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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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43:魔物を間引こう

ケニルワース領の実家についた翌日、私はお兄ちゃんと魔物狩りに行くことになった。

フェブウス月だからまだ2月で冬なんだけど、春を見据えて動き出す魔物がちらほら出てくる。

数が少ない今のうちから狩っておいた方が楽なので、我が領ではこの時期から少しずつ魔物の間引きをすることが多い。


「セレーネ、そろそろ出発するよ」

「はーい」


私たちはケニルワース領の冒険者ギルドに向かって出発した。

普段は冒険者がメインに行っている魔物狩りを私たちも行うということで、事前に伝えておくためだった。私もお兄ちゃんも冒険者の資格はもっているので、挨拶ついでにもしも討伐依頼があれば受ようという一石二鳥作戦でもある。



冒険者ギルドのドアを開けて中に入ると、私たちは早速声をかけられた。


「これはこれは!若とお嬢じゃないですか!兄妹揃ってどうしたんですか?」

「ロナウドさん・・・私のことをお嬢と呼ぶのはやめてください・・・」

「俺のことを若と呼ぶのもやめてください・・・」

「いやぁ、自分はこの呼び方が気に入ってるもんで!」


ギルドマスターのロナウドさんは、将来の領主であるお兄ちゃんのことは若、私のことをお嬢、と呼んでいる。

その筋の出身の人じゃないはずなんだけど、なぜかこの呼び方をしている。


「そんな細かいことはいいでしょう!それにしてもお二人が揃って来るのは久しぶりじゃないですか?」

「細かくはないと思いますけど・・・。そうですね、兄の卒業と入れ違いで私が入学してしまいましたからね」

「そういうわけで、妹が帰ってきたので久しぶりに一緒に魔物を間引こうと思ってきました。討伐依頼はありますか?」

「そういうことなら、おーい、ケイシー!お嬢と若がお越しになったぞー!」


受付の奥からバタバタと足音が聞こえてきた。


「ほんとだ!セレーネちゃん久しぶり!元気だった?」

「ケイシーちゃんも久しぶり!元気元気!」


ケイシーちゃんは去年受付嬢になった女性だった。ちゃん呼びしているけど、去年成人しているから年上だ。地方の田舎では若い層が少なく、比較的歳の近い私とも仲良くしてくれていた。


「今日はどうしたの?それにしても美男美女兄妹って絵になるわね」

「どうもありがとう。それよりも、ちょっとお兄ちゃんと魔物狩りに行こうかなぁと思ったんだけど、討伐依頼があればうけるよ。なければ男爵家として町を守る名目で狩ってくる」

「農家じゃなかったの?」

「時と場合によるわ」

「出た、お貴族様の手のひら返しくるりんぱ」

「えー」

「まぁ挨拶はそれくらいにして、依頼だっけ。・・・あっそうだ。その前に聞きたいんだけど、セレーネちゃんのランクは王都に行ってあがったりした?」

「Dランクのままね」

「わかった。それと、えーと、若様はBランクと記憶しておりますがあってますでしょうか」


ケイシーちゃんから若様と言われたお兄ちゃんは苦笑しつつ答えた。


「おっしゃるとおりBランクです。というか、若様はやめてもらっていいですか・・・。妹のことは名前で呼んでいるみたいなので、俺のこともエリックでお願いします」

「あっはい、かしこまりましたエリック様」


ケイシーちゃんは棚から依頼書の束を取り出して、パラパラめくり始めた。


割とすぐに探していた依頼書が見つかったようで、


「この依頼はどうでしょうか?街道から少し離れた所に陣取っている、大口ドックの群れの討伐です。3つの群れが3箇所にバラバラに陣取っています。どの群れも、成人も飲み込めるほど大きなあのお口で周辺の木々を齧ったり、集団で遠吠えをしていたり、その大口を叩いて衝撃波を出したり、すでに一般市民に損害がでています」

「なるほど。俺はそれで構いません。セレーネはどう?」

「私もこれでいいわ」


依頼を受諾しギルドから出ようとすると、それまでどこかに行っていたロナウドさんが戻ってきた。

その手には何かを持っている。


「お嬢が戻ってきたら聞きたかったんだ。王都の冒険者ギルドのレイラって知ってるか?」


ロナウドさんが持っていたのは、週刊の情報誌だった。そこには、例の、おおかみおばさん撃退の記事があった。


「さぁ?なんのことでしょうか!私はセレーネです!」


あーもう!絶対確信犯でしょう!支部が違うとはいえ冒険者ギルドという同じ組織だし!


「お兄ちゃん!早く討伐に行こ!」

「お、おう?」


お兄ちゃんの手を引っ張り、早急にギルドを後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さっきのはなんだったんだ?」というお兄ちゃんからの問いを目で制し、歩くこと数十分。1つ目の群れの場所に到着した。

遠目に大口ドックが見える。これ以上近づくと警戒されるので、戦闘の打ち合わせをするなら今だ。


「作戦はあるの?」

「昔みたいでいいんじゃないか?俺が前衛でセレーネが後衛」

「わかった。先にお犬さんたちを魔法で牽制するから、その隙に剣をもって突っ込んでね。そのあとはてきとうにフォローするわ」


お兄ちゃんはお母さんの戦闘能力を継いでいるのか、身体強化をかけての近接戦が得意だった。実力もあるし、いい感じにフォローする程度で、いい感じに魔物を討伐してくれると思う。


「了解」

「領地経営の勉強ばかりで腕は鈍ってない?」

「問題ない。生意気を言う妹がどれくらい成長したか、兄が見てあげようではないか」

「楽しみにしてて」

「わかった、楽しみにしておこう」


時折グレイスと一緒に冒険者として活動してたから、それなりに成長してると思うわ!

剣とかの武器を扱うのはダメだったけど!

カールからは「護身術を習ったと聞いてはいたけどこれは・・・。あの時たまたま街で俺に会わなければ前衛してたのか・・・」といつものバカにしたような感じではなくて本気で同情のような目線で、グレイスからは「その、なんだ、人には向き不向きがある。セレーネには魔法があるだろう。武器の扱いは壊めt、んんん、身体能力は悪くないから魔法を使った近接戦ならなんとかなるだろう。だから気を落とさないでくれ」って気遣わしげに言われたけども!

魔法なら!


私が収納魔法から杖を取り出すと、お兄ちゃんも草木や岩に隠れながら警戒されるギリギリまで魔物に近づいていた。そして、私にアイコンタクトを送ってきた。


(よし、やりましょうか!)


先にお犬さんたちの退路にウィンドウォールを使おう。詠唱の声で気づかれるのを避けるために、無詠唱で発動した。クレアさんのお父さんとの戦闘をきっかけに本格的に無詠唱は練習していた。

さて、次にウィンドアローを発動して風の矢の雨を正面から打ち込むと、慌てたオオカミさんたちが後ろに逃げようとする。けれど、ウィンドウォールにぶつかってさらに混乱していた。


(行けっ!兄よ!今だ!)


・・・いや、なんで私の方を向いて驚いてるの?

「早く行って!」と目で促すと、再起動したようで剣を構えて大口ドックの群れに突っ込んでいった。


大口ドックには遠距離攻撃がないので、浮遊魔法で空中から群れに近づき、お兄ちゃんの死角に入った大口ドックにウィンドアローを打ち込む。



そんな感じで戦闘をしていると、いつの間にか討伐が終わったようだ。

お兄ちゃんは討伐証明の部位を切りとり、剣を鞘にしまってから私のところに戻ってきた。


「討伐証明の部位を収納魔法に入れてもいいか?」

「いいわよ。はい、収納魔法開いたから入れちゃって」

「助かる」


収納魔法に討伐証明部位を入れ終わると、


「セレーネ」

「何?」

「無詠唱とマルチキャストができるようになった?」

「あっ、うんそう。言ってなかったっけ?」

「今初めて知った」

「そっか、ごめんごめん」

「まぁ過ぎたことだしそのことはいいけど、文官になりたいんじゃなかったっけ?冒険者のランクと実際の実力が見合ってないし、宮廷魔法師に希望を変えた?」

「文官希望のままよ?それもあって冒険者ランクの昇級試験も受けてないわ」

「そっかぁ・・・」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない。それより残りの群れも討伐しよう」

「はーい」


「急に変なお兄ちゃんね」と思うセレーネと、「浮遊魔法が使えて、無詠唱とマルチキャストもできる。それで文官希望?俺の妹は一体何を目指しているんだ?」と思うエリックであった。

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