28:年末年始休暇
「明日から年末年始休みに入る。実家に帰るもよし、親戚の家にいくのもよし、学園に残るのもよし、好きにしてくれて構わないが、ハメは外しすぎないように。それと、春学期からコースに分かれる。年末年始休み明けに希望をとるから、自分の希望を決めておいてくれ。それでは以上!はい、解散!」
Ⅰ組の担任のトーマス先生が連絡事項を告げると、帰りのホームルームは解散となった。生徒たちは、「休暇だ!!!」と言わんばかりに、足取りかるく教室を後にしはじめた。
「クレアさんは年末年始休暇はどうするの?」
「あっ、セレーネさんそれがですね・・・あの、以前女子寮の部屋を爆破したじゃないですか。あれが、フローリー家にも伝わっているようで、その、自宅謹慎です・・・」
「そ、そうなんだ・・・その、元気だして?」
寮の爆発って、そういえばそんなことあったわわね。
「ありがとうございます。とは言っても私って基本的に引きこもりなので、自宅謹慎でも大差ないんですけどね・・・あはは」
クレアさん、乾いた笑いをしている。
これはなんというか・・・!いたたまれない!
「クレアさん、自宅の敷地から出なければよかったりしない?」
「それはそうですけど・・・?」
「じゃ天体観測というか星空鑑賞でもする?冬で空気も澄んでるし、私が浮遊魔法を使えるから屋根の上とかで寝っ転がってみれるわよ」
「星空鑑賞いいですね!屋根に登るって斬新な発想ですね!」
・・・そっか。
普通の令嬢は屋根の上に登らないのね・・・。
そっか、そっか。
「そ、そう?それならよかった。日程はまた決めましょう!」
「はい!ところでセレーネさんはケニルワース領に戻るんですか?」
「うーん、うちって遠いのよね。馬車で片道7日くらいかかるから往復だと14日くらいね。年末年始休暇も14日間だから、行って帰ってくるだけで休暇が終わるわ。お兄ちゃんも在学時は学期間休暇の時に帰ってきてたし、私も年末年始は学園の寮でのんびりして過ごすわ」
「そうだったんですね・・・遠いと大変ですね・・・」
「けれどこればかりはしょうがないわ。そういえば、みんなはどうするんだろう」
ミラ、グレイス、レイ、リチャードも教室内で話をしていた。
クレアと一緒に、セレーネは4人に合流した。
「みんなはお休みはどうするの?」
「セレーネか。僕はノースブルック家として、王宮の事務の手伝いの予定だ。完全に王宮の業務の止めるわけにもいかないから、交代制で業務にあたるからその補佐をやる」
ふむふむ、レイ様は王宮のお手伝い。
レイ様の隣にいたリチャードを見ると、
「俺も手伝いだな。エリントン子爵家はこの時期忙しいんだ。他の時期に比べて、修理や鍛治の依頼が多い」
ふむふむ、日本でも師走っていうくらいだもんね。リチャードも年末は忙しいのだろう。
そして、次にリチャードの隣にいたグレイスに目を向ける。
なんか私、順番指定機みたい。
「私はマーウデンに戻る。この前のクラス対応戦で抑え込まれたから、鍛え直そうと思う。周りと協力する戦い方に可能性を感じた」
ふむふむ、グレイスはマーウデンで修行をするのか。
・・・あれ?
「グレイス、防衛都市マーウデンって遠くない?私の家でも王都から馬車で片道7日くらいかかるのに、方角は北西と北東で違うけどマーウデンはさらに遠くなかった?王国の最北東にあって、帝国とシンタルージュ王国の国境付近よね?」
「そうだな。だから転移ゲートで行って帰ってくる」
「そっか!転移ゲートなら一瞬ね!」
「ああ」
・・・あれ?待って?
グレイスがあまりに自然に言っていたから流しちゃったけど、転移ゲートで繋がっているのは、王都オラリア、王国の最北西に位置する第二の都市アムダム、王国北部の東西の中間地点に位置していて北部の交通の要所になっているユレヒト、王国の南西部の大都市ナポラーノ、ワインの一大産地で王国東部にあるトツンカーナ地方のシェナ港じゃなかったっけ?
なんか、ちょっと厄介そうな匂いがしたので、私はそこで考えるのをやめた。
「ミラは?」
「やっと私の番?」
「ごめんごめん」
「私もレイ君と同じで王宮の手伝いね。束の間の学生生活だったわ・・・」
「いや、まだ学生でしょ」
「そうだった!」
テヘッみたいな仕草をしているミラ。絶妙に似合うのよね・・・
しかも、本人がそれを理解してやってるからタチが悪い。
「それで?セレーネは?」
「私は学園の寮で過ごすわ」
「・・・大丈夫なの?」
「えっ?何が?」
「あのかまってちゃんのレスター伯爵家のご子息様よ。セレーネが学園に残ると知ったら彼も残りそうじゃない?授業もないから1日中時間があるし、学生の数も減るから、めんどくいことになりそうじゃない・・・?」
あのかまってちゃんイオーゴのこと忘れてた!
確かに!ミラの言ってる危険性がある!
「忘れてた。その可能性があるわね。うーん、どうしよう。遠征系の冒険者ギルドの依頼受ける?けどちょうどいいのがあるのかどうか・・・うーん」
「じゃ、うちくる?」
「えっ?」
「私の家。ラズウェル家の本邸にくる?王都にあるから学園からも近いわよ。それに、伯爵家だからあのかまってちゃんが学園の外で伯爵の権力を振り翳しても渡り合えるわ。どう?」
「うーん、迷惑じゃない?」
「大丈大丈夫!」
「ラズウェル家のお屋敷は広いし部屋も余ってるんじゃないかな。そんなに気にしなくて大丈夫だと思うぞ」
レイ様が補足情報をくれた!
それにしても、ラズウェル家に遊びに行ったことあるのかな。
2人とも仲良さそうだし。
「なんで、レイ君が答えるのよ」
「ミラ、客観的な意見があった方がいいと思ったまでだ。ラズウェル家の部屋が余ってるのも間違いじゃないだろう?それともノースブルック家で匿った方がいいか?」
「婚約前の貴族令嬢を1人だけで、同い年の男の子の家に住まわせるの?」
「そういうあらぬ誤解が生まれるから、さっきラズウェル家に行くことに背中を押したんだ」
「それならよかった。本気で言ったのならどうしようかと思ったわ」
「その辺りは安心してくれ」
そうよね。私一応貴族令嬢だから、使用人がいそうとはいえ、1人で男子の家にいっちゃまずいわよね。
ミラとレイ様の会話を聞きながら、1人でうんうん納得してると、ミラが私の方を向いた。
「セレーネ、どうする?」
「ミラがいいなら行ってもいい?」
「もちろん!じゃ早速今からいきましょう!」
「あっちょっ、荷物の整理くらいはさせて!」
「ふふ、冗談よ。じゃ1時間後に寮の前で待ち合わせね!」
荷物の整理を終えてからミラに合流すると、学園のそばに馬車を待たせてあると言われた。
そして、ミラについていくと、そこにはラズウェル伯爵家の紋章が入った専用馬車があって、馬車の中のイスもフッカフカだった。
これが貴族か・・・!




