63:2年目の文化祭
セレーネが第一王女のアナスタシア視察の手伝いをに勤しんでいるうちに、第二学園の文化祭当日になった。
しかし、なにやらセレーネの所属する文官のクラスではかなりの混乱が起こっているようだった。ちなみに、セレーネ、ミラ、レイモンドは、荷物の搬送を任命されており、今はこの場にいない。
「なんでなの!?」
金切り声を上げるのは、クラス委員でもあり文化祭実行委員でもあったマリーである。
「なんで、準備ができていないのよっ!」
マリーは教室全体に聞こえるようにさらに声を張り上げた。
「あなたたち!何か言ったらどうなの!」
周りのクラスメイトは、感情的にわめている彼女のことを訝しげにみたり、中には蔑んだ視線を向ける者をもいる。
「聞こえてるの!?あなたちに言っているのよ!なんで、準備ができていないのよっ!」
マリーがさらに喚きだし、仕方ないといった様子で1人の女子生徒が話しかけた。
「マリーさん、準備期間にもお伝えしたとおり、元からあなたが立案した内容は無理があったからではなくて?」
「なんですって!?あたしがしっかりと計画をたてたじゃない!それを実行できなかったあなたたちに非があるんでしょう!!!」
「・・・実際にことにあたってた現場からの意見を聞いていなかったんですか?」
「聞いたわよ!理解した上で、指示を出したじゃない!あたしは全体を見た上で立案もしたし、具体的な作業も決めたわ!それができなかったのはあなたちでしょう!」
「・・・ですから、元から無理があったんですよ。風呂敷を広げすぎて、結局何もできなかったじゃないですか。あれもやるこれもやる、さもなんでもできるかのように振る舞っていましたけど、実際はできないことばかりじゃないですか?」
「なんですって!?責任転嫁してるんじゃないわよ!」
「・・・はぁ。本当に理解してないんですか、責任者はマリーさん、あなたですよ?確かに、大まかな方針はクラス全体で決めましたけど、具体的にいつなにをやるのかを勝手に決めたのはマリーさんあなたですよね?」
「やっぱり責任転嫁してるじゃない!あたしの指示に納得して動いていたでしょ!できなかったのはあなたちよ!」
「違いますよ。マリーさんが、クラス委員と文化祭実行委員の立場を強調していたから仕方なく従っただけです。マリーさんに従ったのではなくて、立場に従ってただけです。そうじゃなければ、低レベルの計画に従うわけないじゃないですか」
マリーは、ぷるぷると震えながら「なんですって!?」と女子生徒を睨み出した。
そこに、セレーネ、ミラ、レイモンドが頼まれていた荷物をもって教室に戻ってきた。
「みんな〜戻ってきたわよ!・・・?」
いつものノリで教室に入ったミラは、すぐに異様な雰囲気を察した。
「どこにおけばいい?・・・?」
ミラに続いて教室に入ったレイモンドもすぐに異様な雰囲気を察した。
「収納魔法を使わせてもらえないなんて、ちょっと大変ね・・・」
魔法で運べずに素手で荷物を運んでいたセレーネが教室につくなり、
「あの女が去年できたんだからあたしにもできたはずよ!クリティカルパスとガントチャートを使って、あたしはしっかりとやったわ!」
いきなりマリーに指さされながら叫ばれたセレーネはきょとんとしたあとに、状況を把握しようとした。
「えーと・・・?」
「何よ!」
「すいません、どういう状況ですか・・・?」
「あなたには関係ないわ!そこで見てなさい!」
「あっはい」
マリーの勢いに押されて、思わずセレーネが返事をしていると、先ほどマリーに話しかけた女子生徒が改めて、マリーに話しかけた。
「マリーさん。もうあなたにはついていけないわ。自己満足のごっこ遊びなら勝手にやってちょうだい。私たちは在学中にできる限り実績を作りたかったけれど、あなたが指揮する限り無理そうね」
この発言をきに、堰を切ったように周りのクラスメイトも口を開いた。
「そうだそうだ!」
「口先だけでいばるだけじゃないか!」
「クリティカルパスとガントチャートを使ったというけど、上部だけで使ってるだけで中身が伴ってない!自分を過信しすぎだろう!」
「あなたの指示で実際に作業をさせられたこっちの身にもなってよ!上に立つに相応しくないわ!」
思い思いに本心を告げたクラスメイトたちは教室からゾロゾロと出ていく。
セレーネ、ミラ、レイモンドが「どうする?」とアイコンタクトをしていると、このクラスの担当の先生であるイザベラがやってきた。
イザベラは、セレーネ、ミラ、レイモンドの3人にここから離れるように伝え、教室の真ん中で1人、放心状態でぽつんとしていたマリーに近づいた。
「マリーさん」
「・・・・」
マリーは俯いたまま返事すらできないようだった。
「マリーさん、あなたの意欲は確かにありました。けれど、この状況になってしまいました。ここまではいいですね?」
「はい・・・」
「近頃王宮でも実用段階にはいったクリティカルパスやガントチャートを活用する点は評価します。ですが、あれらはあくまでツールです。そう、ツールなのです」
マリーはこの言葉を理解できないようで、イザベラを見つめたままだ。
「少々酷なことを言うかもしれませんが、ツールは使い方が重要です。ツールが効果を発揮するには、使い手の能力が重要です。また、所詮はツールなので、本人の能力以上のことはできません」
言い返そうとするも、マリーはぐっと堪えた。今の状況が紛れなくそのことを証明しているからだ。
「深くは聞きませんが、あなたにも事情があったのでしょう。しかし、今回はあくまで学生の文化祭でしたが、もしも卒業後に文官として同じことをしたらどうなりますか?」
「・・・学園の心得にもあるように税金泥棒になります。国にも損害を出します」
「そうです。それが理解できているなら、わたくしからの小言はこれくらいにします。マリーさん、これを糧に、しっかり成長してくださいね」
「はい・・・」
「よろしい。わたくしは他の生徒と話してきますので、その間、何が悪かったのが内省してみてください」
「はい・・・」
「マリーさんには素養はあります。しっかりと今後に活かして成長してください。そのための学園です。そして、生徒を導くのは教員の役目です。それではまたきますね」
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ひと騒動終わり、セレーネのクラスは今日の出し物を中止になったようだった。
セレーネはイザベラから「あなたがいると話がややこしくなるので文化祭を回ってきてください。そうですね、1人だと寂しいと思うのでミラさんもご一緒に」と言われて、今は文化祭をまわっている。
「セレーネが気にすることじゃないわ」
「それはそうかもしれないけど・・・」
「セレーネはここ最近アナスタシア様に連れ回されてたんでしょ?それに、マリーさんは周りの意見を聞かなかったわ」
「そうなんだ?」
「うん。私がなにか言っても『あの女の腰巾着は引っ込んでて!』って言われたわね」
「・・・そうなんだ?」
「そうよ。それに、途中からイザベラ先生も何も言わなくてなって、たぶん学生のうちに一度失敗させようとしたんだなぁと思ったの。それで、様子見することにしたわ」
「なるほど・・・。確かに、国家公務員という文官になってからだと国に損害をだす本物の税金泥棒になっちゃうもんね。それじゃ、あのみんなの発言も演技だったってこと?」
「みんなすごい役者だね。大根役者は0人じゃん」と呟いているセレーネの横で、ミラは人差し指を頬に当てながら少し考えるを仕草をしていた。
「うーん、あれは本心じゃないかしら?イザベラ先生はマリーさん以外にも何も言ってなかったから。実際の文官の中には、国家権力を使える自分の立場に酔ってマリーさんのような言動をする人もいるでしょう?そういう人の指揮下に入った時にうまく立ち回る必要性を認識するきっかけにしようとしたんじゃないかしら?」
「国の中枢にいるラズウェル家のご令嬢がいうと説得力あるわね・・・。ということは、イザベラ先生の手のひらの上で失敗させられたってことだったのね」
「そこまではわかららないわ。教師としては、生徒には文化祭を楽しんで欲しかったんじゃないかしら?本当は生徒同士でうまくいってほしかったからギリギリまで見守ろうとしたとも考えられるわね」
「なるほど・・・それにしても、ミラってなんか指導側の目線も理解してるのね」
「あくまで想像よ!まぁ、この件に関してはイザベラ先生が話すと言っていたからなんとかなるでしょう。それより、模擬領地運営の実習の方はどう?」
「まぁまぁかな。クレアさんと一緒に頑張ってる」
「いいなー、私も一緒がよかった」
「こればかりは仕方がないわよ。学年全体で公正なくじ引きをやってグループわけされたし」
「それもそうね!私はカールと一緒に頑張るわ!」
ユッカの木のメンバーは、セレーネとクレア、ミラとカール、グレイスとリチャード、レイモンドのグループが分かれていた。そしてセレーネのグループは、今度グレイスとリチャードのグループと模擬戦争をやることになってる。
「うん。でも、ミラのおかげでグレイスはなんとかなると思う」
「それはよかったわ!交易ってシステムに感謝ね!」
「ほんとにね」
「まじめな話はこれくらにして、文化祭デート楽しみましょう!どんどん回りましょう!」
セレーネとミラは色々なクラスの出し物を回りながら楽しみ、2年目の文化祭を終えた。




