番外編③:小さなクレアの大きな森探索
1年生の夏休み、2年生になる前にクレアやグレイスがセレーネの実家のケニルワース領に遊びに行っていた時の出来事である。
クレアは、ケニルワース領にある自然豊かな森を散策していた。護衛としてグレイスもついてきている。
「あっ!グレイスさん!見てください!向こうに上部ダケがあります!」
「美味しいのか?」
「見た目はちょっと、というかかなり毒々しいですが、中身は美味しいです!ぱっと見だと毒キノコっぽくて害があるように見えるので、上部ダケと呼ばれるようになったと思います」
「なるほど。では採って帰ろう」
「はい!」
その後もクレアは黙々と探索を続けた。
「向こうにあるのは、吠えるダケでしょうか・・・?」
「美味しいのか?」
「いえ、残念ながら。味も微妙な上に、食べると遠吠えが止まらなくなります」
「笑いダケみたいなものか・・・採るのはやめておこう」
「それが賢明ですね」
さらにクレアは黙々と探索を続けた。
「あっ!今度は威張るダケ!」
「美味しいのか?」
「おいしくないです。そのうえ、食べると威張りだします」
「ふむ。採るのはやめておこう」
「はい」
歩くこと数分、
「あれは!口先ダケ!」
「美味しいのか?」
「人間の唇みたいな見た目なので、想像しにくいですけど、しっかりと中身まで火を通して調理すれば美味しいです!」
「なるほど。じゃ採っておこう。帰ったらミラに調理をお願いする」
「それがいいですね!それにしてもここはキノコ天国ですね!自然豊かな地方だからでしょうか。キノコに限らず、王都だと入手困難なハーブも自生していますし、きてよかったです!」
「それはよかった。私も色々な食材に出会えてきてよかった」
2人がしばらく散策を続けていると、日が暮れ始めた。
「クレア、そろそろ戻ろう」
「あっ!はい!」
ケニルワース家への道中、大きな口をした犬に遭遇し、
「クレア少し下がってててくれ。大口ドックがいる」
「大口ドックですか?」
「ああ。その大口を叩いて衝撃波をだしたりするが、弱い。大口を叩くだけたたいて弱いから大口ドックと呼ばれてる」
「そうなんですね・・・?」
「すぐ終わらせる」
グレイスの宣言通り、大口を叩くだけの弱弱な犬達をすぐに退治し、2人はケニルワース家に到着した。
「ミラ、キノコをとってきたから調理してほしい」
「わかったわ!グレイスの要望に応えるわね!」
「頼む」
「いいのいいの!」
ミラはキノコを受け取ると、ケニルワース家の厨房に向かった。そこにはセレーネが先にいた。
「セレーネ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたの?」
「このキノコ達って毒はない?」
「うーん・・・どれも毒がない種類ね」
「それはよかったわ!ちなみにこれはなんていう名前?」
「口先ダケ。人間の唇みたいけど、火を通せば美味しいわ」
「そうなんだ!じゃ、はいキッス!!」
ミラは、口先ダケをセレーネの唇にくっつけた。
「えっ、ミラ急にどうしたの?」
「少しも照れないのね・・・」
「だってキノコを使った”フリ”だもん・・・。本物のキスじゃないし・・・」
「それもそっか。いたずらが不発に終わった私はおとなしく料理に移るわ」
「うん。台所は好きに使ってね」
ミラは初見のキノコでもなんなく調理し、グレイスは嬉しそうに料理を食べたのであった。




