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4:魔法と武術の授業

オリエンテーションの1日が過ぎた翌日、ついに本格的に授業が始まる予定だ。

午前が魔法、午後が武術である。


セレーネはというと寮の自室から出て、廊下ですでに待っていたクレアと合流した。


「待たせてごめん」

「いえいえ、私も今出たところですから」

「そう?それにしても、部屋が同じ階にあると何かと便利ね」

「そうですね。昨日の夜はありがとうございました」


クレアさんにお礼を言われたけど、実は昨日は彼女の荷物の荷解きを手伝っていた。

魔法関連の書物や道具などが多くて、荷解きの手が足りてなかったようだ。色々と説明もしてくれて勉強にもなった。

お礼に淹れてくれた紅茶も上品なお味のするいい茶葉だった。さすがお貴族様。


私の荷物?弱小男爵家のご令嬢の荷物は最低限しかないから、すぐに荷解きも終わったわ。


「気にしないで。あの紅茶も美味しかったわ」

「ほんとですか!自分で育てたんですよ!色々と魔法で条件を変えてですね、」

(えっ自分で育てたの!?お高いものだと思ってた!)


その後、なぜか紅茶から端を発したクレアさんの魔法講座を聞きながら、魔法の授業が行われる広場にむかった。

私もクレアさんも自分の魔法杖を持っているけど、部屋に置いたままで授業にはもってきていない。杖は補助道具だからなくても魔法は使えるし、おそらく今日は必要ない。ハ○ー・ポ○ターの出てくるような小さいタイプじゃなくて、ロッドみたいなタイプで大きいから、必要ないなら置いておく。



授業がおこわなれる場所につくと、早速先生が開始の挨拶をした。


「みなさん揃いましたか?今から魔法の授業を始めましょう」


魔法の授業の担当は、三角帽子を被った女性の先生だった。

ルーシーさんというらしい。

いかにも魔女っぽいし、どことなく色っぽい。


「魔法コース志望じゃない人もいるでしょうけど、生活する上で魔法は切っても切り離せません。1年生の前半では、魔法の基礎や最低限知っておいた方がいいことを中心に取り扱います。まず、人が使う魔法には属性があります。例えば、指先からちょっと火を出すくらいであれば魔力があれば誰でもできますが、一定以上のレベルの魔法は個人の魔法属性と一致する属性しか使えません。基本的に1人1つですけど、高位の魔法師には2つの属性を使える人もいます。とはいえ、全ての基本は魔力なので、今日は基本となる魔力量の測定を行いましょう」


そういうと、魔法の先生はどこからともなく水晶玉を取り出した。


「この水晶玉に触れると、魔力量が数値として表示されます」


おっ、いかにもなアイテムが登場した。

こういうのっていいよね!

実際のところ私は冒険者登録をしたときにすでに測定しているけど、学園イベントでやるのもまた違う良さがある。

そう、それはまるで自宅で見る映画と、映画館で見る映画みたいな!たぶん・・・。


「成長とともに魔力量は増える場合もありますけど、とりあえず現状を把握しましょう。それでは測定を始めるので、順番に並んでください」


一番手は、我らがクラス委員レイ様だった。


「レイモンド君は40ね。魔法師にもなろうと思えばなれるわ」

「先生、僕は文官を目指しています」

「あらそう?残念ね」


40くらいから魔法師としての実戦にはいれる目安になる。

60〜80がまぁまぁ多い方で、80〜100だと上位冒険者や魔法師団、宮廷魔法師クラスになる。100〜はほとんどいなくて、宮廷魔法師のスカウトがくるレベルだったと思う。

魔力量があっても魔法操作能力なければあまり意味がないから、あくまで目安だけど。


「次は、グレイスさんね。どうぞ」


グレイスが水晶に触ると、90と表示された。

肉弾戦主体のイメージだったけどだいぶ多くない?普通に宮廷魔術師になれるよ・・・?


「あらあら、90ね。どう?魔法師にならない?」

「魔力があっても魔法が苦手です。身体強化くらいしか使えないので私は剣士になります」

「それは残念ね」


先生、思ったよりも早く引いた・・・?

かなりの逸材だと思うけど、とりあえず社交辞令で誘ってただけなのかな・・・?


私の番になると、

「じゃ次は、セレーネさん。期待しているわ」


先生にウィンクされた。あっこれ、バレてるわね。

流れ作業で水晶玉に触ると、85と表示された。

やっぱり、今世のこの体って魔法スペック高いのよね。


周りからもおお〜!という声が聞こえた。


「今のところクラス2番ね。セレーネさん魔法師にならない?」


にっこり笑ってるけど、私が冒険者で魔法師やってることを知ってそう。

入学書類で申告したし、それもそうか。


「私は文官になります」

「そう?残念ね。気が変わったら魔法師コースにしてね」

「気が向けば、ですね」



そうしてしばらくすると、クレアさんの番になった。


「じゃ次はクレアさん。ふふ、楽しみにしているわね」


先生またウィンクしてた。

そういえばクレアさんって宮廷魔法師の娘なんだっけ?

結構な数値だしそう。


すると、周りからかなり大きな歓声があがった。

前に生徒がいて見えなかったので、背伸びして水晶玉を見ると、そこには110と表示されている。

結構な数値どころじゃない。最高レベルじゃん。


当のクレアさんは周りの歓声などを受けてオロオロしつつも、希望を述べていた。

「ち、違うんです!わたしは、生産系で魔法陣の開発がしたいんですぅ・・・」


最後の方が尻すぼみになりつつも、急いで水晶玉から離れていったけど、その様子は小動物みたいだった。


クラス全体の測定が終わって、結局私の魔力量はクラスで上から3番目だった。

周りからは、魔法師になるんでしょ?みたいな目線をチラチラ受けるけど、私は文官になります!


「それでは、今日はこの辺で終わりにします。魔力量が多い人も少ない人も、適材適所なのであくまで目安程度にしてください。次回は実際に魔法を使ってみましょう」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


午後は武術の授業だった。

魔法の授業で使った校庭とは違う校庭に私たちはいる。

王立の学園だけあって広くていいなー


「次は誰だ?」


現実逃避をしていると、グレイスの声が聞こえてきた。

今日は授業初日ということで、軽く終わるだろうなと思っていた私の予想とは裏腹に、目の前には地獄絵図が広がっている。


なぜか模擬戦がはじまり、グレイスがバッタバッタと周りの生徒を倒しまくった。

そして今も木刀を肩におきながら次の相手を探している。


ふと、目が合ってしまった。


「目があったからバトろうか」


・・・なんか前世で似たようなセリフを聞いたことがあるけど、そっか、実際言われるとこんな感じになるんだ。嫌だなぁ。


「えーと、私じゃ力不足といいますか。もっと強い方と戦ってはどうでしょうか!」

「あらかた倒してしまった」


地面には、複数人の生徒がうずくまってうなっていた。みなさん戦闘系ぽかった。

非戦闘系の生徒はというと、もう建物の影に隠れ始めてる。ちなみに、クレアさんは模擬戦が始まった時点で隠れていた。


「私は武術は苦手というか、ポンコツというか、あははー」

「そしたら、魔法を使ってもいい。実戦だと魔法もあるだろう?治癒魔法の先生も控えてるから大丈夫だ」


笑って誤魔化そうとしたら失敗した。

治癒魔法の先生であるマリエッタ先生は苦笑いしていた。


くっ、これはやるしかないのか。

くっころ、ならぬ、くっこれ。


「はぁ、わかった。けどほんと、グレイスの方が強いから加減はしてね」

「それはやってみないとわからない」


・・・ほんと頼みますよグレイスさん。


私は短剣バージョンの木刀を学園の備品から選んだ。

弱小とはいえ男爵家だから最低限の護身術は教わっていた。

けど、素人に毛が生えた程度だから、目の前にいるような飢えた猛獣を相手にできるレベルではない。


私が渋々広場にでると、治癒魔法の先生と同様に苦笑いしていた武術の先生ベンジャミン先生が声をかけてきた。スキンヘッドが眩しいぜ。

それはそうと、先ほどからずっと審判をやっていた。


「2人とも準備はいいか?今回は魔法あり、ということでいいか?」

「「はい」」


「わかった。2人とも位置についてくれ」


私は少し距離をとって、グレイスと向き合った。

うわーすごい気迫。横から見てるのとは違うわね。

・・・ほんとにやるの?虎と戦う方が気楽な気がするよ?


「それでは、はじめっ!」


私が速攻で身体強化をかけると、すでに目の前にグレイスがいて、木刀をふってきた。


ぶん!


身体強化が間に合ってなんとかよけたけど、耳元で風を切る音が聞こえてきた。

えっ、グレイスっていま素の身体能力だよね?少し離れてたと思ったのにすぐに距離をつめてきたし、私大丈夫?


「これを避けるか!」


うわーいい笑顔。

私が体勢を立て直しているうちに、グレイスの体に魔力を感じた。身体強化をかけたようだった。


ドンッ!


「ひゃ!」


えっ、待って。避けた木刀が地面にめりこんだ?

無理無理!これはさすがに!

このまま接近戦を続けるのは身の危険を感じた。


「風よ!」


ウィンドカッターを丸めたような、攻撃力を抑えた空気の塊をグレイスに向けて放しつつ、バックステップをして、距離をとる。


「ふんっ!」


グレイスは、木刀で私の魔法を切っていた。

・・・切った?風魔法って木刀で切れるの?


よくみると木刀に魔力が纏っていた。

そうすれば魔法も切れるんだ。勉強になる。


ってそうじゃない!どうにかしないと!

強いだろうなとは思ってたけど、本物の実力者じゃん!学園に来る意味ある?


「風よ集え」


さっきの空気の塊よりもだいぶ密度を高めた風の塊を作った。

まずはこれで防御ができるか確かめよう。

ダメなら棄権しよう。


グレイスが木刀を振りはじめるのに合わせて、風の塊をぶつけてみる。

ボヨン、という音がしたけど、切られてはない。

よし!なんとかなりそう。


グレイスは一瞬驚いたような目をしたけど、すぐにニヤッと笑った。

・・・やっぱりなんとかならなそう。


ボヨン

「ひゃ」


ボヨン

「きゃ」


おっと可愛い声が出てしまったぜ。

短剣の木刀はさっきから一回も使ってない。私のか弱い細腕で、あれを物理的に受けるのは無理だ。


それよりも、グレイスのスピードが上がってきている。

このままだと反応が追いつかなくなって行く末は骨折だろう。

治癒魔法のマリエッタ先生がいるとはいえ、痛いのはいやだなぁ。


「風よ囁け」


魔力を空間に広げて、空気の揺らぎを直接感じ取ろうと思う。

もう少しスピードがあがったら目で見て避けるのは難しそうだけど、これならなんとかならないかな。


・・・右からかな?


ひょいと避けると、木刀が空気を切ったのを感じた。


これはいけそう。

安定して、続けて何回か避けられたから、攻撃もしてみようと思った。


「ウィンドカッター!」


殺傷能力を抑えた風の刃をグレイスの背後に発生させて、放った。


「ぐっ」


おお!!!と、周りから歓声が聞こえた。

そういえば、グレイスに攻撃を当てたのは私が初めて?


グレイスと目があうと、ゾワっとした感覚を受けた。

まるで、捕食者である虎のターゲットにされたうさぎの気分。


「あっ、終わった」


思わず言葉が口から漏れた次の瞬間、グレイスの周りの空気が揺らいだと思ったらグレイスの姿が消えた。


これは避けられない!


私が思わず目を瞑って、間に合うかわからないけど頭を腕でガードしようとしたところで、


「そこまで!」


武術のベンジャミン先生の声が聞こえたと思ったら、先生が目の前にいてグレイスの木刀を受け止めていた。

グレイスに集中しすぎて先生の動きに気づかなかった・・・


しまった!という表情をしたグレイスが私に声をかけてきた。


「すまない、つい熱くなってしまった。先生が止めてくれなかったら大怪我をさせてたところだ」

「模擬戦だから気にしないで。本物の実力者ってすごいのね」


あれでも、グレイスは途中まで加減してくれていたんだろう。最後の一撃でわかった。

本物の実力者ってすごい。それを簡単にとめた先生も相当な実力者だろうし。


私はクラスメートから拍手で迎えられた。

一部の生徒からはなぜか憧れのような目を向けられているけど、私の目標は文官だ。

決して、断じて、戦闘職ではない。


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