24:文化祭の後の中間試験とかまってちゃん
文化祭が終わって数日後。
Ⅰ組は教室でホームルームを行っているようだ。担任のトーマスが生徒を前にして話をしている。
「文化祭が終わってふわふわしているのはわかる。ただし、中間試験は待ってくれない。各自しっかりと準備するように」
「えー」とか「いやだなー」とかの生徒の反応の後、ホームルームが解散になったようだ。
セレーネは席が隣のクレアと話している。
「セレーネさん、文化祭実行委員でお忙しかったと思いますけど、試験大丈夫ですか?」
「実行委員を口実にあまり勉強してないのよね・・・」
「そうすると、グレイスさんもですか?」
私とクレアさんがグレイスの方を見ると、自席から動かずこの世の終わりのような顔をしていた。
「あの様子を見るに、そうじゃない?」
「・・・大丈夫でしょうか」
「うーん、どうだろう・・・ちょっと聞いてみよう」
「ほっほっほ、悩める少年少女よどうしたのじゃい?」
「あっミラ。中間試験の勉強どうしようかなーと思って。グレイスにも聞こうと思ってたところだったの。ところでそのキャラは?」
「なんとなくそれっぽいかなーと思って!それじゃ勉強会でもしましょう!」
「それだ!なんか学生っぽい!いい!」
「ミラさん、私も賛成です!」
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午前中の授業が終わり、お昼ご飯を食べながら、勉強会のことを話すために、私はミラとグレイスとクレアさんと一緒に学食に向かった。
ボン、という音がしたので、そちらをみると煙も出ていた。
しかも、虫がハートを作っている。
あー、音と煙はかまってちゃんの取り巻きが私の意識を向けさせるために魔法でやったのか。
「セレーネ嬢!また目が合いましたね!これぞ運命!これぞ以心伝心!」
私は聞こえないふりをした。
それとあなたたちを見たのは私だけじゃない。この場のほとんどの生徒が「何やってるんだ?こいつらは?」みたいに見ている。
かまってちゃん理論だと、ここのほぼ全ての生徒が運命の相手になってしまう。
「セレーネ嬢!高級ブランドのグッドの限定品の髪飾りです!あなたの為に買ってこさせました!俺達の愛の証です!!」
スルーしてたら、かまってちゃんイオーゴが私の目の前にやってきた。なんか、「俺たちの愛の証」とか言ってる。意味を理解しているのだろうか?
「不要です」
「なぜですか!そこの女にもらったらしい髪飾りはつけているというのに!」
イオーゴを相手にしないようにその場を去ろうとすると、詠唱が聞こえた。
「大いなる力よ!選ばれし者であり国家の守護者であり浩然の正気を纏う我が言葉に従え!至高なる生物の形をなし、愛しき月が我が元に至るバージンロードを作れ!ホーリーウルトラセイクリッドハイパーメティキュラスインセクト!」
ツッコミどころ満載な詠唱の後に、かまってちゃんが私の進行方向に虫を出現させて「セレーネ嬢はこちら」という文字を作ってきた。キショいわね。
とりあえず、それを無詠唱の風魔法で周りにバレない程度の最低限の威力で撃退する。
「俺の虫魔法!どうした!最近調子悪いぞ!」
調子が悪いんじゃなくて、私が叩き落としているの。直接魔法を受けてるのに、なんで気付かないんだろう?
それと、私は無詠唱でしれっと使ってるけど、このかまってちゃんは詠唱をしている。
不用意に学食で堂々と魔法を使ってそのうち処罰されないかしら?そろそろ風紀委員会に持ち込んでもいいかな?
それよりも今がチャンスね。
私はすぐにその場から移動した。
「文化祭が終わってから貢物が増えたな。あいつどんどん迷走してないか。ハイリスクノーリターンなことばかりだな。そもそも根本的な方向性が間違ってるのに、なんで金を積めばいけると思った。小手先じゃどうにもならないくらい根本的におかしい」
「グレイス、文化祭の時とか色々と巻き込んじゃってごめんね。あのかまってちゃんについては、とりあえず全部スルーしているわ」
「セレーネ、『あなたに魂を揺さぶられた。これほどの衝撃は初めてだ。これこそ真実の愛にちがいない』だっけ?」
「ミラ・・・それは言わないでちょうだい・・・私があのかまってちゃんの前で魔力を暴走させかけただけよ・・・」
「セレーネさん大丈夫ですか?」
「クレアさん!心配してくれてありがとう・・・!」
文化祭の後から、かまってちゃんがあからさまな貢物を持ってくるようになった。
しかも、今みたいに、魔力検知でも避けられないような人がいっぱいいる場所を狙って。
「私がスルーしてればいいだけだし、あのかまってちゃんのことは放っておいて、勉強会のこと決めましょう」
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「それでは!これより第1回勉強会を始めます!」
「「「おー」」」
「声が小さい!もう一度!これより第1回勉強会を始めます!」
「「「おおーー!!!」」」
ノリノリのミラの号令に対して、頑張って答えた私とグレイスとクレアさん。
勉強会は女子寮のミラの部屋でやることになって、今こうして集まっている。
「それでは諸君!健闘を祈る!」
ミラの合図とともに黙々勉強タイムが始まった。
さっきの号令はなんだったのかと思うくらいの様変わりだ。
けれど、数分後にはグレイスがこの世の終わりのような顔をしだした。
「グレイス、大丈夫?」
「セレーネ、大丈夫じゃない。サンジュツイミフメイ」
グレイスが若干カタコトになってる。
これは想像以上にまずいかもしれない。
「算術のどのあたりが?」
「さぁ?何がわからないのかわからない」
これは!
「何がわからないのかわからない」、いきなり強敵が現れたぜ!
けど、僕は負けない!
この世界は魔法は発達している分、それ以外はそうでもない。
算術と言っても、地球でいうと数学ではなくて、算数くらいだった。
私でもなんとかなる。たぶん。
「グレイス、1+1は?」
「2」
「3+3は?」
「6」
足し算はいけるようね!
「5−2」
「3」
引き算もいけるようね!
さすがにグレイスをみくびっていたようね。反省しなきゃ。
「3×3は?」
「・・・6かな?」
・・・おっと?
「2×3は?」
「うーん、5か?」
おっと!
「グレイス、それは足し算・・・」
「・・・しまった!」
「掛け算は、同じ数を指定の数だけ足し合わせる計算よ」
「そうだったな・・・?」
「えーと、3×3なら3を3回たし合わせるから、3+3+3で9ね。2×3なら、2を3回たし合わせるから、2+2+2で6ね」
「そうだったな・・!なら、2×5は2を5回たすから、2+2+2+2+5で、えーと9か!」
最後の5はどこからきたのかなんとなくわかる。けど全部足しても9にならない。
えっ、どうしよう。9はわかんない・・・。
いえ、頑張れ私の頭!せっかく文化祭実行委員を通じて前より仲良くなったグレイスを見捨てるわけにはいかない!
そうだ!何かを説明する時は相手がイメージしやすいものに例えればいいんだっけ!
グレイスのイメージしやすいものってなんだろう・・・戦闘?
「グレイス、二刀流の剣士が3人います。剣は合計何本ある?」
「6だろう?」
おっ!
「2人組で模擬戦をすることになりました。5つの組ができた時、合計で何人いる?」
「10だろう?」
「正解!さっきグレイスが言ってた2×5も同じで10なの!」
「なるほど!」
「じゃ、30本の剣があります、5つの部隊に均等に分ける場合1つの部隊に剣は何本になりますか?」
「6!」
「割り算もいけたわ!グレイスは戦闘に変換すると大丈夫そうね」
「そうか!5人組の剣士が10組いて、それぞれに剣を3本ずつ渡したい場合は、5×10×3で150。逆に150本剣があって、6つの部隊に均等に配る場合は、150÷6で各部隊25本になる。もし二刀流の剣士だけで部隊を構成する場合は25÷2で1あまることになるから、この分け方はだめだな。とはいえこれで光が見えた!セレーネありがとう!」
「いえいえ!」
一気に文章題の計算までできるようになった!グレイス地頭は良いのよね!
その後、他の教科でもグレイスは苦戦した。ミラとクレアさんと一緒に、3人でグレイスの勉強をみる会になった。
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中間試験が終わり、結果が返ってくる日になった。
セレーネは見たところ、自分の結果よりもグレイスの結果の方が気になっている様子だ。
「3人ともありがとう!おかげで赤点は回避できた!みんなのおかげだ!私一人ではこの快挙は成し得なかったと思う!」
感極まったグレイスのこの報告を聞いた、勉強会組のセレーネ、ミラ、クレアさんはほっとした。
「セレーネちょっといい?」
「ミラどうしたの?」
ほっとしていたセレーネを連れ、ミラは空き教室に入り、防音の魔道具を起動した。
「えっ?防音の魔道具?」
「うん。セレーネに相談されてた件よ」
「あっ、あれね。それは確かに防音の魔道具があった方がいいかも。というか厄介ごと相談しちゃってごめん」
「いいわよ。国にも関わることだし。それで、水の都ヴェネの両替所の記録をラズウェル家で調べ直したところ、あの日の記録が書き換えられていたことがわかったわ」
「それは・・・」
「けど、事件から時間が空いてる上に、元から人の出入りが多い場所だから、犯人に繋がる証拠は見つけられなかったの。でも、その・・・あの日イオーゴが2人の取り巻きと一緒にヴェネに行っていたことがわかったわ。私たちが学園に帰ってきた時には正門にいたけど、お昼の前から正門にいた時間までのアリバイがないみたい・・・」
「そっか・・・」
「セレーネ・・・」
「心配してくれてありがとう。できる限り関わらないようにする」
「何かあったら力になるわ」
「そう言ってくれて嬉しい。・・・さて!暗い話はここまでにして寮に戻りましょう!クレアさんが中間試験の打ち上げとして紅茶を準備してくれるはずだし!」




