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隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。  作者: しろねこ。
第二章 それぞれの愛情と愛し方

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第39話 夫婦の時間(ティタンとミューズ)

「お待ちしておりました」

 高鳴る鼓動を押さえ、ミューズは極力声を押さえ、迎え入れる。


 ティタンは部屋には入るものの、ミューズに近づこうとはしない。


「こんな時でも君はとても真面目なんだな」

 ティタンは少し寂しそうに笑う。


 受け入れる言葉、そして受け入れる夜着を纏っているというのに、ティタンは虚しくなった。


「真面目、ですか?」

 何かおかしかっただろうか。


 チェルシーは自信を持って送り出してくれたし、自分でも可愛く仕上がっていると思っている。


 可愛らしいレースに彩られた夜着は真面目とは程遠いと思うのだが。


「無理に義務は果たそうとしなくていいからな」

 そう言ってティタンはミューズの体を隠すようにガウンを掛けてくれた、なるべく触れないように、見ないようにしながら。


「義務、ですか?」


「そう、好きでもない男と肌を合わせようとしなくていい」

 ティタンはそのままソファに座る。


「疲れただろう、そのまま休んでくれ。信用は出来ないだろうが、俺はここから動かず、ベッドには近づかない。気になるなら腕を縛ってもらってもいい」

 言っていることがミューズにはさっぱりわからなかった。


「あの、どうしてですか?」


「俺は君が好きだ」

 はっきりとティタンは宣言した。


「だから好かれていないのに手を出すことは出来ないと考えたのだ。手を出さないことで女性としての名誉が傷つけられぬようであれば、不能者だと声高に言ってもらって構わない。その方がミューズが傷つくよりも数万倍マシだ」

 腕組をしたティタンはそう続ける。


「無理矢理手を出して嫌われたくはないし、寧ろ嫌われてはそれこそ生きてはいけない。ミューズがいつか受け入れてくれるまで待つつもりだ、今後もし俺を愛してくれる事があればだが」

 ティタンはゆっくりと目を閉じる。


「だから安心して今夜は休んでくれ、先程は軽率に声をかけて済まなかった、断る余地も挟めず困ったことであろう、許して欲しい。もうそのような事は人前で言わない」

 それだけ言ってティタンは口も閉ざす。


 ミューズは呆気に取られてしまった。


 言いたい事だけ言って、ティタンは会話を閉ざしてしまった。


 それと共にミューズは全く自分の想いを伝えていないと気が付く。


 羞恥で叫び、声高に政略結婚の宣言をした。


 ティタンがミューズに好かれていないと思っても仕方のない事だ。


 近づいてみたが、ティタンは目も開けてくれない。


 もしかしたら肌を見ないようにしてくれているのかもしれないが悲しくなる。


 掛けてもらったガウンをテーブルに置いてティタンの前に立つ。


 首も太く腕も太い、二の腕なんてミューズの腰回りくらいありそうだ。


 短くかりこんだ薄紫の髪はしっかりとしていて固そうだ。


 そっと触れるとピクリと体が動く。


 何も言わずミューズはティタンの体に触れた。


 固く張りのある肌に筋張った体、くすぐったいのか眉に皺が寄せられている。


「愛してますよ、ティタン様」

 そう言うとようやく目を開けてくれた。


「いいんだぞ、本音を言ってくれて」

 まだ疑っているらしいティタンの首に腕を回すと、まともにミューズの胸元が目に入ったのか、ティタンが目を逸らした。


「本心ですよ、あなたが好き」

 恥ずかしがりながらミューズは自ら唇を合わせた。


 ほんの僅かな触れ合いだが、ほんのり温かみが残る。


「本気にするがいいのか?」

 ティタンの最後の確認にミューズはこくりと頷いた。


 ティタンはミューズを抱え、ガウンを持ち、ベッドに向かう。


 セシルが気を利かせてなのか痛みを抑える薬を持たせてくれて、それがポケットに入っている。


 必要かもしれないと思ったのだ。


 やはりミューズの体は軽く、小さい。


 出来るだけ優しくしなきゃ壊れてしまいそうだ。


「愛している、ミューズ」


「私もです」

 ベッド上で抱き合い、しばしお互いの体温を感じていた。


「良かった、これで子どもも出来ますね」

 そう言ってミューズは眠りにつこうとした。


「いや、その。まだ色々とあるんだが」

 まさかここでお預けを喰らうとは思わなかった。


 あれだけ煽られて何もないとか、さすがに耐えきれない。


「夫婦になって朝まで一緒に眠ればいいのですよね、違います?」

 少なくともミューズの読むような恋愛小説ではそのような描写だ。


 ティタンはさすがに拳を握りしめる。


「違う、全く違うんだ。もう我慢できない」

 間違いを言葉で訂正する余裕はもう持てなかった。


 せめて優しくするから、許して欲しい。


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