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「竹羽さん!なにしているんですか」
勇斗はそう声を荒げるが、竹羽は聞こえてないのか奇声を上げながら手当たり次第に炎を撃ってきた。
魔導銃を撃つ暇もないほどの猛攻に勇斗は回避に徹するしかなかった。
「どうするか・・」
避けながら勇斗は考えていたがその隙が自身のピンチを招いた。避けることもできないほどの連射。大けがを防ぐために防御姿勢を取ったその瞬間
「エルデ ヴァンド《大地の壁》」
その声と共に勇斗の目の前に土の防壁か現れ、当たりそうになっていた魔法を防いだ。
目の前で起こったことに驚いていると
「大変そうだな!手かしてやろーか?」
と上から男の声が聞こえた。
上を向くと現場検証を行っていた時に現れたあの男が宙に浮きながらこちらを見ていた
「あなたは一体・・」
その男はゆっくりと空から降りてくると勇斗に笑顔を向けながら
「おっ!あん時の兄ちゃんか。災難だったな」
と言った。
降りてきた男は竹羽の攻撃を防ぎながら
「こいつ滅茶苦茶だな。詠唱破棄に魔力切れの気配も無し、威力も初めより徐々に上がってきてるな」
と一人で分析をしていた。
呆然としている勇斗に男は
「攻撃はこっちで防いでやるから兄ちゃんがそれで拘束してくれや」
と魔導銃を見ながら勇斗に指示した。
そう言われた勇斗は、頷きながら魔導銃の弾丸を雷魔法の拘束弾に変更した。そして装填し終わると暴れ回る竹羽に照準を合わせた。
しかし、まるでマシンガンのように放たれる炎魔法のせいでなかなか撃つ事が出来ない。
いや、そうではない。同じ場所で働いていた仲間に撃つ事が出来ないのだ。
震える勇斗に気が付いた男は低く冷たい声で言った。
「やれ・・。お前はこいつも市民も失いたいのか・・できないなら邪魔だ。今すぐこの場から失せろ」
その言葉が勇斗の背中を押した。口を固く結び、悔しさを滲ませながらその引き金を引いた。
パァン
乾いた音とともに放たれた弾丸は、絶え間なく打たれる炎の僅かな隙間を通り竹羽の腹部へと当たった。
その瞬間、竹羽に電撃が走りさる。その後その場に倒れこんだ。
勇斗はゆっくりと竹羽に近づくとポケットから拘束具を取り出した。
「竹羽晴人、魔法使用違反で拘束する」
竹羽からの返事はない。意識がないのか、電撃のせいで声を出せないのかは分からないがただただ無言であった。
その姿を見て自身の無力を感じた勇斗。悔しさからだろうか、涙が溢れている。
今はやるべきことがある。
そう思いながら口を強く結び、涙を流しながら両手に拘束具をかけた。
応援を呼び、一息ついたのは朝日が昇りだした後だった。