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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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52:VSドラゴン

セレーネとグレイスは臨戦体制で、カールは岩の後ろに隠れていた。


「火竜か」


そう呟いたグレイスが見つめる先には、ドラゴンの火竜種がいる。

ドラゴンの中では中級くらいの強さである。しかし、中級とはいえあくまでドラゴンの中であるため他の魔物に比べかなり強い。

セレーネは内心「グレイスが一緒じゃなければ戦いたくない」と思っているようだった。


「GYAOOOOOOOOOOO」


当の火竜はというと、火を吹きながら暴れている。


「グレイス、あれ、正気があると思う?」

「なさそうだな。首の付近になにか付いてないか?」

「・・・ほんとね。悩んでてもしょうがないし、とりあえず私が牽制がてら魔法をうってみる?」

「頼む。さぁ、楽しい楽しいドラゴン狩りの時間だ」

(グレイスの笑顔が怖い。小さい子供が見たら泣きそう・・・)


セレーネはそう思いつつも、変態もといカールが岩の影に隠れているのを確認してから、


「じゃ、行くわね」


まずは様子見なのか、ウィンドランスを数本飛ばしたようだった。


「GYAOOOOOOOOO」


「火竜に当たったはいいけど、ダメージ入ってなさそう。さすが。皮膚が硬いのか、魔法耐性が高いのか。いずれにしても、今ので私のことを認識したみたいね。グレイス、私がまた魔法で気をつけているうちに」

「ダメージがないか!それでこそ燃える!!」


セレーネの目には、目を輝かせたグレイスが剣を携えて火竜に突っ込んでいくのが見えた。


「あっ、ちょっと!」

(あーもう!戦闘狂なんだから!)


グレイスが突っ込んでくるのを認識した火竜が火球を何発も放った。

何個かは避けたようだが、一個だけちょうど着地のタイミングに被ってしまいそうになり、それをみたセレーネが、


「危ない!」


ウィンドウォールを発動した。

真正面からは受けきれないと判断したようで、角度をつけて風の壁を作り、火球の進行方向をそらすことに成功していた。


「セレーネ、助かる!」

「いえいえ!けどそう何度も防げないわ!」

(いくらグレイスが強いとはいえ、ドラゴン相手に肉弾戦は厳しいわよね。私は浮遊魔法で空中から攻撃して火竜の注意を分散させましょうか)


「グレイス!浮遊魔法で空中から注意を引くから地上はお願い!」

「ああ!」


セレーネは空中に浮かびながら、時々来る火球を躱し、風の矢を打ち込んでいた。

グレイスは、自身に身体強化をかけ、剣に魔力をまとわせて爪や関節など刃が通りやすそうな場所を狙って攻撃しているようだった。


それを岩陰から見ているカールは、

「これ、俺いらなくないか・・・?セレーネさんは魔力か空気の流れを感知しているかのようにまるで妖精のようにひらひら火球をかわしているし、グレイスも野獣の直感かのように攻撃を避けているし・・・。ドラゴンが正気を失っているとはいえ互角以上にやりあってないか?たまに冒険者の依頼に一緒に行っていたけど、その辺の魔物だとあの2人の強さを引き出せてなかったのか・・・。俺の目の前に化け物が3匹いるけど、俺は一般人なんだ・・・」


しかし、相手はドラゴンである。正気ではなさそうとはいえ、これだけ攻撃され、力技にでることにしたようだ。


「グレイス!火竜の口付近に魔力が集まり始めた!ドラゴンブレスがくるわ!」

「わかった!」


セレーネは火竜から距離をとり、グレイスは近くの岩の影に隠れた。


火竜はというと、距離が離れたセレーネよりもグレイスをターゲットにしたようだ。


「GYAOOOOO!!」


咆哮と共にドラゴンブレスが放たれ、グレイスが隠れた岩にぶつかる。

そして、追撃とばかりに火竜はしっぱを横に薙いだ。


「くっ!」


岩が粉々になり、グレイスが弾き出された。

さらに追撃とばかりに、火竜は火球をグレイスに向けて放つ。

セレーネが急いでウィンドウォールを張ろうと、


「間に合えっ!」


魔法を発動しようとするも、


ボンッ!!!


という音とともにグレイスは火球に飲まれてしまった。


「グレイス!!!!」


セレーネはすぐにカールが隠れている岩に向かって飛んだ。なるべく早くグレイスに治癒魔法をかけるためだ。

カールもすぐに治癒魔法を発動できるように準備していると、


「は!熱いじゃないか!ちょっとやけどしてしまったか」


「魔力を纏ってみたけど鎧みたいにできたな」と呟きながら、土埃の中にグレイスが立っていた。それを見たセレーネは、その直後カールと目があい、目線で会話を始めた。


(カール君、ドラゴンの火球ってちょっとやけどするくらいですむの?)

(いや、すまないと思う)

(そうよね。私の感覚がおかしいわけじゃないよね)

(ああ。俺も驚いている。なんで、火球をもろに喰らってちょっとやけどですむんだ?ドラゴンブレスじゃないとはいえ、それなりに威力があると思うが・・・)


「今度はこちらの番だ」


グレイスがそう呟き、ぞくっとしたものを感じたセレーネが思わずグレイスのほうが向いた。殺気を纏っているかのようなその雰囲気はまるで、


「魔王じゃん・・・」


火竜もその雰囲気を感じ取ったのか、生物としての防衛本能か、すぐにその場を飛び立とうとした。


「させないわ!」


すかさずセレーネが火竜の邪魔をした。セレーネの魔法をくらい、飛び立った直後の火竜は地面に落ちる。

セレーネは視線を感じた方向を向くと、カールが目で問うていた。


(セレーネさん、今のは?)

(うん?浮遊魔法よ)

(浮遊魔法?)

(そうそう)

(地面に落ちてなかったか?浮遊魔法って浮遊するから浮遊魔法じゃないのか?)

(浮遊する力って上に向いているでしょう?だからその力の向きを逆にしてみたの。うまくいってよかったわ)


カールは「なんだそれは?」と思ったが、魔力の高まりを感じたので、思考を中断した。地面に這っている火竜が、さきほどのドラゴンブレスの比ではないほどの魔力を集めていた。おそらく、全力レベルの。


セレーネとグレイスもそれに気づいたようで、


「やぶれかぶれのドラゴンブレス?でもこの方角は・・・」

「この方角はズンルトの街があるじゃないか」


「最大威力のウィンドウォールでどうにかなるかな・・・いや、やるしかないか」


セレーネができる限りの強度の防御魔法を準備している一方で、グレイスは、


「街には私のクラスメイトがいるんだ。ちょっと火を吹くトカゲ風情に害させない」


改めて火竜に向き合ったグレイスの体が淡く光る魔力に包まれた。

そして、グレイスは自然にその魔力を剣に纏わせた。


「セレーネ、今ならドラゴンブレスを切れる気がする。任せてくれ」

「えっ?あっ、うん。・・・えっ、ほんとに?」

「ああ。今までにない力の高まりを感じる」

「確かに、今のグレイスからすごい魔力を感じるわ。ちなみに、火竜の首についているあの変なものもきれる?あれを中心に魔力の流れがおかしい気がする」

「いけると思う」


火竜も準備ができたようで、火竜の全力のドラゴンブレスとグレイスの剣がぶつかりあった。


グレイスの剣は、宣言通りドラゴンブレスを真っ向から切り裂き、火竜の首についていた変なものも切った。



「・・・お主たちが我を助けてくれたのか?」


どこから声が聞こえたのか、セレーネとカールはお互いに見合った。その横では、一気に力を使いすぎたのか、グレイスが地面に大の字で寝っ転がっていた。


「我だ我」


セレーネが声の聞こえる方を向くと、先ほどの火竜が話していた。


「今のは火竜さん?」

「そうじゃ、人間よ」

「えっ、話せたんですか?」

「ああ。人語は多少操れる。それにしても世話をかけた」

「えーと・・・?」

「我が暴れたのを止めてくれたのだろう?」

「それは、そうかもしれませんけど、だいぶ怪我をさせてしまって・・・」

「なに、これくらいすぐ治る。それより、あの不気味な道具を外してくれて助かった」


火竜の視線の先には、さきほどまで火竜の首についていたものがあった。


「あれはなんですか?」

「さぁな。寝ている間につけられたようだ。おそらく人族の人工物だろう」

「人工物・・・」

「何か良からぬものであることはわかる。我には構造を解析するのは難しいから、人族のお主らに任せるぞ」

「えっ、あっ、はい」

「それじゃ、我は自分の巣に戻る。ここは人族の領域だろう。要らぬいざこざは避けたい」


そういい、火竜はすぐにその場を飛び去ってしまった。


「なんだったんだろう・・・?」


セレーネがきょとんとしていると、岩陰に隠れていたカールがでてきた。


「セレーネさん、それよりもグレイスさんの治療をしようと思う」

「あっ、うん。治療にかまかけてへんなことしちゃダメよ、変態さん」

「するわけないだろう!というか、セレーネさんも少しやけどしてないか?」

「うん?あっ、ほんとだ。さすがに火球はかなり熱かったから避けても余波があったのかもね」

「それくらいならすぐに」

「あっ、大丈夫。これくらいなら自分で治せるわ。『ヒール』」

「・・・なんでほんとに治ってるんだ。治癒魔法は教会の専売特許だと思ってたけど・・・」

「これくらいのヒールなら生活魔法じゃない?」


カールは「どう考えても違うだろう」と思いつつも、グレイスの治療を優先した。



グレイスの傷もほぼ治った頃、遠目に人がやってきたようだ。


それをみたセレーネは、

(騎士団かな?冒険者?ドラゴンが飛び去ったから安全確認?)


一方カールは、

「このままだと俺たちはドラゴン撃退の英雄になってしまう」

と焦っていた。


それを聞いたセレーネも少し焦って、

「変態さん、英雄になると魔法師としてあんなことやこんなことになったりしない?」

「そういえば、セレーネさんは魔法師としての素質がバレて拉致られるのを警戒しているんだっけ?」

「ええ、そうよ。私はまだ研究所で実験動物になりたくないわ。最近クレアさんのお母さんと会うと、獲物を目の前にした肉食獣のような視線を受けるの」

「そうか・・・。俺も今目立つわけにはいかないんだ」

「そうなんだ」

「ああ」


「「この場から離れよう」」


珍しく意見が一致した2人は、回復ポーションをグレイスのそばにおき、その場から離れた。


そして、騎士団と冒険者の集団に後ろから合流し、「グレイスが戦いに集中できるよう周囲の警戒に従事していた」と何食わぬ顔で主張した。


こうして、マーイス月の27日、つまり5月27日に起こった、緊急ドラゴン討伐?クエストは幕を閉じた。


ーーーーーーーーー


その日の夜、英雄グレイスによるドラゴン撃退を祝う宴のなか、そのグレイスからジト目を向けられるセレーネとカールの姿があったとかなかったとか。


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