第116話 情報共有
「帝国の戦力ですが、他に何か分かったことはありますか?」
レナンの話は置いておき、リオンが発言をする。
「僕達が対峙したあの四人についてはいくらか力と能力がわかり、ある程度の対策案はそれぞれでしています。何か新たな情報などが分かれば有難いのですが」
「ログからの情報では第一皇子、第二皇子ととても仲が悪い、というか後継者争いをしているのだそうだ」
エリックが二コラに頼み、アルフレッド達が用意した資料とは別なものを配る。
かなり深くに踏み込んだ情報だ、
「そしてリオンと戦った女、あれは正真正銘皇女だそうだ」
「なるほど。通りで真っすぐな女性だと思いました」
だからあのように尖っていても初心でからがいのある性格をしていたのか。
ひねくれているようで根は真面目だ、だからと言って敵に容赦をする気はない。
「あいつらは皇帝の直属の手駒らしく、城にも滅多にいないし、皇子達との仲も悪いらしい。皇子たちは皇子達でそれぞれ独自の兵を持っている」
エリックはすっと目を細める。
「そして帝国の者は今まで侵略した国や民族の者達を、奴隷のように従えているようだ」
「奴隷……」
皆が嫌悪の表情を見せた。
「従わない者は家族を人質に、あるいは魂の契約を掛ける。死ねと命じれば死ぬしかない、そのようなものだ」
エリックが二コラにかけているのと似ているが、やや違う。
まぁ大人数にかけるものだから、精度は落ちるのだろう。
「だから大半の者は従い、命を捧げざるを得ない。帝国の人間にとってはそれが当然のようで、訝しむものもいないそうだ」
「何とか解除する方法はないのですか?」
ティタンはさすがにあんまりだと思い、聞いてみた。
「術師が解けばだが、恐らくそのようなものは城に閉じこもり、出てこない」
契約を契らされたものは前線で戦う。
術師を見つけ、解除させるより早く戦で命を散らせる者のほうが多いだろう。
その者達を殺さず突き進むのは不可能だ、こちらがやられてしまう。
ある程度の覚悟を決めねばならない。
「エリック様やリオン様の魔法で何とかならないのでしょうか?」
レナンは縋るように目を向ける。
エリックの氷魔法やリオンの体の自由を奪う魔法で何とかならないのか。
「足止めは可能だろうが、全ては不可能だ。それに戦の最中に誰が帝国兵で誰が無理矢理従わせられたものかもわからない。躊躇っていたらこちらが殺される」
帝国兵はこちらの命を奪うのに何の躊躇いもないだろう。
「解除自体は出来なくもないぞ」
ロキは事もなげに口を挟んできた。
「ただし、それ相応のリスクと魔力がいる。何千・何万の兵の魂からその呪いのような契約を無理矢理はがすのだ、並みの魔法使いでは出来ない」
「ロキ様なら、出来ますか?」
リオンの問いかけにロキは首をひねる。
「難しいな。城に何もなければだが、こちらに軍勢が攻め入ってきた時にさすがに俺様がいないとまずいだろうからな。それに転移装置と結界の維持で魔力を半分は消費する予定だ。あまり減るとまずい、眠くなる」
魔力切れを眠くなると表現するロキは、欠伸をしながら話す。
「俺様よりも魔力が多い者なら出来るだろうが、今のところ該当者がいなくてな」
ロキくらいの魔力は実姉くらいしか思い浮かばない。
「全員は無理でもせめて何名かの方は助けることは出来ませんか?」
ミューズは諦めきれない。
少しでも多くの人の命と心を救いたい。
戦いたくないのに戦わせられるだなんて、あんまりだ。
どのような人にも家族はいるだろうに。
「家族を人質に取られ、無理やり引き離されているなんてあんまりですもの」
似たような境遇のミューズには我慢できなかったのだろう。
「そういうならば、コツだけ教える。ただしあくまでミューズはティタン王子たちへの補助だ。そちらにかまけて魔力切れを起こさないように気をつけろよ」
「はい、わかりましたわ」
叔父の言葉にホッとする。
「あのルビアの死霊術とはまた違うから気をつけろ。そこはレナン妃に対応して欲しいが、戦でそう上手い組み合わせも出来ないだろうからな。万が一レナン妃がいない時に当たったら、気をしっかりと持て。己の負の気持ちが高くなるほど操られやすくなる。怒り、絶望、恐怖、などな」
ロキはそう助言をし、ミューズに目を向ける。
「ミューズ、何が何でも自分の身を守れよ」
「わかっておりますわ、十分に気を付けます」
叔父から姪への心配の言葉のように聞こえるが、ロキの本心はそれに上乗せしたものだった。
(仮にティタン王子が操られたらとんでもない事になるからな)
この前の激昂した様子を思い出し、身震いする。
ミューズに何かあれば、ティタンは激しく動揺するだろう。
その隙を狙い操られたら困る。
ティタンを止められるものなどそう多くない、下手したら戦況がひっくり返るだろう。
(そうならない事を祈るだけだな)
最悪の事態になりませんように。




