三話 七人の奴隷
「今日のは上玉が揃っておりますぜ旦那。」
「そうか、見せてもらおう。」
声が聞こえる方に近づいていくと馬車が一台ありそこで二人の男が話しており、その周りにも何人か男がいた。
僕は茂みに隠れて辺りを見渡すと男たちの周囲に木造の素朴な建物が何軒かあった。
その様子を見て僕はここがどういうところなのかすぐに分かった。
「盗賊のアジトか、」
男たちは全員、剣をもっていて如何にも盗賊らしい風貌だった。
そして恐らくだが馬車の前に立っている男は多分奴隷商人だ。
魔力によって暴動や犯罪などが増え裏ではこんな人身売買などの取りは日常的に行われるようにこの世界はなってしまった。
そして、先ほど話していた男のうち一人が馬車に掛かっていた布を取る。
「おい、ここから出せ!」
「今回のは威勢がいいな」
するとそこには鉄の檻があり、中には男の子が三人、女の子が四人、僕とそう歳の変わらない子供たちがボロボロの一枚のふくを着せられて座っていた。
恐らくこの奴隷たちは盗賊に攫われてきて今からこの奴隷商人に売られるのだろう。
僕の中で怒りが込み上げてくるのが分かる、こんなことが許されていいはずがない、そして何かがプツンと音がして気づいたら男達の目の前にいた。
「なんだ、こいつは?」
「いや、気づいたら目の前に、」
そして次の瞬間、一人の盗賊の首が飛ぶ。
血飛沫が飛び散り、周りにいた盗賊にかかる。
「くっ、お前何をしやがる!」
さらに一人の盗賊が剣を抜きこちらに向かってきたが僕は一瞬で背後に回り込み、心臓を一突きする。
「なんだこいつは!、早く殺せ!」
「こんなことが許されていいわけがない、」
次は数人係で僕に向かってくるが、僕はそれを一太刀で仕留める。
「ば、バケモンだ、、」
「ひ、ひぃー。」
何人かがその場から逃げ出すが、僕はそれを許さない。
足全てに魔力と反魔力を通し思い切り駆ける。
逃げ出した奴らを何が起こったのか理解できないほどの速さで仕留める。
「お前らは、万死に値する。」
「ふんっ、面白いこんな高揚感は久しぶりだ。」
すると、残りの盗賊の中から一人、他の奴らとは明らかに雰囲気の違う男が一人出てきた。
「「ボス!やっちゃってください!」」
「お前は逃げないのか?」
その男は何か自信がありそうな余裕の態度でゆっくりとこっちに近づいてくる。
「ふん、こいつを見ても同じことが言えるかな?」
すると男は腰から銀色に輝く剣をゆっくりと抜く。
普通の剣と違い特徴的な形状、そして鍔に彫られた魔力回路と文字。
「それは《魔術器》か。」
「すまねぇな、こちとらまともに殺り会ってる時間はねぇんだ。」
次の瞬間、男は剣を振るう。
そして剣からは炎が出て、その炎は僕の方めがけて飛んでくる。
僕はそれを最小限の動きで躱わすが、男はすぐさま僕の後ろに回り込み首めがけて横に薙ぐ。
しかし、その刃が通ることはなく、ガキィーンと音が周囲に響く。
「なぁっ!?」
男は後ろに大きくバックステップをする。
「魔銅鋼じゃこの外套に刃は通らない」
「くっ、その外套もアーティファクトか。ならこれならどうだ!」
男は剣を掲げ多量の魔力を注ぐ。
すると先程とは比べ物にならない程大きな炎の剣が出来上がった。
猛々しい音を立てて周囲はかなりの高温になっていた。
この外套は物理攻撃に対してはかなりの防御力が有るけど魔力を使った攻撃は別だ。
魔力は有機物をすり抜けてしまう性質があるため外套を貫通してしまう。
しかし、僕にはとっておきがある。
「これならいくらなんでも」
「残念、無駄だ」
僕は左手でパチンと音を鳴らす。
次の瞬間、炎の剣は消えてしまった。
「なぁっ!?」
「残念だけど僕の前では魔力は無に帰る」
僕は男の背後に回り込み胸を刺す。
そのまま他の奴らも始末する。
「ひいぃぃ、お助けぇぇ」
奴隷商人も逃げようとしたが僕は見逃さず始末する。
そして最後に一人は一人だけ白衣を着ておりこう口にした。
「くそ、あの雑魚どもめ。せっかく私は《究明機関》に入れたと言うのに。」
「お前、《究明機関》のことを知っているのか?答えなければ今すぐ殺す。」
僕はその男の胸ぐらを掴み首に刃を突きつける。
「だ、誰が話すか。」
「そうか。」
男の首に少し刃を食い込ませる。
「ひ、ひいぃぃ、俺はまだ入ったばかりで何も知らないんだ本当なんだ!」
「じゃあこの奴隷たちはなんなんだ?何故盗賊がいたんだ?」
「そ、そいつらは実験の為に仕入れたんだ。盗賊は護衛のために雇ったんだ。」
それを聞いて僕は怒りを通り越して無感情になる。
こんな幼い子供達を実験に使う?ふざけるのも大概にしろ。
僕はそのまま白衣の男の首を刈り取った。
「これで全員、始末したか、」
僕は魔力血刀をしまい、檻の方へと近づいていく。
そしてそのまま檻の鍵を外し奴隷達を解放した。
僕はすぐそこから立ち去ろうとした。
だが子供達に引き止められる。
「なあ、あんた一体何者なんだ?」
「名乗るほどの者でもない」
赤髪の男の子がそう問いかけてきたが軽くあしらい、そして僕がまた歩を進めると、一人の黄色の髪の女の子に呼び止められる。
「待って、私たちも連れて行って。私たちは帰るところがないの。」
僕は立ち止まり顔だけ振り返って、こう答える。
「僕についてくるのならそれ相応の覚悟が必要だ。それでもいいか?」
子供達は顔を見合わせて僕の方へ向き直った。
「それでもいいわ」
僕は女の子の顔と目を見る。
真っ直ぐな眼差し、それは覚悟が決まったものだった。
「ゼウスだ、これから僕のことはゼウスと呼べ」
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