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15:事情聴取と文化祭の準備開始

「おおかた理解した。昨日の爆発事件の主犯はお前ということでいいな?フローリー子爵令嬢」

「はいぃぃぃぃ。そうです。すいませんすいませんすいません」


夜が明けた翌日、学校の事務も開いたということで事務室にきていた。自室に泊めてることもあって私もクレアさんに付き添っている。

学校の建物の管理担当者のところに相談に行ったら、生徒指導の先生もいた。爆発事件のこともすでに学園に広がっているみたいで、腕を組んで鬼のような形相をして待ち構えていらっしゃり、

今も頭にツノがあるかのような雰囲気を醸し出していらっしゃる。


「お前が共犯か?ケニルワース男爵令嬢?」


おっと!それは誤解だ!

私が口を開くより早く、クレアさんが説明してくれた。


「ち、違います!セレーネさんはあくまで私を泊めてくれただけで、爆発を起こしたのは私1人です!」

「そうか・・・胸を張って主張することではないとは思うが、単独犯として処理する。反省文は書くように。具体的な修理の話は建物の管理担当者に相談してくれ」

「あっはい!わかりました!」


クレアさんは背筋をピンと伸ばして、敬礼のような仕草をして返事をしていた。

それにしても、クレアさんが停学とか退学処分にならなくてよかった。奉仕活動とかもないし、寮の部屋を半壊させたのに、処罰が反省文だけなら結構軽いわよね・・・?


「ところで、フローリー。また魔法陣の研究をするつもりだろう?」


建物の管理担当者のところへ行こうとしていたクレアさんの肩がビクッとしていた。


それをみた生徒指導の先生はため息をつきつつ、

「はぁ、やはりそうか。また女子寮で爆発を起こされても困る。1年の秋学期とは言え特別に、生産コースの実験棟の使用許可を出す。あそこなら多少の爆発でも問題ないだろう。そこで実験してくれ」

「いいんですか!?」

「おい、なんでそんな嬉しそうなんだ?事故をおこしたこと反省しているのか?なんで生産系の学生には毎年必ずこういうタイプが現れるんだ・・・」


うん?もしかして、生産系の生徒ってこんな感じなの?処罰が反省文だけで軽いのも、前例が多いから・・・?


生産系コースの闇を見てしまった私は、ちょっと生徒指導の先生に同情してしまった。


ーーーーーーーーーーーーー


寮の部屋の修理の相談を終えた私たちは教室に向かった。


「部屋が直るまで1週間くらいらしいわね。クレアさん、それまで私の部屋に泊まっていいわよ」

「いいんですか?なんかすいません・・・」

「気にしないで。部屋のスペースがガラガラで寂しかったし、同級生とお泊まりなんて学生生活!って感じもするわ。それに、困った時はお互い様よ」


クレアさんの植物魔法は色々とできて、私の風魔法と合わせてアロマディフューザーみたいなこともできた。

別にそれに釣られたわけじゃない!ほんとだよ!



しばらく歩いて教室につくと、トーマス先生が話をしていた。

黒板に書かれていた内容を見ると、来月ある文化祭のことかな?


「やっときたか。クレア嬢、爆発が起こり得ることは寮ではやらないでくれ」

「は、はい!わかりましたっ!」

「はぁ、わかればいい。文化祭の話をしたいから席についてくれ」


えっ?軽くない?

この学園で爆発ってそんなに珍しいことじゃないの?えっ?


「どうした?セレーネ嬢?」

「いえなんでもありません!私も席につきます!」

「そうしてくれ」


私とクレアさんが席についたのを見計らって、トーマス先生が話を再開した。


「よし、それじゃ、改めて来月の文化祭について話すか。開催期間は2日、前日の準備に1日。普段は関係者以外に開放していない学園も、文化祭の日は一般のお客さんもいれる。クラスごとに出し物もあるぞ。2年生以降はコースに分かれるから専門色が強くなったり、個人出展もあるが、1年生のうちは色々な生徒がいるからクラスでまとまってお祭りっぽい感じの出し物が多いな。しかし!何をやるにしても、文化祭実行委員が必要になる。1年前半の秋学期はだいたいクラス委員が兼任することが多いが、どうする?」


トーマス先生は、クラス委員のレイ様とグレイスをチラッと見た。

レイ様が先に答えるようだ。


「せっかくなので、僕は誰かと一緒にやってみたいです。リチャード、どうだろう?」

「えっ俺!?」


リチャードと言われた男子生徒がいきなり名指しされて驚いている。よくレイ様と一緒にいる男子生徒よね?


「いやか?」

「レイ、別に嫌というわけではないけど、急すぎないか?こういうのは事前に俺に伝えておくものじゃないのか?」

「そこはほら、サプライズということで」

「はぁ・・・まぁいいよ、やるよ」

「よかった!」


リチャードはなんやかんや、やることを承諾していた。


「よーし、次は女子だな。グレイス嬢どうする?」

「私は事務が苦手なので誰かと一緒にやりたいですけど・・・一緒にやってくれる人がいるかどうか・・・」


グレイスはちらっと教室を見ていた。たぶん、入学直後に怖がれていたのを気にしているのだろう。今はそんなことないと思うけど・・・。

実際まんざらでもなさそうな雰囲気を出している女子がちらほらいる。


「先生」

「どうしたミラ嬢?」

「先生、グレイスさん。セレーネさんはどうですか?よく一緒にいるみたいですし、冒険者としても一緒に活動することもあるようで、連携も取れると思います」


「えっ私!?」


突然のミラからの推薦に驚いた。

こういうのは事前に伝えておくものじゃないの?


「ミラ嬢の推薦理由ももっともだな。確かセレーネ嬢は文官志望だったな?文化祭は事務仕事も多いだろうし、ちょうどいいんじゃないか?」


ぐはっ!先生からも援護射撃を受けてしまった。

けどグレイス次第じゃない?と思ってグレイスをみると、なかまになりたそうにこちらを見ている。


・・・グレイス本人がいいなら、


「わかりました。やります。グレイスよろしくね」

「ああ、頼む!」


グレイスが笑顔だ。普段クールだから、こう破壊力がある。

他の女子から反感を買わないかな?と思ってさっきまんざらでもなさそうな雰囲気を出していた女子をちらっとみると、無表情だった。怒った顔してたらどうしようかと思ったけど、よかったよかった。


「おし、文化祭委員も決まったことだしさっそく出し物を決めてくれ。文化祭委員の初仕事だ」


トーマス先生のこの言葉を受け、私たちは教室の前に移動した。

リチャードと目があったときに、うなづきあった。お互い急に指名された仲だ。仲良くなれそう。


「じゃせっかくだし、リチャードに仕切ってもらおうかな」

「えっ俺か!」

「僕はクラス委員だから普段からやってる」


レイ様からリチャード君がキラーパスを受け取っていた。

その目がチラッと私をみる。


「リチャード君、私も手伝います」

「セレーネさん、恩に着る」


「それじゃ、改めて。何か案がある人はいるか?」


リチャードのこの問いかけに、ミラが手を挙げていた。


「ミラさん、どうぞ」

「リチャード君ご指名ありがとう。喫茶店はどうですか?クレアさんが育ててる茶葉が美味しいんですよ。あれは絶対に流行ります」


「えっえっえっ、私!?」


いきなりの名指しにクレアさんが驚いている。

わかるわかる。びっくりするよね。

とりあえず、私は黒板に案を書いた。あくまで文化祭実行委員の仕事として板書しただけで、道連れを増やそうとか思ってないよ!ほんとだよ!



その後、他にも案が出て話し合いが行われたけど、最終的にミラの案が採用された。

試しにクレアさんの紅茶を出したら、一気に勝敗が決まった。

だって美味しいもん。


「それでは、Ⅰ組は喫茶店でいきます。よろしいですね?」


私がクラスを見渡すと、みんなうんうんと頷いている。

よかった決まったとホッとした瞬間、まさかの横槍がまさに真横から飛び出した。


「喫茶店に賛成だけど、せっかくだからジャズ喫茶はどうだろうか。幸いこのクラスには王国のピアノコンクールの優勝者がいる。ジャズも守備範囲内だったと思う」


メガネをくいっとしながらそうおっしゃったレイ様の目線の先にはミラがいる。

えっ?ミラってピアノコンクールの優勝者なの?確かに部屋にピアノはあったけど、貴族令嬢の嗜み程度だと思ってた・・・ガチの方だったんだ。


ミラ本人は、レイ様と目線が合うとぷいっと顔を背けた。

・・・えっ背けた?


「ミラどうだ?」


レイ様の問いに渋々といった様子のミラが、

「わかったやるわよ。ただ、ずっと弾くわけにもいかないなら、時間を決めたいわ。それとせっかくの文化祭だから、他にも演奏したい人がいたら一緒にやりましょう?」


ミラのこの提案に、クラスの一部がソワソワしだした。

言われてみれば、コンクールの優勝者と一緒に弾ける機会はそうそうないのか・・・!



最後に少しドタバタしたけれど、ジャズ以外にも色々な楽器を弾こうということで、最終的にⅠ組の出し物は音楽喫茶に決まった。演奏は1時間に1回行う。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その日の放課後。

王立第二学園内、とある目立たない部屋にミラとレイモンドがいた。


「ミラ、お前がこの部屋に呼び出すなんて珍しい」

「レイ君、それよりどういうことよ?」

「どういうことって?」

「文化祭のこと。なんで私に話をふったの?」

「僕は、成長しようとしている人にはその成果が認められる機会が与えられるべきだと思ってる。当然そこにはミラも入る。気付いていたから、あの時顔を背けたんじゃないのか?」

「はぁ、あたってるわよ。余計なお世話、と言いたいところだけど、そういうところ昔から変わってないわね」

「理解してくれて助かる」

「まぁ腐れ縁だしね」

「そこは幼馴染って言ってほしいな」

「ふふ、それはどうしようかな」

「はぁ、まぁいいか。音楽喫茶で他のクラスメイトと一緒に演奏する時も相手を引き立てるのか?」

「そのつもりよ。文化祭とはいえ誰かの目に留まってその生徒にチャンスが訪れるかもしれないじゃない?・・・何よ、その目。文句ある?」

「ない。ないけど、あっ、どこ行く?」

「3分以上2人きりにならないようにもう行くね」

「おっおう、そうか」


部屋から出ていくミラの背中を見送りながら、レイモンドは独り言のように呟いた。


「なぁ、ミラ。1人の学生として、純粋に学生生活を楽しんでもいいんじゃないか?僕はできる限りそうしてるぞ」


レイモンドのこの独り言がミラの耳に届いたのかどうかは定かではない。


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