新婚の初夜に妻は「あなたはその愛を諦めることなんて・・・ないっ!」と言った。僕は思った「それ妹の夢小説の話だよ・・・」
新婚の初夜、僕レイモンドが夫婦の寝室に向かうと、妻となったリリシアがベッドに腰掛けて待っていた。
疲れたのか、ぼーっとしているようだった。
僕は、テーブルにあるポットからお茶を注ぐと、妻に渡して、ベットに腰掛けていった。
「お茶どうぞ、疲れたね」
「結婚式ってこんなに大変なのね・・・」
お茶を飲む音が聞こえた。
僕たちの結婚は、公爵家である僕の家と、同じく公爵家である彼女の家との間の結びつきを強めるための政略結婚だった。ただ、僕たちは幼馴染でもあったので、よく一緒に遊ぶ仲だった。
だから、なんていうかリリシアは僕にとって。妹のような姉のようなそんな人だった。女性として意識したことはなかったけど、彼女のことは家族として好きだった。だから、彼女と結婚できたことは不満ではない。むしろ満足している。そう考えたところで、ふと思った。彼女にそのことを伝えたことがあっただろうか?と。
「あったかいわ。ありがとう」
「どういたしまして」
そうして、しばらく無言の時間が続いたあと、僕はリリシアの方を向いて伝えることにした。
「リリシア、僕は」
「ううん、言わないで。わかっているから」そういうと、彼女は立ち上がりこちらを向くとちょっと寂しげな顔をした。
「あなたにとって、この結婚が不本意なものだった知ってるの。あなたに真実の愛を知っているから」
突然のことに驚く僕。自慢ではないが、婚約者がいるのに浮気をしたことはないし、他に愛する人がいるということもない。
「えっ、どういうこと。確かにまだリリシアとはこれから愛を育んでいかないといけないと思っていたけど、他に愛する人がいるということはないよ」
「隠さなくても良いわ。大丈夫、私は理解のある女。あなたたちを邪魔するつもりはないの。私、あなたの姉のような気持ちもあるから名目だけの妻でも良いの。だから・・・、あなたはその愛を諦めることなんて・・・ないっ!」両手を広げて、私かっこいい的なポーズをとるリリシア。なぜかわからないけど、かっこいポーズなのに、彼女が泣いているように見えた。
唖然としていた僕が、ふと周りを見ると、本が目に止まった。
「あ、これは」
「そう、それはあなたの愛を綴った本。私は、妹さんからそれをもらって気がついたの」
それを聞いて、僕は思い出した。
妹は、作家として活躍しており、色々な物語を出版していた。
ただ、いつも主人公の名前がレイモンドだった。妹になぜ主人公の名前をレイモンドにしているのかを聞くと「う〜ん・・・なんていうのかしら。兄様って結構きちんとしているじゃない?そのイメージが私の中にあるから、敢えて兄様と同じ名前の人がトラブルに巻き込まれたりするのをイメージすると書きやすいのよ」
とのことだった
まさかと思って、本の題名を見てみると、
「レイモンド真実の愛に気が付く」とあった。
僕は、妹め!!と少し思いながら言った
「リリシア、この本のレイモンドという人物と僕は別人なんだ。僕にはそんな人はいない」
すると、リリシアは、カバンから『レイモンドとドラゴン』という本を取り出した
「え。でもレイモンドはこの本に書かれているように、ドラゴンを倒しましたよね?」
「確かに、僕はドラゴンを倒した」
「ほら、そうじゃないですか」
「でも、偶然だよ。」
すると、リリシアは、カバンからさらに本を取り出した。
『レイモンド、魔王を倒す』『レイモンド、新魔法を開発する』『レイモンド空の国を発見する』
「レイモンドは、魔王を倒しましたし、新魔法も開発しましたし、空の国も発見しましたよね?」
「確かに、僕はそれらを成した」
「ほら・・・」
「でもちょっと違うんだ。僕がそれを成し遂げたのは、本が出版された後なんだ」
そう、妹が本を出版した後、なぜか本の内容に似たトラブルに巻き込まれることが多いのだ。
「そうなの?」リリシアは疑わしげな目をしていた。
「そうなんだよ。もしかすると先祖の聖女の能力で未来が見えてしまっているのかもって、家族の中で話したこともあるよ。本当に偶然だと思うけど」
「そうなんだ。ちょっと安心したわ」と息を吐くリリシアだったが、はっと気がついて顔を上げた
「待って。今までがそうだったとしたなら、尚更、ダメじゃない。これからレイモンドは真実の愛に気が付くのでしょう?私と結婚してしまってごめんなさい」
「違うんだ。僕は、君以外を愛することなんてないよ。リリシアと一緒にいるのが自然だったから、君が結婚してどこかにいってしまうのが怖かったんだ。だから、僕は君と結婚できて幸せなんだ」
そういうと、リリシアも笑っていった。
「私もレイモンドと結婚できて幸せよ。でもだからこそ気になってしまうの・・・」
と本をみるリリシア
「そういえば、本の中身を見たの?」
「ううん、レイモンドが他の人の真実の愛に目覚めるところを見たくなかったから、まだ読んでないわ」
「せっかくだから読んでみない?僕がどんな真実の愛に目覚めることになっているのかみて、そんなことないよっていうから!」
「う〜ん・・・。そこまでいうなら・・・」しぶしぶリリシアは本を広げてくれた。
本を読むとそこにはこんなことが書かれていた
『僕は、幼馴染のリリシアのことが家族のように大好きだった。それが真実の愛だと気が付くには少しだけ時間がかかったけど、僕にはリリシアがいない世界は想像できないと思ったんだ。・・・』
そこまで読んで、パッと顔を上げると、リリシアと目が合った。
「もしかして・・・」
続きを言おうとするリリシアの口に指を当てて閉じさせると僕は言った。
「本になんて書いてあるかは重要じゃないんだ。これは予言書ではないから。でもなんとなく・・・だけど、もう少しで真実の愛に気がつきそうな気がしたんだ」
すると、リリシアは目を見開いた後、笑っていった
「偶然ね。私もそんな気がしたの」




