第41話 刺客
「面白い国だね、アドガルムって。まさかあれを凌いじゃうなんてさ」
スペードのイヤリングをした少年がニヤリと不敵に笑う、白に近い金髪と、白い肌、目は血のように赤い。
「本当ね。しかも死者も少なかったし。収穫が少なくてガッカリだわ」
ダイヤの形をした宝石を幾重も身に纏った背の高い美女が微笑む、紫の髪に褐色の肌をしたエキゾチックな美貌を持つ女性だ。
「思ったよりも被害も少ないらしい、そうなるとこちらの手間が増えるのか」
ムスッと不機嫌そうにするのは柄にクラブの形が刻まれたメイスを手に持つ大男で、緑の短髪と灰色の目をしていた。
指には幾つものクラブを模した指輪をはめている。
「まだ戦は続くのね……あの時に諦めていれば楽だったのに、可哀想」
ハートの宝石がついたクロスを大事にもつ少女が悲しそうに言う、桜色の長い前髪で目は覆われており、肌は白く体躯は小さく儚げな印象だ。
戦士達はただ己が責務を考える。
「今度は僕たちがしっかりと殺せばいい、無駄なあがきをしたって事を後悔すればいいよ」
魔法騎士のダミアンは複数の剣をクルクルとジャグリングのように振り回している。
剣は空に吸い込まれるように現れては消えていた。
「そうね、新鮮な魂を手に入れられればあたしも嬉しいわ。やっぱり直接戦場にいたほうが捗るしね」
死霊術師のルビアは魂を閉じ込めている数々の魔石を身にまとい、キラキラと輝いていた。
これらは魔力の増幅、そして人心を惑わすために必要なものだ。
「さて何としたものか。どうすれば効率よく殺せるかだな、面倒くさいのはゴメンだ」
大きなメイスを持つ戦士ギルナスは筋肉を膨張させ、言葉とは裏腹に戦いにワクワクしていた。
思う存分暴れたくて仕方ない。
「倒した国を属国にし、その証として政略結婚したそうね。そんな偽りの絆と愛なんて……脆そう」
賢者イシスはもじもじと髪をイジる、表情は見えないが呆れているようだ。
戦いどことか全てに興味がない。
「アドガルムなんて小国がまさか三国を退けるとは、いまだに信じられないよ」
ダミアンは不思議な顔だ。
ヴァルファル帝国が使った夢渡りの秘術。
あたかも神の啓示のように振る舞って三国の王を唆し、偽の情報を流し、けしかけ、アドガルムを滅ぼそうとしたのに。
「以外としぶといのね。でもあれだけ戦ったのだから、暫くは力を取り戻せないでしょ。そうしたら今度こそいっぱい魂取れそう」
ルビアは死霊術師として、その光景を想像しわくわくする。
魂に対する攻撃を防御を出来るものは少なく、脆い魂や精神に干渉することが出来るルビアは帝国の貴重な術師だ。
「油断はするな。戦は最後まで何が起きるかわからない」
重いメイスを軽々と持ちギルナスはふぅっとため息をついて、昂る気持ちを押さえようとする。
数々の兵士を退けたという第二王子ティタンの話を聞き、今から戦うのが楽しみだ。
「どうせ皆死んじゃうのに。皇帝陛下に逆らうのは許されないわ」
ぎゅっと杖を握りイシスは小声で呟いた。
皇女の末席にいる彼女にとっては、皇帝の命令に逆らうことも疑問を持つことも許されていない。
帝国の皇帝バルトロスは恐ろしい男だ。
目的の為なら家族すら駒にする、大国を治めるものとして容赦ない。
側近として動いている第一皇子アシュバンも第二皇子シェルダムもそのような者だ。
どちらが次の皇帝になるか、注目は集まっているようだが、いまだ決定打はなかった。
協力し合うように見えて、本心はお互いを蹴落とそうと余念がない。
皇帝に仕える四人の戦士にとって後継者問題はどうでもいい事だった、皇帝にしか仕える気はしないし、興味はない。
今は命令通りにアドガルムを墜とすことに事に全力を尽くさなければいけない。




