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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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34:勘違い大魔王

私の目の前には賊の黒フードが発動したイバラがある。

あのイバラに捕まったらおしまいね。

それにしても数が多い。どうにかして、破壊しないと!


「えぃっ!」


私のウィンドカーターはイバラは弾かれてしまった。


「なら!これなら!」


ウィンドカーターとウィンドランスの合わせ技!


「ほう。マルチキャストか。だが、それくらいじゃこのイバラは壊せないよ」


余裕そうな黒フード!

何か他に手段はないかと考えた瞬間、ふとグレイスがよく使う魔法剣が思い浮かんだ。走馬灯みたいな感じかな?

いえ、それよりも、威力を高めたウィンドソードなら剣だしイバラも切れそう!


「いけっ!」


けど、私のウィンドソードではイバラはきれなかった。


「おや?打つ手なしかな?」


このままだとクレアさんまで捕まってしまう。

なにがなんでもあのイバラを切らないと!


「まだよ!」


あのイバラを断ち切るイメージを強く持って、魔力もさっきより込めて、


「今度こそ!!」


私は思いっきりウィンドソードを振り抜いた。


「なにっ!?」


さっきまで余裕な雰囲気だった黒フードの驚きの言葉が聞こえ、私のウィンドソードが見事にイバラを断ち切ったみたいだ。


「ハァハァ。どうよ!」


思わずドヤってしまった!黒フードが試すような態度だったからつい!


・・・それにしても、風魔法のはずだけど黒くなってる?黒い風の剣?それと、イバラを切った後にそこを広げて突破口を開ければとは思ったけど、イバラの一部が完全に切り裂かれて無くなっている。威力が想定の数倍高い?火事場の馬鹿力かな?


「今のはまさか・・・」


男性の黒フードが何やら考え始めたタイミングで、クレアさんの声が響いた。


「もう!お父さん!何してるの!セレーネさんも落ち着いて!それとお母さん!なんで見てるだけで止めないの!」


・・・はい?


「クレアさん、今なんとおっしゃいました?」

「セレーネさん落ち着いて」

「あっ、そっちじゃなくて・・・」

「お父さん何してるのと、お母さんなんで止めないの?の方ですか?」

「うん。そうそうそっち・・・というか、お父さん!?お母さん!?」


思わず、すごい勢いでさっきまで戦っていた男性の黒フードを見てしまった。

すると、その男性は黒いフードをとった。


「初めまして、セレーネ嬢。クレアの父のウィリアムです。宮廷魔法師団の副団長です」

「はい?」

「そして、向こうにいるのが妻のシャノンです」

「はい?」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「本当に!申し訳ございませんでした!!!」


クレアさんのお父さんとお母さんは実は家に帰ってきたばかりで夕食がまだとのことなので、私とクレアさんも夜食という形で同席した。


「いいよいいよ気にしないで。僕も悪ノリしっちゃたし」

「ほんとだよお父さん!」

「まぁまぁ、クレア。それにしてもあのなかで『私の友達も守り抜いてみせます』とはなかなか言えない。良い友達を持ったじゃないか」


うわー!!!やめてー!!!

賊だと思ってあんなこと言ったけど!めちゃくちゃ恥ずかしい!


あのあと説明されたけど、フードをかぶってたのはシンプルに寒いからと、黒だったのは天体観測の邪魔をしないように暗闇の中で目立ちにくい色だかららしい。魔法が家にあたるのを気にしてたのも、自宅なら当たり前だ!

私は勘違い大魔王か!


「お父さん、そういう問題じゃないでしょ!」

「おやおやこれは手厳しい」


「セレーネさん、本当にすいません・・・」

「クレアさん、いえ、こちらこそすいませんでした・・・」

「それにしても、セレーネ嬢はマルチキャストが使えるんだね」

「ウィリアムさん、あっいえ、ウィリアム様。はい、実は私マルチキャストができます。ウィリアム様は二属性使えるんですね」

「家の中出し、様はつけなくていいよ。そうそう、僕はイバラと土魔法が使える。ちなみに、妻のシャノンは花魔法と水魔法だね」

「お二人とも二属性だなんて、すごいですね」


あれ?クレアさんがちょっとしゅんとしちゃった?


「クレア」

「お父さん?」

「クレアの植物魔法は、僕とシャノンの魔法属性を足したようなものだ。だから、魔法属性が1つでも気にすることはない。それに下手に魔法属性を2つもっている人よりも、できることの幅はかなり広い。それに、」

「そう、それに、魔法属性が1つでも2つでも3つでも4つでも、クレアはウィリアムと私の娘だから気にしないで」

「お父さん!お母さん!」


親子の会話でいい感じの雰囲気になったけど、私としたことが、配慮が足らなかったかもしれない・・・!


謝ろうと思ったところで、急にこっちを向いたシャノンさんに名前を呼ばれた。


「ところでセレーネさん」

「なんでしょうか、シャノンさん」


怒られるかな?


「その年でマルチキャストができるんですね。どうやって修練をしたのですか?」

「えーと、」

「しかも無詠唱でしたよね?いつから使えたんですか?」

「それは、」

「宮廷魔法師の鍛錬にも組み入れようと思うのですけど、普段どのような訓練を?」

「えっ特に」

「魔法の制御もなかなかのものです。どこで身につけたのですか?・・・いえ、魔法で引き起こす現象に対するイメージが明確なのでしょうか。もっと話を、」

「お母さん!セレーネさんが困ってるでしょ!それと、その拘束魔法は何?誘拐しちゃダメだからね!」


シャノンさんって、研究者モードのクレアさんをさらに研究者っぽくした感じね!

若干の現実逃避をしながらも、勘違い大魔王である私はフローリー親子に謝罪しつつ、夜食をご馳走になってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後日、王宮にて。


ミラの父であるクロード・ラズウェルと、クレアの父であるウィリアム・フローリーが廊下ですれ違った。


「おや?これはこれは、フローリー子爵ではありませんか!」

「ラズウェル伯爵。お久しぶりです」

「ええ、全くお久しぶりですな。普段は宮廷魔法師団に引きこもっていらっしゃるから王宮にいるなんて珍しい!今日はこれから竜巻でもおこるのでしょうか」

「文官の皆様ほど引きこもってはおりませんよ。椅子に座ってばかりで体が鈍ることもありませんし。ギックリ腰に効く薬草でもお持ちしましょうか?」

「その心配には及びませんよ」

「そうですか」

「「・・・」」」


「「はっはっは」」


貴族のご挨拶を終え、ウィリアムが本題を切り出した。


「先日、セレーネ・ケニルワース嬢と戦う機会があったのですが」

「今なんと?」

「先日セレーネ・ケニルワース嬢と戦う機会がありました」

「なぜ・・・?」

「色々とありまして。それで、本題です。彼女はマルチキャストができます。それと、無詠唱も習得しています。これほどの人材、なぜ魔法師団に教えていただけなかったのですか?」

「それは本当ですか!?」

「はい。・・・その驚きよう、知らせる以前にもしかしてそもそも知らなかったのですか?」

「初耳です」

「そうでしたか・・・しかし、ラズウェル伯爵の娘さんは、」

「ええ。正式な任務ではありませんが、優秀な学生の発掘の協力依頼を受けています」

「では、なぜ・・・?マルチキャストができて、浮遊魔法と無詠唱も使える。魔法師としてエリートコースに乗ることもできる才能だと思うのですが・・・」


ミラの父クロードは、今ラズウェル家の本邸に匿っているセレーネと娘のミラの様子を思い浮かべていた。


(あの2人の様子は、ただの仲の良い友達に見えた。ミラも優秀な学生の発掘の依頼を受けているとは、正式な文官でもないからあくまで任意の協力というレベルだ。そして、セレーネ嬢は文官志望だったはず。娘のことだ、セレーネ嬢の魔法師としての素養には気付いているだろう。ガントチャートの件は聞いているから、友人としてセレーネ嬢の希望を優先しようとしたということだろうか?実際、優秀な人材の発掘も本人の能力と適性を考慮、とのはずだったし、文官の適性があったからそれを報告した、という形か。我が娘ながら、機転がきく)


「フローリー子爵。娘が依頼されたのはあくまで任意の協力です。その過程で、情報の精査wpしたのでしょう。それと、セレーネ嬢本人は文官になりたいそうですよ」

「それは僕の娘のクレアからも聞いています。セレーネ嬢本人が魔法の能力をあまり広めないようにしていることも。しかし、」


ここでクレアの父ウィリアムは、ミラの父クロードだけに聞こえるようにかなり小声で何かを伝えた。


「フローリー子爵。それは本当ですか?」

「目の前で見ましたので、ほぼ確実だと思います。ただ、本人はまだ意図して発動するどころか自覚があるかも不明です」

「なるほど・・・それにしても因果なものですね」

「まったくその通りです」


「ところで、クレア嬢からセレーネさんのことは聞いてなかったのですか?」

「『浮遊魔法の使い手で無詠唱とマルチキャストもできると知ったら、お母さんが誘拐すると思ったんだもん』だそうです・・・」

「あーそれは・・・」


「説得力がありますね」という言葉をクロードは飲み込んだ。


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