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隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。  作者: しろねこ。
第三章 新たな戦の序章

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第65話 心境の変化

 イシスはギルナスの失った指を見てため息をついた。


「ごめんなさい、私が弱いばかりに」


「お嬢様のせいではありません、お気になさらずに」

 そうは言うものの、利き手の怪我は戦士として致命傷だ、今後を考えると憂いが出てしまう。


「私が力を出し惜しみしなければ……」

 自身の両手を見つめ、イシスは悔いる。


 変なプライドを捨てて、一緒に戦えばまた違った結果だったかもしれない。


「いいのです、あなた様は無理に戦う事をしなくていい」

 そっとギルナスがイシスを包み込むようにして抱きしめる。


 父のような、兄のような存在にイシスは何度救われた事だろうか。


「失った指についてはグレム医師に相談します」

 そう言ってギルナスはイシスから離れ、頭を下げる。


 小さい頃から面倒を見ていたイシスにこれ以上心労をかける訳にはいかない。


 ギルナスとしては自分の不注意で怪我をしたのだから、あまり気に病まないで欲しかった。


 何とかしなくては。






 一人になったイシスは自室に戻り、前髪をかき分ける。


 金色の目がそこにはあった。魔力が特別高い証なのだが、それでも失った部分は治せない。


「私にもっと力があれば……!」

 帝国の為、皇帝の為など口にするが、実はどうでもいい。


 だが、イシスはそれ以外の生き方を知らない。


 小さい頃から魔力の高さを買われ、こうして戦士たちの回復役となった。今でこそギルナス専属のようになり負担が減ったが、それまでは引っ張りだこで常に疲れ、荒んでいた。


 それでも支えてくれる存在は大きく、いつしかギルナスしか信用できなくなっていた。


 父からの愛情はなく、母の顔も知らない。二人の兄は常に歪みあって王位争いをしてるし、女のイシスには興味も持たれなかった。


 家族の無関心がイシスを孤独な皇女にさせてしまった。


 呼び鈴を鳴らし、侍女を呼ぶ。着替えの手伝い、そして入浴をお願いした。皆無言で淡々と行うが、侍女はずっと緊迫した様子である。


(そりゃあお父様が怖いものね。皇女の私に何かしたら、何かされてしまうって思うかもしれないわ)

 皇子二人も横暴だし、皇女であるイシスも同類だと思われている。


 特に酷いことをした記憶はないのだが、失態を犯した侍女は次からは来なくなるのをイシスもわかっていた。


 ぼんやりとしてると体を洗われ、服を着せられ、その間に食事が用意されていた。温かく湯気の立つ食事、こういう気遣いは有り難い。


 けれど一人で食べる料理は何を出されても味気なく、時折家族というものを考えさせられる。


 特に今日はあの、第三王子と相対したからだ。


 真面目そうな見た目であった。なのに軽々しく愛を語り、戦いの最中、それも皆が見てる前での口づけ。


 イシスの常識とはかけ離れていた。なのに、目が離せなく、からかうようにこちらを見るリオンの顔は何とも子どもらしくて大人びていた。


「あれが世の夫婦の姿なの?」

 あんなにも寄り添い、笑顔を向けるのが愛なのか。


 今頃リオンは、あのマオという王女と一緒にいて、こうして食事をしているのだろうか。どんな顔で、どんな話をしながらいるのだろう。


 イシスは気になり過ぎて、食事も手につかなくなっていた。


 いつしかリオンの事を考えない日がないくらいに。






 マオもウィグルと共に部屋でゴロゴロしながらリオンを待つ。


 すぐに眠れるかとも思ったが眠れず、仕方無しにリオンが来るまでとウィグルをへやに招き入れた。


 ソファの上で座っているウィグルは流石にソワソワしている。


「リラックスでいいですよ、まだ来ないと思うです」

 ベッド上で大の字になるマオだが、ウィグルは頑なに姿勢を崩さない。


「マオ様、僕は護衛騎士ですが、男です。部屋に招き入れるなんて、本当は駄目ですからね」

 そうやって言うウィグルだが、座れるのは嬉しい。


 初めての出張、そしてこんな修羅場に内心ヘトヘトだ。


「ぼくが良いと言ったら良いのです。それに男じゃないですよね?」

 マオの言葉にウィグルは跳ね上がる。


「何をおっしゃいますか! 僕は正真正銘の男です!」

 ウィグルは心外だとばかりに大声を上げ、立ち上がった。


 顔を真っ赤にし、握った拳を震わせている。


「落ち着くですよ、それに女性の方がリオン様も喜ぶと思いますが」


「えっ?」


「リオン様に関わらず、本当は女性の護衛騎士を探してるです。ただし、腕前と信用と、そして危険故に志願するものがいなくて断念してるですが」


「王族の方は、本当は女性好きなのですか?」

 恐る恐るそう聞くウィグルに、首を横に振った。


 あんなにも愛妻家にしか見えないのに。


「いや、妻の側に男を置きたくないという理由だそうですよ」

 ウィグルは若干悲しそうな表情になった。


(憧れが好意になったのですかね)

 少し同情する。


 好きな人が別な女性を見ているところを間近で見るなんて、心中穏やかではないだろう。


(何であれがモテるかわからないですね)

 見た目はいい、頭もいい、ただ性格が歪んでる。


 しかし、マオ以外の前ではそういうものをあまり表に出さない。


(愛想もいいから、きっと騙されるですね)

 ウィグルを応援することは出来ないが、励ますくらいはしてあげよう。






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