7話 束の間の居眠り
「ここは?」
煉瓦造りの建物が並ぶ道から急に芝生が広がり規則的に木が立つ広場へと変わった。
「公園?」
中央には周囲の建造物よりも高く大きな時計塔が建っていて、ところどころベンチがある。
そこでは子供達が走り回っていたり散歩をしている人やカップルが手を繋いで歩いたりしていた。
僕はゆっくりと歩を進める。
そして、なんだか懐かしい気持ちになる。
前世でも僕はよく公園に散歩をしに行っていた。
思い出す前世の記憶に入り浸りながら歩いていると時計塔の目の前まで来てしまった。
「ん?もしかして上に上がれるのか?」
時計塔には入り口があり中には階段があった。
中に入ってみると階段が螺旋状になっていて本当に上まで上がることができるようだ。
僕は試しに上がってみる事にした。
コツ、コツと足音を立てながら所々外の光が隙間から漏れている階段を上がっていく。
そしてようやく一番上まで辿り着いた。
そこは人一人おらず只々広い空間が広がっており少しひんやりとしている。
さらに端は柱だけでできており壁がなくベンチが置かれ周りを見通せるようになっていた。
僕は端の方まで行き、その光景を眺める。
「はぁ、」
僕の目には蒼く輝く空とその下にある王都の街並みが映り、そしてその美しさに目を奪われた。
僕は近くにあったベンチへと腰かけ一息する。
そしてその光景に目を奪われながら突然襲ってきた睡魔に抗うことが出来ずそのまま眠ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゴォォーン、ゴォーン
ある研究所の中で爆発音が鳴り響く。
その中、僕は恋人の天音に肩をかされてそこから脱出しようと思っていた。
「天音だけでもここから逃げるんだ!」
「そんなことできないわ絶対に二人で生き残るの!」
このままでは確実に二人とも爆発に巻き込まれる。
だから僕はそっと天音の背中を押す。
「えっ!ちょっと陽!」
そしてその時ちょうど僕と天音の間で爆発が起こる。
「これでいいんだ、これで、」
後ろからは炎がもうそこまで迫ってきていた。
もう僕はどっちにしろ助からない。
ならせめて天音だけでも生き残るべきだ。
そうやって僕は少し安心したように全身の力を抜く。
「思い返せば与えられてばかりの人生だったな、、」
(天音だけでも幸せになることを願おう)
そうやって何もかも諦めた時、
「陽っ!」
「!」
なんと炎の中を掻い潜り天音がこっちに近づいて来ていた。
「何をしているんだ天音!早く逃げろ!」
僕は最後の力を振り絞り天音にそう叫ぶ。
「嫌よ!私はあなたと最後までいるってあの時約束したもの」
「!」
そうだ、忘れていた。
僕は天音と出会いそして恋仲になった時にした彼女との約束を、
天音が僕のそばに寄り添ってくるそしてそのまま僕を抱きしめる。
「ずっと、一緒よ」
「ああそうだな」
そして虚しくも研究所は最後に大きな爆発に飲まれ吹き飛んでしまった。
「うっ、うぅぅん」
僕は居眠りから目を覚ます。
あくびをして背伸びをしながら今見ていた夢のことを考える。
「今の夢は・・・・」
今の夢は僕の前世の最期、恋人の天音との最期でもあり忘れられない記憶。
僕は頭を抱え、俯く。
「この世界を僕は必ず救ってみせる」
するとコツコツと後ろから足音が聞こえてきた。
振り返るとそこにはラファエルがいた。
「こんなところで居眠りかしら?」
「ああ、たまにはいいだろう?」
「あなたにはもう少し危機感を持って欲しいのだけれどまあ貴方らしいったら貴方らしいのだけれど」
「それ褒めてる?」
「そう思うなら私は貴方にとことん呆れるのだけれど?」
割と厳しいことを言われているがそんな茶番は置いといて本題を僕はラファエルに問う。
「それで?究明機関の事は何か掴めたかい?」
「残念だけど今日一日中調べ回ったけど王都が広すぎて1日じゃ足りないわもう少し時間がかかるかも」
「焦らなくていいよ、時間はまだまだあるしね」
僕はベンチから勢いよく立ち上がりラファエルの方を向く。
「そろそろ帰ろうか」
「そうね」
もう夕日は沈み、空は暗くなり始めていた。
僕達は宿に向けて歩き始めた。