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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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68:無能、海外デビュー!!

秋学期も終わりに差し掛かった1月28日、私は、ミラとロゼさんと一緒に王都内のとある場所に転移ゲートの設備に向かっていた。

2月4にかけて実施されるアナスタシア様の海外視察に、これから同行することになっている。


行き先は、アムダムから少し西にいったところにあるアルロナ共和国とその周辺国だ。

一旦アムダムに転移してからアルロナ共和国に向かい、そのまま他の周辺国の視察も行う。


転移ゲートのそばで待っているとアナスタシア様がこちらに向かって歩いてきた。少し機嫌が悪そう?かなと思ったけど、その原因だろう人物が目に入った。


ミラも視認したようで、

「セレーネ、騎士の中に混ざっているあれはかまってちゃんイオーゴ様じゃない?」

「・・・ミラの言う通りあれはかまってちゃんね」

「そうよね。この前のアムダムで無能全国デビューしたんじゃないの?なんでいるのかしら」

「さぁ・・・」


ミラと私のこの疑問はすぐに解消された。


「セレーネ嬢!また会えてるとはやはり運命!『前回はたまたま運が悪かっただけよ』と第二王妃様がおしゃってくれてまたあなたに同行することになった!」

「そうですか・・・」

「何も心配することはない!大丈夫!セレーネ嬢だけではなく、姫様もちゃんと守る!」


また王族がおまけみたいに・・・。全然成長してないじゃない・・・。


「はぁ、そうですか。とりあえず、今回”は”ちゃんとしてください・・・」

「今回”も”ちゃんと守るから安心してくれ!じゃ俺は荷物を確認してくる!」


そう言って、かまってちゃんが荷物の確認をするために移動すると、今度は別の騎士が近づいてきた。


「セレーネ嬢ですかな?」

「あっはい」

「海外は初めてですか?」

「そうですね」

「慣れない視察で大変でしょう。こちらに旅の心得をご用意したので、差し上げます」

「いいんですか?ありがとうございます!」

「いえいえ、ともに王国に仕える身。助け合いは当然です!ところで、」

「はい?」

「あのレスター家の次男坊のせいで前回危ない目にあったとか・・・」


うん、確かにその通りなんだけど、相手の目的がわからない以上安易に同意しない方がよさそう。


「運が悪かっただけです・・・」

「大丈夫です!我々はたとえ運を敵に回してもあなたをお守りします!」

「・・・お願いします」

「もちろん!我らラソツ侯爵様に仕える騎士が責任をもって旅の安全をお約束しましょう!」


・・・ラソツ伯爵って、あれじゃない。裸の王様の昔からの取り巻きじゃない。

マーサ様に聞いておいてよかった!


「まぁ!それは頼りにしてますね!皆様がいれば私も安全に王女様の話し相手になれます!イオーゴ様だけですと心配だったので、皆様がいらしゃってよかったです!」

「セレーネ嬢は見る目がありますね!それでは、あの小僧だけでは心許ないので、我々も準備にとりこみます」


それにしても、アナスタシア様の機嫌が悪かった理由がちゃんとわかった。第二王妃に取り込まれつつあるかまってちゃんと、国王の取り巻きの両方が揃ったのね・・・。


ーーーーーーーーーーー


アムダム経由でアルロナ共和国に到着し、移動しつつ視察をしている。

移動は馬車を利用していて、今も乗っている。しかし、非常に居心地が悪い。

馬車の操縦が下手だとか、道が整備されてないとかではなくて、私とロゼさんの馬車に、なぜか、かまってちゃんイオーゴが乗ってきていた。


「セレーネ嬢!さっきの休憩中に買ってきたんだ!アルロナ風オムレツとパエリアだ!一緒に食べよう!」

「・・・さきほどの休憩中に食事は摂ったので結構です」

「小食なところもかわいいな!それじゃ、これはどうだ!雄鶏の置物!幸運のシンボル!」

「・・・結構です」


しかもそれ視察の経費から買ってるよね?税金の無駄遣い?


「なぜだ!」

「その・・・馬車酔いしたので、少し横になります」

「なるほど!介抱してあげよう!」

「結構です」


私は速攻で隣に座っているロゼさんの膝の上に頭をのせた。

ロゼさんごめん!


ロゼさんは一瞬驚いた顔をするも、すぐに察して布を私の顔にかけてくれた。


「日が出てるので、これで寝やすくなると思います。それと、イオーゴ様」

「使用人風情がなんだ?」

「淑女が寝ておられるのです。同乗するのは紳士的ではないと思いませんか?」

「・・・それもそうだな!俺はかっこいい紳士だから!馬車から降りよう!」


そういって、かまってちゃんが馬車から降りた気配を感じた。走ってる馬車から飛び出したけど、大丈夫なのかな?まぁいっか。


ーーーーーーーーーー


海外視察の2日目。私はミラと同じ馬車に乗った。


「無能、海外デビュー!!!」

「急にどうしたのミラ?」

「ほら、昨日のセレーネの護衛はあのかまってちゃんが作成した、かまってちゃんのかまってちゃんによるかまってちゃんのための護衛計画をもとに行われたじゃない?」

「うん」

「それがあまりにも見当違いすぎて、アルロナ共和国の騎士が『ビネンツェ王国の騎士はこんなお遊びみたいな計画を立てるのか?なんでこんな子供のお遊びみたいなものに俺ら他国の騎士が付き合わないといけないんだ?』と言ってたの。だから”無能、全国デビュー”に続いて、”無能、海外デビュー”ね!」

「言ってることはほんとにその通りだと思うんだけど、ビネンツェ王国の評判下がってない?大丈夫?」

「そこは、ラソツ侯爵家の騎士様に頑張ってもらいましょう」

「・・・大丈夫なの?」

「さぁ?」

「・・・さぁ?って・・・」

「いざとなればセレーネとユリアさんが守ってくれるでしょ?」

「賊と魔物からわね。けど、騎士っぽさのある警護はできないわよ。こういう視察って、権威を示すとかも必要なんでしょう?」

「そのあたりは昔ながらの忠臣の方が対応してくれると思うわ。そういう見栄えとかは得意分野でしょうし、本物の戦闘が起きなければ大丈夫!」

「なるほど・・・それなら大丈夫かな・・・?」

「そうそう!見栄えは任せて、本物の緊急時にはセレーネに助けてもらいたいわ!」

「わかったわ。頑張る」

「頑張る機会が来ないのが一番だけどね!」


ミラのこの発言はフラグにならずに、1月28日から2月4日にかけての海外視察の全工程は無事に終わった。

アナスタシア様もアルロナ共和国側との当初の目的を果たしていた。良かった。良かった。


ラソツ侯爵家の騎士の皆さんも見栄えは得意領域だったようで、かまってちゃんのせいで落ちたビネンツェ王国の騎士への評判は回復した。

一方、かまってちゃんはというと、かまってちゃん個人の能力があれだったんだなとアルロナ共和国側にバレて、ミラの言葉を借りるわけじゃないけど、見事に”無能、海外デビュー”を果たしていた。アルロナ共和国の後に立ち寄った周辺国でも同様の評価が下ったようだった。

さらに、「我が国と貴国は確かに警備上の協定を結んではいるが、お互いに一定の能力があることを念頭に置いた対等な関係のはずだ。低レベルな警備ごっこのお遊びの尻拭いをさせないでいただきたい」と苦情がきたとかなんとか。


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