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拝んでいたら推しが壁から出てきたので共に暮らします  作者: 花倉きいろ
第1章 推しとの暮らし
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推しも人間?

高瀬くんと暮らし始めて数日が経った。


 二人の生活基盤として、高瀬くんは夢乃より早く起き、ランニングに行く。

 夢乃が身支度を終える頃には、彼得意の卵料理が待っている。申し訳ないと何度も訴えたが、宿と諸々の恩には足りないほどだと押し通された。意外と頑固なのだと知った。


 夢乃が出社している間は、自主練に勤しんでいるらしい。といっても、素振りと筋トレぐらいしかできないだろう。

 

(このままではいけない、何とかしなければ)

 

 ここ数日は、高瀬くんのこっちでの暮らしを形にするのに精一杯で、手がかりを探す余裕がなかった。

 せめてジムだけでも契約しなければ、さすがの高瀬くんでも劣化は否めないだろう。

 

(こんなことなら、有給残しとくんだったな……)

『闘魂』のアフレコイベント等に費やした休暇を、少し悔やみながら過ごしていた。


 ◇

 

 そんなこんなで、高瀬くんが現れて一週間が経った。

けれど、推しとの暮らしは想像していた甘いことばかりではなかった。


 というのも、気が抜けないのだ。

寝る直前までメイクは落とせず、ランニングから帰ってくる彼よりも早起きして身なりを整えるのは、見目にこだわりの少ない夢乃にはなかなかの試練である。


 もちろんノーブラで過ごしたり、お風呂上がりにラッパ飲みしたりなどはご法度。

 未だに彼が背後から現れると驚いて、死にかけの魚のように口をぱくぱくとさせてしまう。

 連日のソファー寝も身体の限界が来ていた。


 推し(神様)を拝めて有難い気持ちと、正直疲れるという気持ちが混在する中で、高瀬くんはというと、とてもリラックスしていた。


 初日から家では前髪をゴムで結び、ちょんまげにした彼は、家具や小物の位置も素早く覚え、今ではリモコン片手にしょっちゅうテレビを見ている。順応性もここまで高いと驚きを隠せない。


「高瀬くん? 風邪ひくよ」


 そんな高瀬くんからすぅ、と寝息が聞こえてきて、声をかけながらベッドに近づく。寝顔を見たいという邪な気持ちがあったことは否定できない。


 高瀬くんは猫がよくする、頭と足だけ右側に寄せ両手を上に伸ばすという、バナナのような独特なポーズで眠っていた。口元は大きく開かれている。


「ぷっ……」


 よく人の家でここまでリラックスできるものだ。野球部の寮で共同生活に慣れているのもあるのだろうか。


(人間、なんだなあ)


 自分が神と崇めていたキャラクターの意外な一面に、自分ももう少し力を抜いていいのかもしれない、と夢乃は心の中でほっとするのだった。

 

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