55:ケニルワース領にご招待?
第二学園の春学期が終わり夏休みになり、私はケニルワース領に帰ってきた。
けれど、春休みのときと違って1人ではなかった。
「ここがセレーネのおうちね!」
「あの!途中で見えた森の近くの土を調査してきていいですか?植物がいきいきしてたので気になって!」
「美味しそうなぶどうがあんなにたくさんある」
そう。私はなぜか、ミラ、クレアさん、グレイスと一緒にケニルワース領の我が家に帰ってきた。
確かに、この前ミラが「夏休みの間にケニルワース領に遊びに行ってもいい?」と言っていた。社交辞令だと思っていたのに、本気だった。しかも、せっかくだし、ということでクレアさんとグレイスのことも誘うことになった。
ちなみに今回は、王都とナポラーノの間は高速魔法船を使って移動時間を短縮した。
代金はグレイスもちで、修学旅行の時のドラゴン撃退の報酬金が使われた。私が受け取らなかったので、ならいっそのことみんなの移動費に使おう!となったためだった。
「みんな。荷物もあるし、まずは部屋に案内するわね」
我が家はそこまで大きくないので、ミラの王都の家みたいに来客用の部屋があるわけじゃない。事前に両親に手紙を送って、実質物置になっていた部屋を急遽片付けてもらっていた。
「泊まってもらうのはこの部屋なんだけど、1人1部屋用意できなくてごめんね・・・。使用人もいないし、王都のご令嬢に申し訳ないです・・・」
「そんなことないわよ!林間学校みたいで楽しいわ!」
「そうですよ!こちらこそ、無理言ってしまってすいません・・・」
「私は令嬢じゃないし、野宿でも構わない」
いや、グレイスさん、野宿はかまってください。
ちなみに両親への挨拶は先ほど済ませていて、「あらあら〜遠いところからようこそ」という母と、「畑しかないけど楽しんでおくれ」という父の、のほほんとした貴族らしからぬお出迎えが行われていた。親戚のおじさんおばさんみたいな対応だったけど、本物の貴族令嬢のミラとクレアさんが特に気にしてないようでよかった!
みんなが荷物をおいたようなので、今後の予定を話し合うことにした。
「みんなどうする?この領ってほんとに田舎だから、回るところがほとんどないけど・・・」
「私は森の近くの植物とか土壌を見てきてもいいですか?」
「もちろんいいわよ。けど、クレアさん大丈夫?魔物もでるけど・・・」
「それなら私がクレアの護衛をしよう」
「グレイスさんいいんですか?」
「ああ!さて、この領の魔物は強いのかな」
グレイスがクレアさんの護衛をしてくるなら安心だけど、不敵な笑みを浮かべながら外出の準備をしているグレイスを見て、森の魔物に同情してしまった・・・。
「ミラはどうする?」
「そうね・・・、私は領都の中心街の見学をしてみたいわ」
「領都の中心街?」
「うん。もしかして遠い?」
「あっ、その・・・、遠いというかさっきうちにくる途中に通った町が中心です・・・川を越えたさきにあったあれです・・・」
「・・・そ、そうだったのね!ごめんなさい!」
「いえいえ、お気になさらず・・・」
「で、でも、自然豊かでいいところだと思うわよ!空気も美味しいし!ねっ?」
くっ!ミラのフォローが心に染みる!
「そう言ってくれてありがとう・・・。じゃせっかくだし、町は私が案内するわ」
「ありがとう!これが噂に名高い領地デートね!」
「それでは、可憐な王都のお嬢様をエスコートさせてもらいます」
ミラ相手に騎士ごっこでもしようとしたら、急にグレイスがいる辺りが光りだした。
「えっ!何!?」
「セレーネ!すまない!タンスに服をしまおうとしたら、小さい置物があったから少しどかそうとしたら急に光だした。何かの魔道具だったのか」
「そういう魔道具はうちになかったと思うけど、ちょっと見せて」
グレイスから小さい置物を受け取った瞬間、光が止まった。
「うーん、我が家の紋章が彫刻されているけど、ただの置物だと思う・・・」
「セレーネ」
「うん?どうしたの?ミラ」
「ちょっとそれ見せて」
「いいわよ。はい」
私から置物を受け取ったミラは、それを見つめてから、
「これを借りて王都に持ち帰ってもいい?」
「いいけど、もしかして金銀財宝の類だった?」
「なんとも言えないけど、金銀財宝ではないと思うわ」
「そっかー、あわよくば売ってお兄ちゃんの事業資金の足しにしようと思ったのに・・・」
「・・・セレーネ、家の紋章入りの品物を簡単に売ってはいけません」
「・・・おっしゃるとおりです」
「何かわかったら教えるわね」
「ありがと」
ミラとの話がひと段落したので、外出前にクレアさんとグレイスに声をかける。
「2人とも、あまり遅くならないでね」
「ああ」
「はい!やっぱり夜遅くになると森は危ないんですか?」
「危険がないわけではないけど、グレイスがいれば平気だと思う。それよりも!パジャマパーティーしましょう!」
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クレアさんとグレイスを見送り、私もミラと一緒に家から出た。
今は町に向かって川沿いに歩いている。
「あっ!セレーネ!あれは何?」
ミラが指を指した先には、小さい水門があった。
「あれは農業用の水門ね」
「スイモン?どういう装置?」
「スイモンというか水門」
「えっあれが!?王都や水の都にあるのとは違うのね・・・」
「うん、王都とかのは大きいからね。うちにあるのは畑とかに水を運ぶ用の小さいやつだから、1人でも開閉ができるようになってるの」
「そうなんだ・・・」
驚いた顔をしているミラを見て、私は少し心配になった。カルチャーショックみたいになってないかな、大丈夫かな。
「水門1つとっても私が知らないことがあるのね・・・王都にこもってばかりではわからなかったわ。・・・セレーネ!他の場所にもどんどん行きましょう!ケニルワース探検隊出発!!」
私の心配をよそに、ミラはノリノリだった。楽しそうでよかったよかった!




