爵に評価いただけるとはありがたき幸せ!しかし、吾輩は国に仕える身であり、国家のために利益を出すことは当たり前です。報奨金はいりません。その代わりと言ってはなんですけど、王太子と王女様の教育係になりたく存じます」

「確かに教育係にふさわしいですね」

「そうでしょうとも!早速今日からでも」

「教育係にはふさわしいですけれど、それは反面教師としてですね」

「はっ?」

「サック・ラダモン侯爵、いえ、税金泥棒さん。権力と税金を使うにふさわしくない人材は他にいません。まさに反面教師にはぴったりでしょうね」


にっこりと微笑むマーサ様と対照的に、ラダモン侯爵はポカンとして固まっている。


「ご本人的には、税金の無駄遣いを巧妙に隠していたつもりなのでしょうが、上部だけすぎてバレバレですね」

「は?」

「私はテミス家の当主であり、国の監査を担ってます。どんなに小さな悪事も見逃さない。税金泥棒は国民を裏切る行為です。無能な公務員の評価をしっかりと確定させて、組織内で周知しようかと思いました」

「な、なに?」

「貴族は国政を担う柱です。貴族だと特別感が出てしまうので、今回は公務員と呼びますね」


呆然とするラダモン侯爵の横で、ラソツ侯爵はその場から離れようとした。

けれど、警備兵らしき人物に捕まえられた。


「ラソツ侯爵。あなたはそこでお待ちください。それでは、ラダモン侯爵」

「な、なんだ?」

「これが何かわかりますか?」


マーサ様は優雅に紙束をパラパラしている。


「し、知らない!」

「そうですか。あなたの仕事ぶりをまとめたものです。本当に、税金を無駄遣いさせたら右に出る物はいませんね」


あれ?私、スパイ、できなった、よね・・・?


「なんだとっ!」

「実力がないから権力を使うしかない。能力がないから税金を注ぎ込んでリソースで誤魔化すしかない。けれど、権力を使えば使うほど、税金を使えば使うほど、その2つを扱う能力がないことが露呈する。そうやって、公務員としては致命的な無能なレッテルを貼れるのですよ?」

「な、なんのことだ!」

「ここ最近あなたに振った仕事のことですよ」

「侯爵家の名の下でしっかりと行ったぞ!」

「権力を使うも損害を出すだけ、税金を使い込むも損害を出すだけ。社会に損害を出す、癌ですね。上部だけで誤魔化そうとしたのが、あなたの失敗です。今後、あなたには権力と税金を使うに相応しい能力を持ち合わせていない、という評価がずっとつきます。あなたの公務員人生で一番の失敗ですね」

「権力と税金を使って何が悪い!」

「権力と税金を使い込ませる方に誘導したに決まっているじゃないですか。その方が、公務員として不適切だと証明できますもの。半年くらいかけて優位だと思わせたかいがありましたね、あなたたちは無能の烙印がおされてしまいました。公務員人生で一番の失敗ですね」

「出鱈目だ!お前がでっちあげたんだろう!」


マーサ様は頬に手を当てて困ったような顔をした。


「ほら!言い返せなんだろう!」

「・・・私から言っても信ぴょう性に欠けますね。それでは、実際にラダモン侯爵が指揮をした現場の皆様に出てきてもらいましょう。ちなみに、顔は隠して、声は変声の魔道具をつけてますが、王宮の文官が身元は確認しております。それではみなさん、おいでくださいませ」


呼び声に答え、舞台横の通路から数人の人たちが出てきた。

全員目出し帽してる。すごい、というか、かなり衝撃的な光景だった。


「それでは、皆様に質問です。ラダモン侯爵の指揮下にいたかと思いますが、彼はいかがでしたか?」


マーサ様の問いに、目出し帽が思い思いに話し始めた。


「能力がないくせに、いや、能力がないからこそ、口先だけでいばっていました。彼が公務から外れた方が、国のためになる。それが、私たちの嘘偽りない本心からの見解です」

「シンプルに頭大丈夫?バカすぎない?それが嘘偽りない本心からの感想」


「なんだと!お前ら!吾輩になんてくちを聞くんだ!お前らの家を没落してやる!どんな犯罪がいいか!それが嫌なら今度こそ本心を言ってみろ!」


ラダモン侯爵!すごい怒ってらっしゃる!


「仕立て上げるぞ?でっちあげるぞ、ってことですよね?本心?無能な上司だったあなたを庇うわけないでしょう。それと、あなたが報復できないようにするための、この措置です」


目出し帽と変声の魔道具を触ってすごい煽ってらっしゃる・・・。


「なんだと!お前ら!税金泥棒になりたくなければ真実を話せ!吾輩ではなくて、実際に業務を行ったお前らが税金泥棒だろう!」


このラダモン侯爵の発言は、火に油を注いだようだ。


「お前つけあがってるんじゃないぞ!立場が作戦立案者だからいうこと聞いただけだ!じゃなきゃお前みたいな近年稀にみる口先だけの無能にしたがうわけないだろう!それが俺たち、昔からこの国に仕える現場の嘘偽りない本心だ!」

「真実を話しているでしょう・・・税金泥棒はあなたです」

「そんなに無能で、ほんとに恥ずかしくないの?あなたの実力不足だよ、これだけ無駄にしてるの。理解してる?馬鹿だからそれすら理解できない?さすが、本物の金食い虫のコストセンターだね」

「こいつアホか?」

「事実を指摘してはいけません。かわいそうでしょう?」

「豚に真珠、馬の耳に念仏、無能に権力、口先だけに税金」

「あー楽しい!上部だけの言葉遊びしかできないくせに威張り散らしているあの姿!笑ってしまいそうになるわね」


目出し帽が、代わる代わる話す様はシュールだった。

夢に出そう。

というか1人愉悦主義者っぽい人いない?大丈夫?


ラダモン侯爵が何か言い返す前に、マーサ様のそばにいた人が。


「私は監査ですが、報告書を読んで、こんな無能がいていいんですか?と思いました。成長もしない、上部だけのお遊びしかできない。税金をどれほど無駄にしたか理解していますか?あなたの能力がないのを理解していますか?あなたみたいな人たちは国庫を食い潰す金食い虫のコストセンターです。早急に公務をクビにされることに賛成です。それが、監査としての嘘偽りない本心です」


「なんだと!この無礼ものが!お前の顔は覚えたぞ!」

「私の部下に何かしようなら、テミス公爵家が相手をします。それを理解していますか?」

「な!」


ラダモン侯爵、テミス公爵であるマーサ様が間に入ったことで明らかに狼狽えている。

というか、全体的にマーサ様側の人たちの言っていることが、セリフありきで微妙に会話が噛み合ってない気がする?


「いくら権力にあぐらにかいて成長しない無能だとしても、権力にすがるだけで能力がないリアル金食い虫のリアルコストセンターだとしても、規律的に貴族を解任することができませんでした。ただ、国や社会に損害に与える公害なので、そのレッテルをはらせていただきます。無能の烙印を押す、ある意味私刑ですね。あなたが無能なくせにつけ上がったのが悪いんですよ」

「吾輩が無能だと!?」

「ええ。これだけ権力を私物化して、これだけ税金やリソースを使い込んで、無い成果って、あなたが本当に無能だから以外に理由がありますか?それと、この数字に見覚えはありますか?」

「なんだその紙は?その数字も知らん!」

「そうですか。あなたが今まで無駄遣いした額と出した損害の額を足したものです。つまり、あなたの無能度合いを数値化したものです。過去最低レベルの無能ですね?」

「なんだと!」

「成果=権力×税金×リソース×使い手の能力、です。権力も税金も人員をはじめとしたリソースも所詮道具なので、使い手の能力次第です。ラダモン侯爵、あなたは本当に無能ですね。もう一度この報告書を見てください。1年間に税金を5億テチスも使い込んでいるようですけど、何に使ったのですか?」


私がちょっと違和感を覚えている間に、報告書を見直したラダモン侯爵は、「吾輩は、吾輩は・・・!」と言いながら崩れ落ちていた。

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