37:真実の愛とお月見会
俺の名前は、イオーゴ・レスター。
王都の治安維持を担当するレスター伯爵家の息子だ。
家柄にも、才能にも恵まれ、能力を遺憾なく発揮する俺は控えに言っても、有能だ。
あまりに有能すぎて、王立第二学園では遠回しに俺のことを見てくる生徒が大半だ。
あまりの有能っぷりに恐れ多くて俺に近づけないか、この才能に嫉妬しているのだろう。
可哀想なやつらめ。とはいえ、下民が俺の威光を見たら、そうなっても仕方がない。
そんな有能な俺だが、王立第二学園の入学式、あの日、有能で天才的な俺に相応しい女性に出会った。
黒髪に金眼、深い夜空に浮かぶ月のように美しい彼女はセレーネ・ケニルワースという名前だった。
ケニルワースというファミリーネームは今まで聞いたことがなかったが、運命に埋もれている女性を掘り出せという天命なのだろう。
そこから、俺は彼女との距離を縮めるためにアプローチをした。
彼女は控えめで奥ゆかしい性格だから、伯爵家の俺への対応も気を遣っているようだった。
そんなこと!俺は気にしないというのに!
文化祭の時に、彼女の秘めたる想いが魔力となって俺に伝わってきた。
あれほどの衝撃は未だかつて経験したことがなかった。
これこそ、運命の赤い糸、いや、真実の愛だ!
真実の愛を育てるため、年末年始休暇中に彼女の俺への緊張をほぐそうと色々と計画したのに、あの憎き、口先だけのミラ・ラズウェルが家に連れ込んでしまった。
囚われた姫を救うのは騎士だと決まっている。そこで、悪魔の手先からの救出に向かったが、ラズウェル家に入る直前に、ポーなんとかとかいうメイドが声をかけてきた。そして、「セレーネ様は、自らの意思で我が屋敷にいらしております。セレーネ様のことを思うなら、ここは彼女の友情を優先すべきでは?」と愚かにも俺に意見してきた。
しかし、心の広い俺は愛するセレーネ嬢の多少のわがままは多めに見ようと思う。
できる男である俺は、セレーネ嬢のため一度帰り、年明けの学園でプレゼントを渡そうと計画した。
「ケイ」
「イオーゴ様、なんでしょうか」
「年が明けて学園が再開したらセレーネ嬢にプレゼントを渡そうと思う」
「それはいいお考えですね!セレーネ様もきっとお喜びになりますよ」
ケイ。ケイ・サーツは俺が小さい頃からの側近だ。ポンという犬を飼っている。
もう1人、コウ・アーンという側近もいるが、今はグッドの指輪の購入に向かわせていてこの場にいない。コツという犬を飼っている。合わせるとポンコツだが、それをいじると機嫌が悪くなるので、できる人間である俺はそんなことはしない。
それより、プレゼントについて話を進めよう。
「火鼠の皮衣、蓬萊の玉の枝、ドラゴンの首の珠の3種のプレゼントを用意しようと思う」
「イオーゴ様それは・・・」
「あぁ、入手が難しいとされる。しかし!だからこそ、俺からセレーネ嬢へのプレゼントに相応しい!」
「そうですね!さすがです!」
「ああ!そうだろう!入手経路について俺に考えがある」
「承知しました。費用についてはどうしましょうか?」
「いつも通りだ。レスター伯爵家の俺ならその権利がある」
「そうですね!おっしゃる通り!」
そして、年末年始休暇が明けて学園に向かった。
セレーネ嬢を見つけた時、俺は声をかけた。
「セレーネ嬢!俺の妻になってくれ!」
「はい?」
「言葉にしないと伝わらないからな!これは運命の赤い糸、いや、真実の愛なんだ!セレーネ嬢!俺の妻になってくれ!」
「イオーゴ様。お断りします」
「なぜだ!この三種のプレゼントをあげよう!火鼠の皮衣、蓬萊の玉の枝、ドラゴンの首の珠だ!」
「結構です」
「3つだと足りないか!?あと2つ用意する!」
「3つでも、あと2つ追加しても受け取りませんし、婚約もしません。今もこれからもです。それでは失礼します」
セレーネ嬢!確かに君は男爵家かもしれない!そして俺は伯爵家だ!
家柄的に周囲の反対を気にしているのはわかる!
しかし!愛し合っている者同士そんなこと些細なことだろう!
しかし、奥ゆかしい彼女はグッドの指輪も受け取ってくれず、伯爵家を相手に男爵家が対等に話せないかのようにその場を去ってしまった。
せっかくの俺の緻密で完璧な作戦が!
奥ゆかしい彼女を追おうとすると、他の生徒が邪魔が先に進めなかった。
なんだこのお邪魔虫どもは!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日の放課後。
王立第二学園のとある教室に数名の生徒が集まっていた。
「諸君。臨時の招集にも関わらず集まってくれて感謝する。我々お月見会の重要な議題を話し合いたい」
議長らしい生徒がそう告げ、他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「我々お月見会は、月を崇めているが故に、今まで直接関わることを避けてきた。我々にとって月は眺めるだけにとどめるべき存在だ。直接関わるなど恐れ多い。しかし!不埒な感情を向けるあの卑劣な虫使いの輩の狼藉は目に余る。月も非常に困惑しておられる。さらに、月が彼の輩に好意を1ミリも抱いていないことは、自ら明言しておられるうえ、ラズウェル家に匿われたことからも、明白な事実だ」
議長らしい生徒がそこで区切ると、それが総意であるというように他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「本日の謎の偽物プレゼント作戦を邪魔したのは、今までの我々の方針から反することだが、月を守るに必要なことだったと考える。しかし、我々はあくまでお月見会だ。水面に映る月に触れればその姿は見えなくなってしまう。そのことは肝に銘じなければならない」
議長らしい生徒がそこで区切ると、それが総意であるというように他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「お月見会、序列5位のアルザッル氏」
「序列1位ヘルツュプルグ氏。なんでしょうか」
アルザッルと呼ばれて答えたのは、1年生のクラス対抗戦の再戦の時にセレーネの護衛を務めたハリソンだった。
とはいえ、彼のファミリーネームがアルザッルという名前ではない。彼らは、天体の月にちなんだコードネームでお互いを呼んでいた。
「同じクラスに属する君の目から、本日の我々の行動は月が嫌がっておられたか?」
ハリソンはこのとき、「正直、見ただけでわかるわけない」と考えていたが、朝の教室のセレーネの様子はそれほど険悪なものではなかったと思う。
「おそらく嫌がっていなかったかと」
「そうか。ではこれからも、彼の輩の狼藉が目に余るときは陰ながら月を補助しよう」
こうして、セレーネ本人が認知していない非公式ファンクラブのお月見会の臨時の会合は終了した。
俺の名前は、イオーゴ・レスター。
王都の治安維持を担当するレスター伯爵家の息子だ。
家柄にも、才能にも恵まれ、能力を遺憾なく発揮する俺は控えに言っても、有能だ。
あまりに有能すぎて、王立第二学園では遠回しに俺のことを見てくる生徒が大半だ。
あまりの有能っぷりに恐れ多くて俺に近づけないか、この才能に嫉妬しているのだろう。
可哀想なやつらめ。とはいえ、下民が俺の威光を見たら、そうなっても仕方がない。
そんな有能な俺だが、王立第二学園の入学式、あの日、有能で天才的な俺に相応しい女性に出会った。
黒髪に金眼、深い夜空に浮かぶ月のように美しい彼女はセレーネ・ケニルワースという名前だった。
ケニルワースというファミリーネームは今まで聞いたことがなかったが、運命に埋もれている女性を掘り出せという天命なのだろう。
そこから、俺は彼女との距離を縮めるためにアプローチをした。
彼女は控えめで奥ゆかしい性格だから、伯爵家の俺への対応も気を遣っているようだった。
そんなこと!俺は気にしないというのに!
文化祭の時に、彼女の秘めたる想いが魔力となって俺に伝わってきた。
あれほどの衝撃は未だかつて経験したことがなかった。
これこそ、運命の赤い糸、いや、真実の愛だ!
真実の愛を育てるため、年末年始休暇中に彼女の俺への緊張をほぐそうと色々と計画したのに、あの憎き、口先だけのミラ・ラズウェルが家に連れ込んでしまった。
囚われた姫を救うのは騎士だと決まっている。そこで、悪魔の手先からの救出に向かったが、ラズウェル家に入る直前に、ポーなんとかとかいうメイドが声をかけてきた。そして、「セレーネ様は、自らの意思で我が屋敷にいらしております。セレーネ様のことを思うなら、ここは彼女の友情を優先すべきでは?」と愚かにも俺に意見してきた。
しかし、心の広い俺は愛するセレーネ嬢の多少のわがままは多めに見ようと思う。
できる男である俺は、セレーネ嬢のため一度帰り、年明けの学園でプレゼントを渡そうと計画した。
「ケイ」
「イオーゴ様、なんでしょうか」
「年が明けて学園が再開したらセレーネ嬢にプレゼントを渡そうと思う」
「それはいいお考えですね!セレーネ様もきっとお喜びになりますよ」
ケイ。ケイ・サーツは俺が小さい頃からの側近だ。ポンという犬を飼っている。
もう1人、コウ・アーンという側近もいるが、今はグッドの指輪の購入に向かわせていてこの場にいない。コツという犬を飼っている。合わせるとポンコツだが、それをいじると機嫌が悪くなるので、できる人間である俺はそんなことはしない。
それより、プレゼントについて話を進めよう。
「火鼠の皮衣、蓬萊の玉の枝、ドラゴンの首の珠の3種のプレゼントを用意しようと思う」
「イオーゴ様それは・・・」
「あぁ、入手が難しいとされる。しかし!だからこそ、俺からセレーネ嬢へのプレゼントに相応しい!」
「そうですね!さすがです!」
「ああ!そうだろう!入手経路について俺に考えがある」
「承知しました。費用についてはどうしましょうか?」
「いつも通りだ。レスター伯爵家の俺ならその権利がある」
「そうですね!おっしゃる通り!」
そして、年末年始休暇が明けて学園に向かった。
セレーネ嬢を見つけた時、俺は声をかけた。
「セレーネ嬢!俺の妻になってくれ!」
「はい?」
「言葉にしないと伝わらないからな!これは運命の赤い糸、いや、真実の愛なんだ!セレーネ嬢!俺の妻になってくれ!」
「イオーゴ様。お断りします」
「なぜだ!この三種のプレゼントをあげよう!火鼠の皮衣、蓬萊の玉の枝、ドラゴンの首の珠だ!」
「結構です」
「3つだと足りないか!?あと2つ用意する!」
「3つでも、あと2つ追加しても受け取りませんし、婚約もしません。今もこれからもです。それでは失礼します」
セレーネ嬢!確かに君は男爵家かもしれない!そして俺は伯爵家だ!
家柄的に周囲の反対を気にしているのはわかる!
しかし!愛し合っている者同士そんなこと些細なことだろう!
しかし、奥ゆかしい彼女はグッドの指輪も受け取ってくれず、伯爵家を相手に男爵家が対等に話せないかのようにその場を去ってしまった。
せっかくの俺の緻密で完璧な作戦が!
奥ゆかしい彼女を追おうとすると、他の生徒が邪魔が先に進めなかった。
なんだこのお邪魔虫どもは!
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その日の放課後。
王立第二学園のとある教室に数名の生徒が集まっていた。
「諸君。臨時の招集にも関わらず集まってくれて感謝する。我々お月見会の重要な議題を話し合いたい」
議長らしい生徒がそう告げ、他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「我々お月見会は、月を崇めているが故に、今まで直接関わることを避けてきた。我々にとって月は眺めるだけにとどめるべき存在だ。直接関わるなど恐れ多い。しかし!不埒な感情を向けるあの卑劣な虫使いの輩の狼藉は目に余る。月も非常に困惑しておられる。さらに、月が彼の輩に好意を1ミリも抱いていないことは、自ら明言しておられるうえ、ラズウェル家に匿われたことからも、明白な事実だ」
議長らしい生徒がそこで区切ると、それが総意であるというように他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「本日の謎の偽物プレゼント作戦を邪魔したのは、今までの我々の方針から反することだが、月を守るに必要なことだったと考える。しかし、我々はあくまでお月見会だ。水面に映る月に触れればその姿は見えなくなってしまう。そのことは肝に銘じなければならない」
議長らしい生徒がそこで区切ると、それが総意であるというように他の生徒もうなづきあう。
それを確認した議長がさらに続けた。
「お月見会、序列5位のアルザッル氏」
「序列1位ヘルツュプルグ氏。なんでしょうか」
アルザッルと呼ばれて答えたのは、1年生のクラス対抗戦の再戦の時にセレーネの護衛を務めたハリソンだった。
とはいえ、彼のファミリーネームがアルザッルという名前ではない。彼らは、天体の月にちなんだコードネームでお互いを呼んでいた。
「同じクラスに属する君の目から、本日の我々の行動は月が嫌がっておられたか?」
ハリソンはこのとき、「正直、見ただけでわかるわけない」と考えていたが、朝の教室のセレーネの様子はそれほど険悪なものではなかったと思う。
「おそらく嫌がっていなかったかと」
「そうか。ではこれからも、彼の輩の狼藉が目に余るときは陰ながら月を補助しよう」
こうして、セレーネ本人が認知していない非公式ファンクラブのお月見会の臨時の会合は終了した。




