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私は文官になりたいのに、口先だけかまってちゃんが税金で貢いできてキショイ  作者: ハムウサギ


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26:再戦!クラス対抗戦(前編)

雲ひとつない晴々とした冬空の下、Ⅰ組とⅡ組の生徒が演習場に集まっている。

入学後に行っていたクラス対抗戦の再戦をおこなうようだ。

通常、再戦は行われない。しかし、グレイス1人に惨敗したⅡ組と、グレイスが抜けた後に作戦負けしたⅠ組との、双方の希望が一致したことにより、再戦が執り行われることとなった。


「それでは、テオ君。念の為、試合条件の最終確認をしましょう」

「わかりました、レイモンド君」


Ⅰ組のクラス委員のレイモンドと、Ⅱ組のクラス委員のテオが代表者挨拶のようなものをしているようだ。


「基本ルールは前回と同じで、相手本陣に設置された旗を先に取った方が勝ち、ということでいいですか。Ⅰ組が白い旗、Ⅱ組が黒い旗でいいですか。テオ君」

「はい。そして、Ⅰ組はグレイスさん込み、武器と魔道具は前回と同じで学園の備品をレンタルをして使用する、試合を通じて先生の助力はなし、致命傷を与える攻撃は禁止、ということですよね」

「それで構いません。しかし、Ⅱ組のみなさんは本当に大丈夫ですか?」

「といいますと?」

「いえ、何、こちらにはグレイスがいて、そちらさんは先生の助力なしだと、また前回のように僕たちが蹂躙してしまうかもしれません。申し訳ないと先に謝っておいた方がいいですか?」

「その必要はありませんよ。僕たちⅡ組は成長していますから。それに、前回僕たちの策に見事にハマって敗北を喫したⅠ組の皆さんこそ大丈夫ですか?」

「それこそ僕たちの方が成長しています。それをお見せしましょう」

「そうですか」

「そうですよ」


「「ふ、ふははは」」


2人は不適な笑みを浮かべながらも、ガッチリ握手をしている。


「「すいませんが、監督をおねがします」」

「任せておけ」

「はーい!30分後に試合開始の合図の魔法を打ち上げるわ」


レイとテオは、今回対抗戦を見守る武術のベンジャミン先生と魔法のルーシー先生に挨拶をして自分のクラスの陣地に戻って行った。


先ほどばちばちした雰囲気を出していたレイとテオを見送った先生2人組は


「ベンちゃん、若いっていいわね」

「ルーシー先生、その呼び方はやめてくれないか・・・それと先生も俺より若いし、そうでなくとも十分若々しいだろう」

「あら、お上手ね!」

「妻に鍛えられるからな」

「私の夫もこれくらい気が利けばいいのに。はぁ」


ーーーーーーーーーーーーーー


Ⅰ組の準備会場では、セレーネとグレイスとクレアが諸々の準備をしていた。


「なぁセレーネ、あれは気にしなくていいと思う」

「グレイス、そのつもりよ。あのかまってちゃんイオーゴはⅥ組のはずなのに、なんで”愛しのセレーネ”とか書いた垂れ幕を持って観覧席にいるの?キショいわ・・・というか、自分の授業は?」

「さぁ?それより、セレーネとクレアの準備は大丈夫か?今回2人が防御の要だろう?」

「私は大丈夫。クレアさんは・・・」


そこで、セレーネは様子を確認するためにクレアの方を見た。


「わ、私も大丈夫です!ちゃんと練習通りできます!」

「そうか。本陣は頼んだぞ」

「は、はい!」


「グレイスも気をつけてね。今回グレイス込みの条件を提示してきたのはⅡ組の方からだから、何か作戦があるんだと思う」

「そうだな、セレーネ。それを想定して今回私は囮としての役割が大きい。けど、行けるところまでいくぞ」


獰猛な笑みを浮かべるグレイスを見て、セレーネは思わず苦笑いをしている。


「ほどほどにね」

「ああ。それじゃまた会おう」


グレイスは最前線に移動し、セレーネとクレアも自分たちの持ち場である本陣に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そろそろかな?」

「そうですね。セレーネさん」

「気楽に行きましょう、クレアさん」

「はい・・・!」


演習場の中央付近で魔法の閃光弾が打ち上がった。

魔法のルーシー先生からの、試合開始の合図である。


「私は少し離れるね」

「はい」


打ち合わせどおり、他の生徒も距離をとっているようだ。それを確認したクレアは、詠唱を唱えて植物魔法を発動した。


「大いなる力よ我が元に集え。植物の息吹をうけ大木となりて、我らを守る城塞とならん。ウッドキャッスル!」


林に隣接していたとはいえ更地だった本陣の周りを、みるみるうちに植物が生えてきて、囲い込んだ。


前回の対抗戦で本陣の守りが手薄だった反省を活かして、クレアの魔力量と植物魔法で防衛設備を作り上げる作戦を思いついたようだ。

即席とはいえ、太い幹をした大木に囲まれた本陣の守備力は大幅に改善した。


「えっと、次は。大いなる力よ我が元に集え。植物の息吹をうけ木となりて、林とならん。フォレスト」


本陣の周りに木々がニョキニョキ生えてきた。


「最後に、セレーネさんの魔法台ですね」


クレアが詠唱を唱えて植物魔法を発動すると、今度は物見櫓が出来上がった。


「セレーネさーん!できましたよー!」


「わかったわー!そっちに行くわね!皆さんも防衛設備ができたので持ち場についてください!」


セレーネの合図をうけ、本陣の守備を担う生徒は各自持ち場についた。


そして、セレーネ本人も、クレアが植物魔法で作った物見櫓に向かう。


「私は櫓の上から魔法を放つので、護衛はハリソン君にお願いしますね」

「もちろんです!命に変えてもセレーネさんのことはお守りしますっ!!」

「えっ?模擬戦だから、いえ、実戦だとしてもそこまでしなくてもいいですよ・・・?」

「いやだなぁ冗談ですよ。それほど真剣に護衛をするという意思表示です!」

「それならよかったです。それではお願いしますね」

「はいっ!」


セレーネのことをキラキラした目で見ているこのハリソンは、学園の非公式クラブである”お月見会”のメンバーの一員だった。

このクラブは、一言でいえばセレーネの非公式ファンクラブである。もちろんセレーネはその存在を認知していない。お月見の名前の如く、静かに推すことを信条としているためだ。どこぞのかまってちゃんとは大違いである。


また、ハリソンはセレーネに対して恋愛感情を持ち合わせているわけではない。

セレーネ本人は否定しているが、同世代で上から数えた方が早いだろう優れた魔法戦闘能力と、ガントチャートなどを提案し文化祭実行員として発揮した事務能力から、周りからは文武両道の才色兼備と思われている。ハリソンも、そんなセレーネに尊敬の念を抱いていた。


今回、クレアの植物魔法による防御を前提としているため、Ⅰ組の防御戦力は本陣の周りに集中していて、道中に守備要員はいない。

つまり、模擬戦の比較的早い段階でⅡ組の生徒がⅠ組の本陣に到着することになる。


「「敵がきました!」」


能動的な探索魔法と受動的な魔力検知を組み合わせながら索敵をしていたセレーネとクレアが同時に叫んだ。


こうして、Ⅰ組の本陣防衛戦が始まった。


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