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12:いざ、学園探検

「それでは!ただいまより学園探検を始めます!」


「「「お〜」」」


「3人とも声が小さい!はい、もう1回!ただいまより学園探検を始めます!!」


「「「おぉぉ〜!!!」」」


セレーネ、クレア、グレイスの目の前にはノリノリのミラがいて、学園探検を仕切っている。


なぜこうなっているのかというと話は少し遡り、昨日、セレーネたち3人が素材採取から戻って女子寮に着くとミラと会った。

そこでミラが、「私もみんなと一緒に遊びたい!」と言いだし、遊びではなくて冒険者稼業から帰ってきたところだと3人が説明した。

すると、ミラが「私は戦闘ができないから・・・、そうだ学校探検に行きましょう!」と言い出した。

そして翌日、つまり休日二日目の今日、学校を探検することになった。


「さぁ、行こう!」


私とクレアさんとグレイスの返事に満足したのか、ミラがノリノリで出発の合図をだした。

まぁ楽しそうだからいいんだけど・・・


「それでミラ、どこに行くの?」

「ふんふんふーん♪ふんふんふーん♪」


私への返事がない、ただのノリノリのようだ。


「ミラさーん」

「えっ何?セレーネ?」

「どこに行くの?」

「さぁ?」


さぁ?ですか。

マジすか先輩、気分っすか。

王立の学園だけあって結構広いよね、ここ。

散歩でも1日終わりかねないけど・・・


ちらっとクレアさんとグレイスを見ると、「なるようになるでしょ」みたいな表情をしていた。

私もそうしよう。


そして、ミラについていくこと数分。


「本学園の名所!噴水!」


旅行のツアーガイドさんみたいにミラが手を噴水に向けている。”ジャーン”みたいな効果音が聞こえそう。


「そこにベンチがあるので座りましょう!」


ミラに促されて、私とクレアさんとグレイスがベンチに座った。


「3人とも学園には慣れてきた?」


ミラがワクワクしたような様子で聞いてきた。

まずは私から答えよう。


「そうね。私の農家みたいな実家とは違って建物が立派だし、慣れないこともまだあるけど学べ得ることが多い。入学してよかったわ」

「セレーネの家は、水車の多い農耕地方の方だっけ?」

「だいたいそっちのほうね。チューリップと水車でも有名な王国第二の都市アムダムと、王都オラリアの中間よりも少し王都よりかな。けど王国の北西部って地域全体で水車が多いから、私の家から半日くらい北の方に行けばだいたいどこにも水車はあるわね」

「へー!そうなんだ!私は商業で栄えてる王国の南部からあまり出たことがないから、農業と酪農で栄えてる王国北部にも興味があるの。今度セレーネの家に遊びに行ってもいい?」

「そうなの?私の家周辺は、商業の南部と農業の北西部の間に挟まれてどっちつかずだけど、それでもいいなら歓迎するわ」


王都からは遠いしただの社交辞令かなー、と私が思っていると、ミラが今度はグレイスを見つめている。


「私はまだ馴染まないな。学業に打ち込む、というのがどうもピンとこない」

「フェレーラは戦闘一家だからね!でも、この学園ってご飯が美味しいし良いよね!」


あれ、ミラってグレイスがあのフェレーラって知ってたんだ・・・?


「そうだな。マーウデンと違って種類も豊富だし、凝った料理も多い。これだけでも入学した甲斐がある」


そうよね!ご飯美味しいよね!同意同意!

今日は休日だから学食がやってないのが非常に残念でならない!


「ふふ、それはよかったわ」


そして、ミラは今度はクレアさんを見つめた。

膝の上に肘をつき、手に頭を乗せて、少し頭を斜めにしている。

やる人によってただのあざとい仕草になるんだろうけど、ミラがやるとかわいい。


「わ、わたしは、人がいっぱいいてまだちょっと慣れてませんけど、図書館は落ち着きます」

「クレアは本の虫ね!」


ミラが発した虫という単語に私の脳裏にちょっと嫌なものが横切りかけた。

違う!違う!関係ない!


「クレアは植物魔法だっけ?この学園には植物園もあるけど、行ったことある?」

「あれ、ミラさんって私が植物魔法って知ってたんですね。図書館ばかりで、植物園はまだ行ったことありません」

「それはそうよ、一応人付き合いの多い伯爵令嬢だからクラスメートのプロフィールは覚えているわ。それより、せっかくだし今から植物園に行きましょう!」


ミラは真面目だなぁ、私も名目上は貴族令嬢だけど全然覚えてないやー、と思いながら歩くこと数分。

私たちは植物園に着いた。


「ミラさん!みてください!この植物!貴重なものなのにこんなにある!状態もいいですよ!」

「そうなの?見た目もいいわね!お部屋に飾ろうかしら?」


ミラとクレアさんは植物を見ながらキャッキャうふふしていた。


一方、私とグレイスはというと。

「これ食べられるかな?」

「ふむ、毒はないと思うぞ」


半分農家の私と、防衛都市で育ったグレイスは、非常食になるかどうかが気になってしまった。


さらに植物園内部を散策していると、神秘的でありつつも強者感を漂わせた人物とひまわりが描かれている綺麗なステンドグラスに行き着いた。


「勇者様の肖像画ってところどころにあるわね。テチス海大戦を終わらせた立役者とされているから、それも当然かしら」

「どれだけ強かったのだろうか。私はぜひ手合わせを願いたい」


グレイスのその好戦的な様子に、私は思わず苦笑いしつつも、植物園散策を楽しんだ。


ーーーーーーーーーー


植物園の次は、学園にある広い芝生のエリアに到着した。

ミラプレゼンツ学校探検は、勢いよく色々な場所を回るようだ。


「それではセレーネ嬢、例のものを」


ミラが悪代官みたいな感じで、私に声をかけてきた。

例のものというと出発前に渡されたやつかな?

中身知らないけどとりあえず預かっていた。


「取り出すからちょっと待って」

「ほっほっほ、お主も悪よのう。袖の下からアレを取り出すおつもりか」


いや、袖の下じゃなくて収納魔法なんだけど・・・

クレアさんとグレイスの顔にも?マークが浮かんじゃってる。


「はいこれ。ところでこの箱って何が入ってるの?」


収納魔法から2つの箱を取り出してミラに手渡すと「ありがとう」といい、笑顔のミラはそのまま箱を開けた。


「中身はなんと、芝生の上に敷く布です!」


箱の中にまるまって入っていたレジャーシートみたいな大きな布をミラが広げた。

絵柄とか綺麗だけど、・・・その、お高そう。さすが伯爵家。


「さて、もう一つの箱の中には、私お手製のサンドイッチが入ってます!ピクニックしましょう!」

「えっ、ミラって料理できたの?貴族ってあまり自分で料理しないんじゃない?それも伯爵家のご令嬢なのに」


ミラは指をチッチッチみたいに振りながら、

「ふっふっふ、セレーネさん。料理のできない伯爵令嬢は、ただの伯爵令嬢です」


「そ、そう・・・?」

「そうなんです!それより食べてみてください」


促されるままにサンドイッチを口に運んで、パクッと一口。

「美味しい!」

「そうでしょう!そうでしょう!」


若干ドヤ顔のミラ。けど、実際問題本当に美味しい。

素材がいいのももちろんあるんだろうけど、そうだとしても素材の目利きも求められるだろうし、その素材をしっかり活かしている、ような気がする・・・?

えーと、つまり、ミラの料理の実力があってこそ!

これ以上は私の舌ではわからないけど、細かい技も活かされてそう。たぶん。


「これは美味しいな」

「グレイスも気に入ってくれた?」

「ああ」


ミラが笑顔だ。


「ほんとに美味しいですね!」

「クレアもありがとう!」


ミラが笑顔だ!



私たちがピクニックを楽しんでいると、遠くに見覚えがある女性が歩いてるのが見えた。

半分農家と公言している私でも一応は貴族の男爵家である。さすがに、自国の王族の顔は覚えている。


「アナスタシア王女殿下?」


ミラも私の目線の先を追ってから反応した。


「あら、本当ね。一緒にいるのは専属メイドのようね」


クラス初顔合わせの時に、トーマス先生が他の学年には王族がいると言っていたけど、2年生のアナスタシア王女のことよね。


「王族なのに第一学園じゃなくて、第二学園にいるのは不思議ね」

「王族にも色々とあるんじゃない?」

「それもそっか」


王族の裏事情とか厄介そうで話題にしたくないので、軽く流すことにした。


「セレーネ、厄介な気配を感じる」


グレイスが王女殿下とは別の方向を見てつぶやいた。

クレアさんもぴくっと反応して、私の魔力検知にも引っかかった。

まだ結構遠くにいるみたい。


「グレイス、見える?誰かわかる?」

「おそらく、イオーゴじゃないか?マントに・・・110?と書いてあるぞ?どういう意味だ?」


さすがグレイス、目がいい。

いや、今はそれよりも。


「110?さぁ?それより、あのかまってちゃんか・・・」

「しかもこちらに近づいてきている。取り巻き?に何か持たせているようだが手間取っているようだな」

「うげぇ」


私が思わず変な声を出してしまったところで、ミラが”パンッ”と両手を合わせて提案してきた。


「手間取っている間に、厄介な虫さんが入ってこれない女の秘密の園に逃げこみましょう!」


そう言うやいなや、ミラがピクニック道具をテキパキと片付けて、私の収納魔法に仕舞い込んだ。そして私たちは急いでその場を後にした。

この間30秒弱、当社比で華麗な撤収劇だった。


ーーーーーーーーーー


「さて!こちらが我が王立学園が誇るテルマエです!」


芝生から移動し、ミラが示す先、私たちの目の前には、テルマエつまり温泉浴場があった。非常にありがたいことに、ビネンツェ王国はテルマエ文化が発達している。元日本人としてはこれはありがたい。


「テルマエとは考えたわね。さすがミラ」

「ありがとうセレーネ」

「女湯には、男子に対して覗き見と侵入防止魔法があるんだっけ?」

「そうね。もしも強行したら、男の子のアレが使い物にならなくなるわね」


貴族令嬢は貞操感が強いから、実力重視で対外的には爵位が関係ないことになっている第二学園とはいえ、その辺は厳しいらしい。

それにしても、世の中色々な魔法だあるんだなぁと思う。


その後、私たちはテルマエでのんびりと過ごした。寮の自室にシャワーはあるとはいえ、やはり温泉は違う。

個室の浴槽もあったのでそこを借りて、クレアさんの植物魔法でハーブ湯にしてもらったり最高だった。


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