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隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。  作者: しろねこ。
第三章 新たな戦の序章

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第51話 帝国との敵対

「いやいや、嘘でしょ?!」

 街中を駆けるオスカーは、まさかの事態にさすがに命の危機を感じる。


 街のものも同じように虚ろな目をしているのだ。その中にはアドガルムから寄越された兵も混じっている。レナンは仕方ないにしろ騎士団すら震えていた。


(いや、この状況では無理もない)

 とにかく静かに通り過ぎなくてはならないが、この緊迫感は半端ない。認識阻害で見えなくとも、触れられたら終わりだ。


 慎重に歩くが、この人の多さだ。どうしても避けきれない。


「うわぁ!」

 ついに気づかれてしまい、オスカーが防御壁を張る。


「固まれ! けして離れるな!」

 馬で駆け抜けるには人が多すぎる。防御壁と、そして木の壁を作り、耐え凌ごうとする。


 ニコラとの通信は先程からずっと繋いでいるが、風の音しかしない。


「レナン様とラフィアを中心にし、陣形を取れ! 俺の魔力がどこまで持つかわからん!」

 数の暴力と、そして痛みを感じないのか素手で木を引き剥がしにかかっている。


 血塗れになろうが、爪が剥がれようが、凄い力で木に指を突き刺し、かきわけている。


「どんなホラー映像だ! パルスの街中でこんな目に合うとは思ってなかった」

 指が使えないならばと歯で木を食い千切る様はまさにホラーだ。


 オスカーは剣を握り、可能な限り魔力を放出した。街中では緑も少なく、オスカーの魔力も王城にてかなり使われ、残り少ない。


 何本も魔力回復薬を飲んだが、さすがにヘトヘトだ。


「甘過ぎて気持ち悪い……」

 セシルに調合してもらった薬だが、味が良いのはいいが、何本も飲むものではないなと、舌を出す。


 今度別味をお願いしよう。


 剣を握るオスカーの手が震えてきた。魔力切れが近いが、このまま倒れる訳にはいかない。


「オスカー……」

 心配そうなレナンの声に、オスカーは笑顔を見せる。


「大丈夫ですわ、レナン様。貴女だけは何があっても守ります」

 それが自分の役割だ。


 置いてきてしまったキュアに託された大事な役割、オスカーは両手で剣を握りしめる。


 魔力がなくなろうが体が動く限りは死力を尽くす。ついには防御壁のみとなった。


 もはやダメかと思ったその時に、

「何があった」

 空から降ってきた声は今一番聞きたかったものだ。







 エリックは動揺を隠せない。


 充分に戦力を持たせ、パルスには行かせたはずだ。


 それがまさか街中で大勢の民に襲われてるとは思わなかった。ただ、民の様子がおかしいのはすぐにわかる。


 ニコラが風魔法で民たちをレナン達から引き剥がし、エリックの氷壁で行く手を阻む。


「エリック様、キュアが大変なんです!」

 泣きじゃくるレナンを抱きしめ、オスカーの報告に愕然とした。


(ついて来れば良かった)

 公務など後回しにすれば良かった。


 こんなことになるならば、帝国の使者など相手にせず、レナンの側にいるべきであったと後悔する。


 何かあってもキュアとオスカーであれば事足りると慢心していた。


「急ぎキュアを助けにいく」

 大事な家臣だ、助けるは主の務めだ。


 しかし、帝国の者とは。


 本当かどうかはまだ会っていないからわからないが、そう名乗るのならば可能性は高いだろう。湧き上がる怒りは抑えられない。


 レナンを先にアドガルムに送り返そうかと思ったが、適任者がいない。何が起きてるのか分からぬ今、離れることも心配だ。


「オスカー、レナンは任せたぞ。俺は先にキュアの様子を見に行くが、こいつらと共にパルスの王城についてこい。ニコラが先導し、お前らを守るから安心しろ」

 兵を分散するよりも、一緒の方が安心だ。


 何かあれば自分も引き返し、レナンだけでも守る。


「わかりました!」

 オスカーの魔力切れを見て、ニコラが魔力回復薬を渡す。


「いや、これもう味に飽きちゃって」

 下手すれば口から出そうだ。


「飲みなさい。その体たらくでレナン様を守れるとでも?」

 ニコラの圧で涙目になりながら飲み干した。


 エリックのグリフォンが空を駆ける。見下ろす街並みにはまだ蠢く人々がおり、その中にはアドガルム兵も混じっていた。


「殺すわけには行かないな」

 王城までの道筋を作るように、強大な氷壁を作った。


 時には人を巻き込み、動きを封じておく。





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