23:文化祭2日目(後編)
「セレーネ、落ち着いたか?」
「うん。さっきはごめんグレイス」
「いや構わない。あれはあいつが悪い」
グレイスのフォローが心に沁みるぜ!
気を取り直して見回りをしていた私たちの目線の先に、キョロキョロあたりを見渡している小さい女の子がいた。
「迷子かな?」
「かもしれないな」
私とグレイスは子供に近づいた。
「誰か探しているの?」
いい感じのお姉さんっぽく見えるように、私頑張った。
実際にそう見えたかの保証はしないけど!
「お兄ちゃんが見つからなくて・・・」
「そうなんだ。待ち合わせしているの?」
「違う・・・。パンを買ってくるから待ってて言ったたのに、目印の街灯に戻ったらお兄ちゃんがいなくなってた。だから、迷子になったお兄ちゃんを探してあげるの」
「そうだったんだ」
うーん、この学園内って結構街灯あるのよね。
「お兄ちゃんいなくなったのはどういう街灯?何か覚えてる?」
「大きなひまわりのついてた」
大きなひまわりはそんなに多くなかったかもしれない。順番に回れば見つかるかな?
「この学園には何個かひまわりの街灯があるの。お姉さんたちと一緒に行ってみる?」
「・・・うん」
2つ目の街灯に到着したところで、
「お兄ちゃん!迷子になってどうしたの!心配したよ!」
無事にお兄ちゃんが見つかったようだった。
ちゃんと合流できてよかったなと思ったけど、お兄ちゃんと呼ばれた人には見覚えがある。
「ダニエルさん・・・?」
文化祭実行委員会の副委員長のダイエルさんだった。
「セレーネさんとグレイスさん?・・・あーなるほど。その、妹が迷惑をかけたようですね。すいません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。仕事ですから」
「それでもありがとうございます。そうだ、2人ともそろそろシフトも終わりじゃないですか?せっかく文化祭ですし、少し早めにシフトを切り上げて回ってみたらどうですか?」
「いいんですか?」
「少しくらい大丈夫ですよ」
私はダニエルさんと妹さんと別れた。
そういえば、私の兄は元気にしているだろうか。
・・・あっ、手紙の返事結局書いてないや。まいっか。
「セレーネのおかげで助かった」
「グレイス、今まで静かだったけど、もしかして小さい子供苦手?」
「・・・ああ。なんて話しかければいいかわらないし、触ると壊れてしまいそうじゃないか」
「そこまで気にしなくてもいいと思うけど・・・」
私たちは、ダニエルさんのお言葉に甘えて、”実行委員会”と書かれた腕章を外して文化祭を回ることにした。
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「改めてみてると色々なお店や出し物があるわね。グレイスは気になるのあった?」
「あれとかどうだ?」
グレイスが指を指した先には、ピザを売っている露店があった。
「小腹が空いてたしちょうどいいわ」
「それはよかった」
グレイスが心なしかウキウキしている。
料理上手のミラの影響か、学園入学直後よりも食べ物に興味をもつようになっているようだった。
私はマルゲリータを1切れ、グレイスはカプリチューゼを1切れ頼んだ。
ピザを受け取ると、露天の近くにあったイスに座りながら食べることにした。
「おいしい」
「そうだな、セレーネ。生地はパリパリしていて、具材にもしっかりと下味がついている。具材の切り方も味が染み込みやすいようになっている。作り手の丁寧な仕事を感じる」
・・・私は「おいしい」の一言しか感想がなかったけど、グレイスは色々とわかったらしい。違いのわかる女グレイス。
ピザを食べ終えて、フラフラしていると、胡散臭い笑顔の男がニコニコしながら座っているのが目に入った。目の前にある机には水晶が置かれている。
「・・・カール君、何をしているの」
「文化祭実行委員とクラスの仕事はちゃんとしていますので安心してください。今はシフトの合間をぬって、占い同好会のお手伝いをしています。私は迷える子羊たちを導く聖職者ですから」
「そうですか」
そういえば、この学園って同好会とかクラブとかあったわね。文化祭実行員とクラスのことをやりつつも同好会の手伝いをするって、カールってこう見えて効率いいのよね・・・。
「せっかくですから、占っていきますか?恋愛運が人気ですよ?」
「そういうのいいから・・・」
「そうですか、それは残念です」
「私は残念じゃないわ。じゃもう行くわね」
カールの居場所から離れてさらに散策をしていると、アクセリーを売っている出店が目に入った。生産系の生徒かな?
「グレイス、ちょっとあのお店寄ってもいい?」
「ああ」
ちょっと気になった物が目に入ったのよね。
「すいません、手に持ってもいいですか?」
「壊さなければいいよー!」
「ありがとうございます」
私は太陽をモチーフにした髪飾りを手に持った。本物の宝石ではないと思うけど、キラッと白く光る宝石みたいな粒がアクセントになっている。
その髪飾りをグレイスに合わせてみる。
「急にどうしたセレーネ」
「グレイスの赤髪にこの髪飾りが似合うと思って!私の勘は正しかったようね!お姉さんこれください!」
「おっ、見る目あるね!それ自信作なんだ!」
私がグレイスに髪飾りをつけると、
「セレーネ」
「どうかした?」
「いや、えっと、その」
「好みじゃなかった?」
「そうじゃない。なんだ、今までアクセサリーはつけたことがなかったからどこか落ち着かない」
照れてるグレイス珍しい!
「何ニヤついている・・・というか私がもらってばかりでは悪いな。お姉さんこの黒い石のついた月の髪飾りを試してもいいか?」
「君も見る目あるね!太陽と月は対となる存在!わかってるね!くぅーにくいねー、このこのー!」
「いや、そういうわけで「しかもそれ、実はペアを意識したんだ。太陽の方は白い石で光をイメージ、月の方は黒い石で闇をイメージ、光と闇は表裏一体!私たちは一心同体ってか!くぅーにくいねー、このこのー!」
「いや、セレーネの黒髪に似合うと思っただけで、偶然で「そういうことにしておいてあげようじゃないか!ここは可愛い後輩の為にお姉さん一肌脱いじゃうよ!2人の今後を祝うためにそれはプレゼントしよう!ほら、もってけ泥棒!」
生産の系のお姉さんの勢いがそれはもう凄くて、アクセサリーは半ば強引にタダで譲られた。
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あの生産系のお姉さんのおかげで若干の疲労感がありつつも、グレイスと一緒にⅠ組の教室に戻った私を出迎えたのはミラだった。
「えいっ!」
なんか、出会い頭でいきなり私の口に食べ物が放り込まれた。
「ふぁひふぁひひ」
「えっなに?」
それで満足したような雰囲気のミラは、グレイスには普通にお皿に乗せた試作品を渡していた。
私にもお皿で渡して欲しかったけど、とりあえず飲み込もう。
チョコレーネを使った新作かな?おいしいわね。
・・・じゃなくて!
「なにするの」
「美味しかった?」
「えっ、それは美味しかったけど・・・」
「それならよかったわ!文化祭実行員として働き詰めのセレーネさんへの労いです!」
「お皿で欲しかったです」
「サプラーイズ!それと、セレーネが提案したガントチャートとクリティカルパスは王宮で試験的に導入することになりました!その前祝い!」
「えっ!ちょっと待って!なんで!?」
「クラスの出し物を一番円滑に準備できたのが、一年生ながらこのクラスだからです!王宮の”良い物は取り入れよう派閥”の目に留まったようね!おめでとう!」
ミラはくるっと回って、そのまま音楽喫茶の運営に行ってしまった。
いきなりことが大きくなってどうしようと考えていたら、ナワナワ震えたような声をかけられたので、顔を向けるとマリーさんがいた。
「な、なによ!その髪飾り!!!」
私とグレイスの髪飾りに気づいたマリーさんに、ハンカチを噛み締めるような顔で睨まれてしまった・・・
「半ば強制的に渡されたんです!」とマリーさんに言い訳してから音楽喫茶の運営に合流した。
文化祭の残り時間も少なくなってくると、Ⅰ組の音楽喫茶でもクロージング演奏が行われた。
オープニングと同様にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの三重奏だ。
こうして、私たちの文化祭は幕を閉じた。




