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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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57:セレーネのお兄さんのこと、狙ってもいい?

晴れわたる夏空の下、私はブドウ畑の水やりをやっていた。あまり水やりが必要ないブドウとはいえ、ここ数日の間に日照りが続いたので、念の為だった。

浮遊魔法で浮きながら、収納魔法にしまった水の入った大きな桶から水を出しつつ、風魔法で水を散布する。いわゆる人間スプリンクラーになっていた。


1区画終えて家に帰ってくると、ミラがブドウの目利きの練習をしていた。その様子は、すっかり馴染んでいる。


「ただいま〜」

「あっ、セレーネおかえり。水やり?」

「そうそう。区切りがついたから戻ってきた」

「お疲れ様。はい、冷えたお水よ」


ミラからコップを受け取り、水を飲む。乾いた喉にとても良い!!


「ありがとう〜。そういえば、クレアさんとお兄ちゃんは?」

「ぶどうの貯蔵庫で、植物魔法を使いながら色々と調査中ね。貴腐ワインのこともだけど、パッシートワインの方も試行錯誤してるみたい」


普通の干しブドウから作ったワインをパッシートワイン、カビてた方を貴腐ワインと命名することになっていた。どちらにせよ、クレアさんの助力を得られたのは大きい。


「ありがたや。クレアさんさまさまね」

「グレイスが王都のコロッセオで開催される闘技大会に参加するために先に帰っちゃったから、森に入れない分こっちをやってるみたいね」

「なるほど・・・」


グレイスはブドウを満喫して、田舎料理を満喫して、森の食材を満喫して、先に王都に帰っていた。勇者を讃えるために建てられたコロッセオで毎年、闘技大会があるんだけど、それに参加するらしい。さすが、戦闘民族!



日陰に座って水を飲みながらのんびりしていると、結構真剣な顔のミラが私の隣に座った。


「ねぇ、セレーネ」

「改まってどうしたの?」

「エリックさんに婚約者はいる?」

「いないわね」

「じゃ、婚約者候補はいる?」

「うーん、そういう話は聞いたことないかな。うちってほら、地方の弱小貴族だから、都会の貴族みたいに頑張って婚約者見つけたりしないでのほほんとしてるから・・・」

「なるほど・・・。それじゃ、私が立候補してもいい?」

「はい?」


思わずミラのことをガン見してしまった。

えっ???


「セレーネのお兄さんのこと、狙ってもいい?」

「はい??????」


えっ???????

狙う?


「・・・ミラさん、その、理由をお聞きしても?」


あまりの衝撃の展開のなか、この質問を絞り出した私を褒めて欲しい!


「年末年始休暇の時にセレーネがうちに来た時に婚約者のタイプをきいたでしょ?それに結構あてはまってるのよね」

「えーと・・・?」


なんて言ってたっけ?

私の疑問を察知したのか、ミラが説明をしてくれた。


「文官みたいな事務みたいな仕事は気に入っているから、夫人として花のように飾られるだけじゃなくて仕事もやらせてくれそうだなぁと思って!」

「なるほど・・・?」

「ピンときてないみたいね。エリックさんって、セレーネもだけど、結構”適材適所”って考え方でしょ?ワインのこともセレーネのアイディアをすんなり採用したりしてるし、妹だとか嫡男だとかよりも、本人のことを見ている。貴族の当主とか夫人とかの見かけの立場を必要以上に気にしなそうだなぁと思って」

「・・・それはたぶん、気にしないと思うけど、そもそも身分が釣り合わないんじゃない?」

「そこはたぶん大丈夫よ!最近話題の複式簿記の普及者で、自ら商会も手掛けてかなり話題にあがってる!後世に偉大な発明として語り継がれそうな活版印刷もかしら?それに、新しいワインが2種類も開発中で、トツンカーナの国ワイン1強を崩す可能性もあるわね。エリックさんに聞いたら、だいたいセレーネが発案なんでしょ?対外的にはセレーネが変な人たちに絡まれないように本当の発案者のことを言ってないけど、私にはちゃんと話してくれたし、そういうところもポイント高いわ!」

「なるほど・・・?そこまで評価してくれて嬉しいけど、ケニルワース領って田舎だよ?」

「へんに王都近郊の貴族相手よりも、派閥に属してない分身軽じゃない?それに王都にタウンハウスをもてば、距離的な不便も減らせるし」

「それはそうかもしれないけど・・・」


急に、ミラの目がうるっとしだした。

そして、そのうるっとした目のまま上目遣いで、


「セレーネは私が婚約するの嫌?」

「そ、そうじゃないけど!ミラならもっと良い相手がいると思う!」


さっきのうるっとした目はどこにいったのか、

ちっちっち、と指を横にふりながら、


「セレーネが思ってるよりも良い条件なの。私にとってもいいし、ケニルワース家としても王都にパイプを作れる。今後ワイン事業を広めたり、複式簿記を広める上でメリットになると思うわ。ラズウェル家の後ろ盾も得られるから、利権がらみで変に邪魔されたりしないと思う」

「なるほど・・・?」

「もしセレーネが、政略結婚が嫌なら諦めるけど・・・」

「政略結婚が嫌なわけじゃないわ。貴族なら当たり前だと思うし。ただちょっとびっくりしたというか、なんというか・・・」

「こういうのは早い方がいいからね!」

「なるほど・・・?というか、クロードさんとかテレサさんに相談しなくてもいいの?」

「パパとママには王都に戻ったら相談するわ。それよりも、先にセレーネかなと思って」

「えっ?」


伯爵家のご当主様を差し置いて私とか!さすがに恐れ多い!


「だって、もし政略結婚反対で急に自分の兄を狙い出したクラスメイトだと思われて、距離を取られたら嫌だなぁ、と思って・・・」

「びっくりはしたけど、さすがに友達の恋路は邪魔しないわよ・・・?」

「・・・友達!そうねお友達ね!けど、恋路というよりは政略結婚ね!」


急にニマニマしだしたミラを見て、恋路と政略結婚はどう違うんだろう?とは思ったものの、変に水を差すのは悪いと思い口を紡いだ。


ーーーーーーーーーー


ちょっと、いや、それなりにびっくりしたミラの相談を終えて、私はミラと一緒に家の中に入った。

そこには、クレアさんとお兄ちゃんがいる。「クレアちゃんの魔法便利だね」とか言ってるのが聞こえた。


「あっ、クレアさん、植物魔法で手伝ってくれてありがとう」

「いえいえ!私ができるのはこれくらいですから!それにしても貴腐菌でしたっけ?こういう方法で植物を熟成させることができるんですね・・・!」


クレアさんの研究魂に火がついたのか、色々と試したことを話してくれた。



一方、ミラはお兄ちゃんに話しかけていた。


「エリックさん、ワインができたとして販路はどうされるんですか?お酒として国に認可ももらわないといけないとも思いますけど、酒造法などは詳しいのですか?」

「販路は学園時代のツテを借りようと思ってる。ちゃんとしたワインとして販売するために必要な酒造法は正直わかんないんだよね・・・」

「でしたら、関連法令をまとめた書物があるのですけど、お貸ししましょうか?」

「いいの?」

「はい、もちろんです!ここまで関わったら私も最後まで関わりたいです!」

「ありがたい!その書物って今持ってる・・・わけはないよね」

「はい、すいません・・・」

「いや、いいよ!どこにあるの?王都?」

「そうですね。王都の私の部屋にあります」

「わかった。今度受け取りに行っても良い?」

「えっ・・・?」


正直ミラの様子が気になってて、チラチラ横目に見てたんだけど、今ミラは何故か顔を赤くして俯いている。

お兄ちゃんもそれに気づいたのか、


「あっ、えっと・・・ミラちゃんどうしたの?」


私も気になる。ミラ、どうしたの?


「その、私も年頃の女の子ですので・・・」

「えーと・・・?」

「年齢の近い異性を自室に招き入れて、2人きりになるのは・・・」

「えっ!?あっ、配慮が足らなくてごめん!居間とかでうけとるよ!」

「ご配慮ありがとうございます・・・。すいません、つい、恥ずかしくなってしまって・・・」


ミラが顔を赤くしながらモジモジしている・・・。

あまり見ない方がいいかなと思って、私はクレアさんと色々と話すことにした。



10数分後、お昼ご飯どうするのかなーと思って、ミラとお兄ちゃんにも聞きに行こうとすると、


「わかった。王都に着いたらミラさんに連絡するね」

「はい!楽しみに待ってますね。いずれ商会で扱えるようにチョコレーネの試作品もつくっておきますね」

「それは助かる!食べ物と言えば、そろそろお昼時かな?準備するからちょっと待ってて」

「はい!」


お兄ちゃんがキッチンに向かったのを見計らって、私はミラの近くに行って話しかけた。ちょっと色々と気になる。


「ミラ」

「セレーネ、どうしたの?」

「首尾はどうだった?うまく色々と約束してたみたいだけど・・・」

「私と関わることのメリットも伝えられたと思うし、悪くはないと思うわ!それに、呼び方もミラちゃんからミラさんになったし、妹の友達枠から脱却して、年頃の異性として認識してもらえるようになったわ!」

「さすがです・・・」


ミラのウィンクを見て、私は「ほんとに婚約までもっていきそう」と思った。

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